二週間ピザしか食べずにダイエットしてみた。

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・前章

 私はピザが好きだ。チーズが好きだ、サラミが好きだ、クリスピー生地が好きだ。ピザは人類の生み出した至高の食事だ。


 だがしかし…………ピザ…………それが「肥満」を示す言葉だった時代がある。前時代的な物言いで申し訳ないが、「ピザでも食ってろデブ」というインターネットスラングを聞いたことはないだろうか。ピザが高カロリーの食べ物だからか、肥満体形の人を揶揄してこういった表現が生まれたのだろう。それが転じ、「ピザ」が肥満の代名詞になってしまった。


 ピザ好きとしては憤懣やるかたない心持ちだ。確かにピザとコーラの組み合わせは最高だ。そしてそれが高カロリーなのも認めよう。例えば、ドミノ・ピザのRサイズは1ピースあたりだいたい190kcal、丸々1ホール(8ピース)で1520kcalだ。成人男性が一日に必要なカロリー量を平均2200kcalとすると、ピザ一枚で70%も占めてしまうということも事実だ。


 しかし、それだからといってピザをデブの代名詞にするのは間違っていないだろうか? ピザはあくまで食品だ。肥満の責任は人間にある。そんな当たり前のこともわからず、ピザに責任を押し付けるのは悪質なプロパガンダだろう。ピザが1ホールで1520kcalと言われても、一度に1ホールなんてそんなに食べる奴はいない。今こそ、ピザの健康的なイメージを取り戻すべきだ。ピザにはトマトやブロッコリーなどの野菜も使われているし、不健康な食事ではない! 今こそ、ピザ好きによるピザのイメージ改革を!


 などと私は考えていたが、それを世界に発表することは無かった。


 …………それは何故か?


 私もデブだからだ。ピザ1ホールくらいなら普通に食ってた。


 腹が出ている。これはもう言い訳が効かないくらいに出っぱっている。いや、言い訳が効かないというのは嘘だ。デブは言い訳が得意だ。愚かに太った自分の身体を見ても、「防御力が高いだけ」「光の屈折の関係でそう見えるだけ」「そもそもDNAが太っているからしょうがない」などと七色の言い訳を用意し、現実から目を逸らし続ける。やがて数字からも目を覆い、体重計に乗らなくなる。実際、私もそうであった。


 しかし、先日体重計に乗ってみたところ、その数値は私史上最高の数値を記録していた。73.2kg。WHO(世界保健機構)の定めるBMI指数は25.03を示し(ちなみに標準体重の指数は22.0である)、区分として「肥満」の烙印を押されてしまっていた。何故こんなことになったのか? 理由はわからないが、近くにあったゴミ袋には大量のピザの空き箱が詰められていた…………。

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 痩せなければならない。ピザの名誉のためにも。しかしダイエットといって高カロリーな食品を排した生活がきるのか……? ピザを愛したがゆえに太ってしまったこの身体、もはやピザの無い生活など考えられない。平均で月額二万円くらいピザに課金しているこの状況下で、ピザ無き生活というのは魚類が陸上で暮らすようなものだ。ピザは食べたい……ダイエットもしたい……ではどうすれば……そう考えたとき、ひとつのアイデアが閃いた。


 ピザ以外を食べなければ良いのでは……?


 そして、戦いが始まった。

 


・ピザだけダイエット 始動

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 逆転の発想である。ダイエットとはつまり消費カロリーを増やし摂取カロリーを減らすということだ。ピザは高カロリーだ。だが他の食品を食べなければ結果的に摂取カロリーは少なくなるはずだ。つまりピザだけをちょっとづつ食べて他に何も食べなければ、理論上ダイエット可能である。さらにダイエット中なのに好物のピザは食べることができてモチベーションを保つことができる。しかも毎日! 毎食がピザ! これは素晴らしいアイデアだ!


 思いついたその晩から、ピザだけダイエットは始まった。ドミノ・ピザのWebサイトにアクセスし、照明のスイッチを押すのと同じくらい慣れた手つきでピザを注文する。やがてピザは配達され、眼前に桃源郷が広がった。ピザの箱を開く瞬間こそ至福の時間だ。誰だって、あの瞬間だけは五歳児と同じ純粋な目をしている。

 

 

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どれも一騎当千ドミノ・ピザメニューだ。この中ではやはり炭火焼ビーフがオススメだ。(一番右のピザ、ハーフ&ハーフの左側)



 余らせたピザは冷蔵庫に収納する。そして翌日に取り出して電子レンジでチンして食べるといった寸法だ。基本的には二週間これを繰り返す。しかし忘れてはならないのはこれがダイエットということだ。食べ過ぎないよう、一度に食べていいのは2ピースまでという縛りを自分に設けた。

 

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冷蔵庫にピザ箱がふたつも入っている。人生、こういうこともあるのだなと思った。




・ジョギング

 ダイエットに近道はない。そしてこれはピザの威信をかけた戦いだ。もちろん運動も行う。ダイエットの運動といえば走ること、RUNだ。幸い、近所にジョギングができる川沿いの土手があるため、そこでジョギングをしようと決め私はシューズを履いた。もちろん、普段から運動などほとんどしていない。


 普段運動しないデブが急に運動するとどうなるか知っているか? 答えは「足を痛める」だ。まあ考えてみれば当たり前なのだが、足や膝に体重が負荷となってかかるため、大抵どこかに支障をきたすのだ。私は左足だった。だいたい往復で5kmほどのコースをひいひい言いながらジョギングした翌日、左足がジンジンと痛んだ。とてもじゃないが走ることはできない、だがカロリーは消費しなければならない。折衷案として足が痛むときはウォーキングで同じコースを往復した。


 結果から言うと、この運動は2週間毎日行われた。ウォーキングを織り交ぜつつ、毎日毎日夕方の土手を走った。そしていくつか、わかったことがある。今日はそれらをふたつ紹介しよう。


①できる限り口は閉めて走れ。

 ジョギングは苦しい。特に8月という暑い季節、運動不足のこの身体には酷な条件だ。だがピザのためという一心で走っていると、顎は上がり口は池の鯉のように開いていく。その時も走ってるだけ偉いと自分を慰めつつ、一歩一歩土手を進んでいた。


 繰り返すが季節は8月、日差しは熱く道の両脇の雑草も青々と生い茂っている。うるさいセミの声は鳴りやまないがたまに吹く風が気持ち良い、そんな中ひいひいと走っていると、一匹のトンボが飛んでいた。走っていると辛いので、トンボを見ても「トンボだ」としか思わない。だがしかし、そのトンボはそのままこっちに飛んできて、


 口の中に入ったのである。

 

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トンボくんのカミカゼ・アタックに思わず奇声を上げてしまった。



 一瞬、何が起こったのかわからなかった。口内に入ったというよりは歯にぶつかったといったほうが良いのだが、突然のことにとても驚き、思わずおわっとえずいてフラフラとしてしまった。そのジョギングコースにはまあまあ他のランナーも居るので、彼らはいきなり奇声をあげフラつき始めた私を見て怪訝な顔をしていた。


 なので、ジョギング中はできれば口を閉めていた方がよいだろう。


②デブは走っていない。

 これは先ほど話にも出た他のランナーの話だ。ジョギングしていて気づいたが、すれ違う他のランナーは皆健康的な体形をしていた。お兄さんもお姉さんもキッズもお爺さんも、皆概ねやせ型の体形で、引きしまったアスリート体形の人も多かった。一方、走っているデブは私ただ一人である。進むスピードも遅いため、後ろからドンドコ抜かされていく。キッズにもガンガン抜かされていくのは恥ずかしくないと言えば嘘になるが、本当に恥ずかしいのはその肥満体形、いや、肥満を見過ごしてきたその精神性である。私はただ耐え、前に進むしかなかった。

 ただ一度だけ、私と似た体形の人間とすれ違ったことがある。赤い服を着てメガネをかけた、推定体重80キロは下らないだろうという彼がふうふう言いながら走ってきた。そのとき、走っていた私は思わず彼をまじまじと見てしまった。そして、彼も私を珍しいものを見る目で見た。一瞬視線が交差し、お互いの存在を認め合った。「お前もか」視線がそう言っていた。あの瞬間、言葉は無いが彼と確かに通じ合っていた。彼が何を食べて太ったのかは知らないが、彼の行く道に幸多からんことを。

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肥満の走行、至難の様相。




・外出でピザ

 サイゼリヤ、サイゼリ「ア」と間違えると失礼に当たるので気を付けなければならない本ファミレスは、ピザの種類が豊富である。私にとって、出先でピザを摂取できるサイゼリヤはとても助かった。ピザ以外何も食べれない本ダイエットにおいて、サイゼイヤはマラソン中の給水所、いや給ピザ所である。私の事情を察しているのかいないのか、サイゼリヤはなんと7種類ものピザを用意してあるのである。

 

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こちらは「たらこクリームのピザ」だ。海苔とホワイトソースがかかっており、味がして美味しい。



 なので読者諸氏が出先で緊急ピザ補給が必要になったときには、サイゼリヤに行くと良いだろう。


・2週間、ピザだけ

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 さて、2週間ピザだけという状況を聞いて、ひとつ気になるのは飽きないのか? という点であろう。結論から言うと、飽きなかった。理由は単純、ピザには色んな種類の具があるからである。ドミノ・ピザだけでもメニューは20種類以上、2週間かけても全ては食べきれないほどだ。ピザ生地に飽きてしまうのでは? という懸念もあるかもしれないが、私にとってのピザ生地は日本人にとっての白米と同じなので問題ないし、ピザ生地だって何種類からか選ぶことができる。これが数か月と続けばわからないが、少なくとも2週間では飽きることはなかった。ピザは奥深い。まだまだ私はピザの深淵に届いていないようだ。


 ただ、飽きないのは飽きないが、他の食べ物が恋しくなることはあった。別にピザは美味しく食べれるのだが、寿司や焼き肉やラーメンも追加で食いたい。そういった気持ちが大体ダイエット4日目くらいからむくむくと湧き上がってきた。そして毎晩寝る前に、2週間が終わったら何食べようかを考えるのが日課になってしまった。リバウンド…………そんな言葉が一瞬脳裏をかすめたが、まず痩せないことには始まらないのでそれには気づかなかったふりをした。


・2週間ピザだけダイエット その結果

 そして、特に大きく体調を崩すこともなく、2週間の時が経った。その間、口に入れたものはピザとトンボだけだ。サプリメントを飲んだことも体調の維持に一役買っただろう。そして二週間、毎日走った。足を痛め、何度も嫌になった。だがそんなとき、「今晩もピザだ!」そう思うことで重い足を(ダブルミーニング)前に進めることができた。2週間、毎日5km、やり切った実感が確かにある。


 そして、その結果は出たのか、私は恐る恐る体重計の上に乗った……。2週間前は73.2kgあったこの身体……、

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69.9kg!


 マイナス3.3kg! 大成功だ! 2週間でこの成果なら喜んでいいだろう! 私は思わず体重計の上で拳を握りしめた。BMIは23.9、標準の22.0には届かないが確かに好転している! ピザを食べながらでもダイエットは成立する! ピザはもう、デブの代名詞ではない! 私はその達成感に打ち震えた。これで今後は堂々とピザ愛を公言できる。裸で。


 さて、私は少々の減量に成功したが、本当の問題はまだある。それは標準体重ではないということだ。私の身長における標準体重は約65kg、まだまだその道のりは遠い。ピザという相棒と協力しこの2週間を耐えてきたが、今後は期間を限定せず、ダイエットに挑んでいくつもりだ。目標は標準体重65kg、ピザはもちろん食べるが、他も食べる。ピザだけダイエットをしていると友人と行く外食が全てサイゼリヤになるという支障もあるためだ。しかし、私はこの二週間をずっと忘れないだろう。人間とピザが協力しダイエットを成し遂げた、この二週間を。

 

 

 

 

 

 

P、S このダイエットが終わった直後、寿司屋に走って死ぬほど食べた。寿司も最高!

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Sekappy プログラミングチャレンジに挑戦してみた。

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・事の始まり

 私はカエサル、黒のプレインズウォーカー、好きな呪文は『骨読み』だ。

 

 何を言っているのかわからない? プレインズウォーカーというのは、トレーディングカードゲームマジック:ザ・ギャザリング」のプレイヤーのことだ。しかし、今日はマジック:ザ・ギャザリング(以下マジック)の話ではない。プログラミングの話をする。だが、マジックの言葉も使っていくので、マジックがわからない人が読んでも何のことやらわからない記事になるだろう。

 

 さて、マジック……プログラミング……なぜ? と思うだろう。それには少し説明が必要だ。まず、「Sekappy」という、社員全員がマジックプレイヤーという特徴を持つ会社がある。その「Sekappy」が、プログラミングチャレンジというイベントを開催したのだ。

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(参考URL:https://sekappy.com/blog/2071

 細かい話は省くが、要するに、「出題されたプログラミングの課題をこなし、優秀な成績を収めれば商品がもらえる」というイベントだ。そして課題1(実務未経験者向け)の商品を見てみると……マジックのブースターパックを1BOX! これはスゴいことだ! TCGプレイヤーは総じて三度の飯よりブースターパックが好きだ。これを商品にするということは、この「Sekappy」という会社が本気であるということに他ならない。私は本能に近い部分でそれを理解した。

 

 更にどうやら優秀な作品を提出した参加者には採用のオファーまであるらしい。オファー! 甘美な響きだ。これは現在働き口を探している私にとっても僥倖と言えた。こうなればもうやるしかない。私はその覚悟を決めた。

 

 つまりこの記事は、この「Sekappyプログラミングチャレンジ」に挑戦した記録を残した記事ということだ。ある意味「株式会社Sekappy」への手紙という面もある。それがラブレターなのか、呪いの手紙なのかはわからないが。

 

 しかし、ここまで書いておいて、筆者である私にプログラミングのスキルはあるのだろうか?  実務未経験者向け課題があるとはいえ、全くのゼロからというわけにもいかないだろう。

 

 結論から言うと、全くのゼロからと言えた。

 

 私にとってプログラミングとは、コンピュータという現代のアーティファクトを用いキーボードをガチャガチャとやって神秘的なシステムや装置を生み出す行為だ。まさしく青の魔導士の領分だ。黒のプレインズウォーカーである私にはこれまで関係が無いと思っていた。目の前のパソコンは文章を入力するかイラストを描くことくらいにしか使ったことがないし、プログラミングをどうやってやっているのか見当もつかない。

 

 それでも、私はなんとかなるだろうと思っていた。何故か? 青と黒は友好色だからだ。

 

・3マナ3/2 ダブルシンボル

 

 さて、それではプログラミングというものを進めていく。まずは課題の確認だ。私が挑戦する初心者向け課題は以下の通りだった。


【課題1】(実務未経験者向け):パック開封シミュレーター
M21のカードリストと、レアリティ毎の封入確率に基づいたパック開封のシミュレーターを作成いただきます。


 パック開封シミュレーター…………つまり、アリーナのアレをつくれということか。

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↑アリーナのパックは8枚だが、今回の課題はFoilも考慮に入れた通常のドラフト・ブースターパックのシミュレーターだ。



 課題の詳細を読むと、どうやらここまで凝ったものではなく、パックの開封結果がわかる文字列を表示させることができれば良いらしい。詳細にはシミュレーターをつくるにあたっての細かい条件などが記載され、そして続けてソースコードの推奨言語という記載があった。

 

 ソースコード……というのはプログラミングで書く文字列のことだろう。先ほどプログラミング経験はゼロと書いたが、正確には学生時代に半年ほどだけパソコンの前に座って受ける授業があったことを覚えている。内容はほぼ全く覚えていないが…………パソコンの画面に「printf hello world」と入力したことだけは記憶していた。なので、その「推奨言語」というのが、どんな種類のプログラミング言語を用いるかという話だということはわかった。

 

 そして私はその言語をひとつ選んでプログラミングしなければならない。推奨言語にはこう並んでいた。(PHP, Ruby, Python,C, C#, C++, Java, JavaScript

 

 ……PHP? PHP文庫なら知っているが、文庫本は今は関係ないだろう。Ruby…………ルビーってのは七月の誕生石だ。JavaJavaScriptっていうのは同じじゃないのか? C,C#,C++…………何のことだ? Cを転生させまくるとC++にでもなるのだろうか?

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javajavascriptはウギンとウギンのきずなくらい違うらしい

 

 そのとき私にとって、ぱっと見どの言語を選んでも同じように思えた。結局どれも未経験なことを考えると、どれを選んでも変わらないだろうと思ったのだ。なので一番最初に書いてあったPHPを選ぼうかと思ったその直後、私に直感が走った。いや、それは直感というよりはプレインズウォーカーとしての勘というべきだろう。黒のプレインズウォーカーとしての。

 

 Python。その文字列を見たとき、私の、いや黒のプレインズウォーカーの脳裏に浮かぶのはプログラミング言語ではなくこちらだった。

 

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1997年のカード。イラストもフレーバーもクールだ。



 ニシキヘビ/Python。黒の3マナ3/2のバニラクリーチャー。マジックのパック開封シミュレーターを作成するのにこれほど適した言語名もないだろう。それに気づいた直後、私は、Googleに「Python プログラム初心者」と入力して検索ボタンを押していた。

・熟読

 プログラミングとは何か…………それはGoogleで検索したページを読むことだ。私はそう勘違いするほど、最初はただただWebページを読み続けた。プログラミング初心者の私は何から始めたらよいかはわからないが、私にはグーグル検索がある。グーグル検索さえあればこの世のだいたいのことはわかるので、私は「Python 始めかた 簡単」「Python ゼロから 初心者」「Python MTG デッキ」などで検索をかけ続けた。

 

 そして知ったことを少しづつ組み合わせ、私はプログラミングという道に入門し始めた……。Google Colaboratory というwebページを使うと環境構築というものをしなくてすぐにプログラミングを始めることができるらしい。さらにどうやらPythonは割と初心者向けらしくコンパイルというのも必要ないらしい(コンパイル? ぷよぷよを開発した会社は関係ない)。また、Pythonはプログラムする上で使用できる機能をまとめた「ライブラリ」というものも最初から充実しているらしい。(ライブラリ! またマジック用語だ! やはりこの言語を選んだのは間違ってなかった!)「らしい」ばかりで正直私には何が便利なのかよくわからなかったが、選んだ言語が初心者向けと言われればいくらか気楽にはなるものだった。

 

 そしていよいよ、実際にコードなるものを入力してみた。まずはプログラムを入力し、文字の表示を出力する練習だ。

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 プログラミング初心者には初歩として「Hello World」と表示させる慣習があるらしいが、私はプレインズウォーカーなのでアンタップアップキープと宣言させてもらった。つまり、このコードは実行した後に「Untap Upkeep」と表示する、というプログラムなのである。これを発展させまくり、今回の課題に取り組んでいく。一行目の#から始まる文章はコメントといい、直接プログラムのコードには意味は無いが後から人間が読むときようの道しるべだという。
 
 私が次に入力してみたのはこれだ。

 

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 ちゃんと計算できている。Pythonにもマジックがプレイできそうということがわかった。

 printで出力、また計算を行うことができたら、プログラミングは半分できたようなものだ。後は、IF式というものだ。これはコンピュータに、「AだったらBをしろ、AじゃなかったらCをしろ」という命令をするものだ。今回の課題でいうと、「神話レア(M)が抽選されたら神話レア(M)のカードプールから一枚出力しろ。神話レアじゃなかったら通常レア(R)のカードプールから一枚出力しろ。」といった風に使う。

 

 ここまでで大体のカードは揃った。追加は繰り返し関数(While)とか乱数(Random)などを使うくらいだ。

 

 さて、ここからは実際に課題のコードを書いていく。しかし、ここでその詳細には触れない。何故なら、別に面白いことはないからだ。これはプログラミング初心者の私の感想だが、プログラミングというのは当たり前の繰り返しだ。コンピュータはミスをしない。「AだったらB」という命令を出せば、100回やって100回同じ結果が返ってくる。そこに偶然はない。先ほどのprintやらなんやらを組み合わせ、当たり前を重ね合わせた結果、プログラムが組み上がるのだと思った。

 

 それでは、コードをスイスイ書いていけたかと言うと、全く何も順調ではなかった。エラーの奔流だった。さっきと同じことをやってるはずなのにエラーが出たりすれば「コンピュータもミスするじゃねえか!!!」と絶叫したり、Webページの例文をコピー&ペーストをしたはずなのにエラーが出ると「嘘書いてんじゃねえか!!!〈誤った指図/Misdirection〉!!!!!」と血管が切れそうになったりもした。(後にどちらも自分のミスと発覚した。大変恐縮である。)

 

 しかし、それを解決したのはいつもGoogleだ。エラー文章を検索窓に入力すると、いつも誰かしら先人が知恵を残してくれていた。知識・技術の結晶、インターネットという情報集積体、まさしく青のカラーパイだ。私はそれを読み、コードを入力し、テストし、何度でもトライ&エラーをする。その繰り返しで進めていった。

 

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グーグルという土台の上に私のプログラミングは成り立っていた。

 

 やがてそれは完成した。時間はとてもかかってしまったが、結果としてカードの羅列を出力するコードを完成させることができた。Sekappyの課題詳細には、


・コードの保守性
・利便性(UI/UX)
・アイデアの独自性
アルゴリズムの効率良さ


等の評価基準があった。その観点で自分のコードを見てみると……とてもじゃないが褒められたモノではないだろう。熟練者が書けば半分、いや十分の一にできるのではないかいうほどに私のコードは長いし、ひとつひとつ該当のレアリティが抽選されるまで乱数での抽選を繰り返すという私が作ったアルゴリズムはとても効率が良いとは言えない。(特に黒のプレインズウォーカーとして、効率が悪いというのは悔しいところだ)

 

 だが、時間制限のある中での私の全力は出した。そしてそれを提出する。結果が気にならないと言えば嘘になるが、私は「青」の一端を垣間見るという大変有意義な経験をしたと思う。その経験値を大事にし、今後は糧にしていきたいと感じた。最後に、実際に私が書いたプログラムを実行してみて、つまりパックを開封してみてこの記事の締めにしたいと思う。

 

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 ここで青黒のレアでも出れば記事の締めに完璧と思っていたのだが、基本セット2021に青黒のレアは収録されていないのだった。カードプールを把握していない、これでは<初心者の過ち/Rookie Mistake>だ。

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魔法陣でピザを召喚した

 

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 古来より、「魔」というものは人の心を惑わし災いをもたらすモノとして忌み嫌われてきた。「魔」が人の心にさりげなく入り込み、悪魔が取りついたかのように悪い事をさせてしまう。それが「魔が差す」という言葉の由来である。

 

 そしてその悪魔を呼び出すための儀式に用いられる図形、それが「魔法陣」だ。あなたも映画や漫画などのポップカルチャーで怪しげな老女が地面に描いた魔法陣から悪魔を召喚しているシーンを見た事があるだろう。

 

 そう、今日は魔法陣の話だ。先日、私が魔法陣を実際に作ってみたときの話をする。元来、魔法陣や魔術というのは人間の精神の拠り所として発展してきた。疫病などにより世情や社会が不安定になったとき、その不安から目を逸らすために目に見えない信仰や魔術が存在するのだ。十四世紀ヨーロッパに氾濫した黒死病が引き金となり人々が精神の拠り所を求めた結果、後の魔女狩りまで発展してしまったという説もあるくらいだ。それくらい、魔術と世相というものは関係がある。

 

 つまり、未曾有の波乱を迎えているこの現代に魔法陣を描きサバトを開催するというのは何ら不思議なことではないのである。

 

 しかし、ここでひとつの疑問がある。

 

 魔法陣から本当に召喚すべきは悪魔だろうか?

 

 この二十一世紀に悪魔を召喚して何をするんだ? ルシフェルもベルゼブブも特に用事が思いつかない。呪ってほしい相手もいないし、もたらしてほしい災いもない。悪魔って召喚したあとお茶とか出した方がいいのかわからないし、話も合わなそうだ。ちょっと悪魔さんサイドには悪いがこちらに来るのはご遠慮いただきたい。

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悪魔…………善良な私には用途が思いつかない。

 なので、悪魔の召喚はするべきではない。では現代に生きる我々は魔法陣から何を召喚するべきだろうか?

 賢明なる読者の皆様はもうお分かりだろう。

 

 そう、ピザだ。 

 

 ピザ、ピッツァ、PIZZA。小麦粉ベースの生地に具を乗せ焼いた魅惑の食品。チーズとトマトを筆頭にシーフードでもミートでも合う味のバリエーション。日本ではデリバリーで手に入るというのもデブ症、もとい出不精の人間には大きな魅力のひとつだ。その魅力とカロリーから人間を堕落させるという点でピザも悪魔もだいたい一緒である。

 

 呼ぶなら悪魔よりピザがいい。魔法陣でピザの召喚だ。私はそう考えた。なので作った。

 

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 友人3名は実は生贄のためではない。ピザ召喚のためなら仕方のない犠牲……と思ったかもしれないが、単純に作業の協力者、マンパワーとしてだ。いずれも魔法陣の作成、そしてサバトの開催に協力してくれた魔に魅入られし者共である。他の材料は全て近所のホームセンターで調達した。魔方陣を描くための黒い布は、適当なものが見つからなかったため黒いシーツを裂いて代用した。

 

 では実際の作業だが、まずざっくりと魔法陣のデザインを起こし、それを布の上にクレヨンで描いていく。なんてことはない、道路にけんけんぱを描くのとだいたい一緒だ。

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地に伏して線を描くという体験から幼少期を思い出した。実は皆、子供の頃には魔術の素養があったのかもしれない。

 作業中、問題がひとつ発生した。布の上に正円を描く方法がない。魔法陣は正円で描きたい。だ円になってしまうと魔法陣っぽさが無くなってしまうのではと思い、正円を描く方法を模索した。小学校にあった黒板に大きな円を描くためのコンパスが欲しいと人生で初めて思った。

 

 結果からいうと、協力してくれていた友人の知恵を利用した。糸と軸を利用して円を描く方法である。布に糸をつけたペンを立て、それを円の中心とし糸を半径として弧を描くのだ。建築関係で働いている友人曰く、仕事でも似たような方法を使う事があるらしい。持つべきものは建築関係の友人である。

 

 魔法陣と言えば魔術、魔術といえばルーン文字ということで、外周のサークル部分にはルーン文字を描き込んだ。ルーン文字をチョークで書いていくと、なかなか魔術っぽくなっていく。しかし何を書けばいいのかわからなかったため、ルーン文字で自らの名前を刻んでいった。

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こちらが私のハンドルネームのアルファベット→ルーン変換、なんとなく読めなくはない気がする。

 そしてようやく魔法陣が描き終わった。時間にして三時間近くだろうか。あとはピザを然るべき手段(呼べば来るという点でもピザと悪魔は同じである)で呼び出して完成である。それでは、完成品を見てもらおう。

 これがピザ召喚魔法陣だ!

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 どうだろうか、この神々しい、いや禍々しいピザの姿は! その光景はいわばピザのサバト、カロリーの黒ミサ、小麦粉の夜宴だ。中央に鎮座した"紅き円盤"はまるで邪教が崇め奉るアーティファクトに違いない。こうしてみると、このピザをもたらしたピザハットが邪術師(ウォーロック)の集団に思える。

 

 突然だが、ピザには魔力が秘められていると私は考えている。だってそうだろう、こんなにも蠱惑的で中毒性のある食品が何故合法で存在しているのか? ピザは魔力を秘めているからだ。魔法陣の中央に配置しても何の違和感もないのがその証拠だ。今回、その神秘の一端を垣間見た気がする。

 

 最終的にこのピザは食べたが、今まで食べた中で一番荘厳なピザだったのは間違いない。HPだけではなくMPも回復していたはず。メラくらいなら唱えられそうだ。

 

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 こちらがピザのない魔法陣の画像だ。なかなか"らしさ"が出たのではないだろうか。魔法陣の周囲には燭台を配置し火を灯している。この記事を読んで魔法陣を作成する諸兄も屋内での火の扱いには十分注意してほしい。総合して、悪魔を呼び出すのよりは簡単な儀式だったが、なかなか大変な作業だった。一緒に作業してくれた友人には感謝、地獄に落ちるときは一緒だ。

 

 もともとこれは"サバト"を開催しようと始まった一連の工作だったのだが、想定より魔術的な雰囲気が再現され「魔」に一歩近づけたのではないかと感じた。これもピザの持つ魅力、いや魔力によるもの。もし悪魔を呼び出してしまったらお茶ではなくピザを出そう。ベリアルには特うまプルコギ、アスタロトには炭火焼ビーフか。(注1)

 

 それでは今回の記事はここまでだ。さて、今週末はどのピザを呼び出そうか。

 

 

 

(注1:特うまプルコギはピザハットだが、炭火焼ビーフドミノ・ピザのメニューだ。召喚するときはゆめゆめ注意されたし)

 

Twitter:caesarcola

続  ――痔―― その体験記

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 この文章は前回の記事の続きだ。もしあなたが前回の記事を未読なら、以下リンクを読んでから来ると良いだろう。

 

caesarcola.hatenablog.com

 

・痔の宣告

 あなたは怪我や火傷などで発生する「痛み」のメカニズムについて知っているだろうか? 人間の全身に張り巡らされている神経内には「侵害受容器」という器官が存在する。そしてその器官が外傷や打撲により刺激されると痛みという情報になって脳に伝達され、あなたはイタっ! と悲鳴を上げる。これらの痛みは外因性の「侵害性疼痛」と呼ばれ、またその伝達速度は秒速10~20メートルと言われている。

 

 そしてその日、私の侵害受容器の神経伝達速度は秒速100メートルを超えていた。

 

 医者による手当て、尻にメスを入れるという冒涜的行為。これが医療行為でなかったら医者は地獄行き確定というほどの蛮行。痛みにより私の侵害受容器が受ける刺激は苛烈を極め、流れた涙は一級河川を形成するほどであった。

 

 しかし、生き残った。痛みからの解放。輝かしい未来。私は完全復活し、その痛みとは二度と決別…………と思いきや、戦いは終わっていなかった。

 

「今のは応急措置だから。ちゃんと切開手術しないとまた痛むよ」

 

 目の前の白衣の男が何か言っている。そして私の脳は理解を否定している。「また痛む」? その言葉がどれだけの絶望感を私にもたらしたかお分かりだろうか? ……また? …………痛む? ……あの苦しみが? …………もう一曲遊べるドン? ぶっ飛ばすぞ!!!

 

 悪夢は終わっていなかった。医者の話によると、今日行った処置はあくまで応急処置、痔の原因を根本的に取り除かないと再度あの苦しみが襲ってくるらしい。そしてその手術のためには入院が必須だという。入院、手術。いつの間にか話が大きくなっていることに驚きと怖気を隠せない。

 

 私は何か悪いことをしただろうか? 手術なんて大それたことは骨折などの大きな怪我や、長らく障害を放置して、早期治療を怠ったツケを清算するときにするものではないのか? 私は痛みを感じてから可及的速やかに病院に来たつもりだ。確かに日曜はとても痛んでいたが週末だったから仕方ない。月曜の朝から病院に赴いた私は十分に早期治療と言えるのではないか? そう思って医者に聞いてみた。

 

「私のコレは、早期治療じゃないんですか?」

「いえ、ほぼ最終形態です」

 

 無慈悲な回答だった。なんだよ最終形態って。ラスボスか?

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痔の最終形態。なんとも恐ろしい響きである。

 

・入院 二人部屋

 

 文句を言っていても始まらない。何はともあれ入院と手術だ。私は別の持病もあったためそちらの担当医の許可を得たりと、入院の準備を行った。入院中は暇な時間がとても長いと聞いていたため本を購入したり、Nintendo Switchゼルダの伝説をダウンロードしたりしていた。こう聞くと長期旅行の準備みたいで楽しげだが、この間もいつ尻が痛み始めるかと戦々恐々としていたのは言うまでもない。

 

 そしていざ入院当日。荷物を持ったトランクを持って病院へ。案内されたのは二人部屋の病室だった。どうやら同室の人間がいるようだ。私は考えた。同室…………病院とはいえここは肛門科、誰も望んで入院してる奴などいない。そう考えるとここの性質は牢獄に近く、つまり尻のプリズンと言える。マイケルにはスクレが居たが、私に宛がわれた同房の人間は一体どんな人間だろうか……? 緊張しつつも、病室に入る。

 

「キミが同室か! よろしく!」

 

 そんなことを彼、吉沢という少し太った男は言った。恐らく50歳近い彼は貫禄を感じさせる体躯でにこやかに笑っている。私が挨拶を返すと、「私も痔ろう手術だよ! キミも若いのに大変だねぇ!」とこちらを思いやる言葉をかけてくれた。どうやら悪い人ではないらしい。一安心して荷物の整理をした。

 

 しかし悲劇は夜に起こった。入院初日ということで、簡単な診察を受ける程度のスケジュールを終え、夜9時には消灯された院内でベッドに横になる。9時と些か早い時間ではあるが、もう寝てしまおうと目を閉じると、聞こえてきたのである。その音が。

 

 グォォオオオオオ! ッグォォォオオオオ!

 

 可哀そうなぞうさんの断末魔ではない、吉沢のイビキだ。重機の駆動音を思わせる音の奔流が、ベッドを仕切るカーテンの向こう側から聞こえてくる。高音質な迫力のある重低音サウンドと書けばスピーカーの広告のようだが、実際には迷惑の剛速球だ。無視できるレベルの音量ではない。そして彼の入院はあと6日だと言っていたことを思い出す……。身体が震える。震えている間にもイビキ音が鳴りやむことはない。これあと一週間近くも? レベル1の拷問か?

 

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彼の名誉のために言うと、コレ以外はとても気さくないい人だった。

 尻が治る前に頭がおかしくなりそうだが、私はウォークマンを持ってきていたことを思い出し、イヤホンをつけてヒプノシスマイクを流した。するとまあギリギリイビキが気にならない程度には騒音を抑えることに成功。あのときほどヒプマイに助けられたと思ったことはない。寂雷先生は、確かに私を助けてくれた。

 

・院内の暇つぶし

 

 入院というものは、暇との闘いである。私は手術入院だが、10日間ほどあった入院日数の内、実際手術を行うのは1日で、他日は体温検査や簡単な診察ほどしかやることがない。つまり一日のうち大多数の時間は暇で、その時間をどう過ごすかということが大きな課題となる。私は持ってきた小説もあらかた読み終わってしまい、スイッチのゼルダの伝説も少し飽きてしまったころ、病室の下の階に貸出本棚があるという情報を耳にし、出向いてみた。

 

 階段を下りて件の本棚を探すと、ソファがいくつか置かれたホールの隅に小さな本棚が鎮座していた。ソファには爺さんや婆さんが何人か座って世間話をしており、私は少し居心地の悪さを感じながらもそそくさと本棚の前に移動した。

 

 しかし、せっかく来たものの私はあまり期待していなかった。大体にしてこういった病院の本棚にはある程度年配の方を読者と想定したラインナップであり、それでなければキッズ向けの絵本などがあるイメージがある。院内では若者の私が楽しめるようなモノがあるとは思っていなかったし、病院内にあるということを考えるとそこまで刺激的な蔵書はないだろう。そう思って本棚の一番上の段を見ると

 

「DEATH NOTE 原作:大場つぐみ 作画:小畑健

 

 めちゃめちゃアグレッシヴだった。がっつり人死にが出るジャンプ漫画がしっかり全巻揃っていた。


・そして手術のとき

 

 そのときがやってきた。読んでいたデスノートではLの捜査をかく乱するためにミサとライトが監禁されたところだった。手術のときが来たのだ。そう、痔ろうの切開開放手術だ。ここでひとつおさらいしておく、私の痔はいわゆるメジャーな「切れ痔」や「いぼ痔」ではなく「痔ろう」という種類のもので、直腸と肛門周囲の皮膚を繋ぐトンネルのようなものが発生してしまう痔である。といってもやや想像しずらいのだが、皮膚の表面よりも内部に発生する痔と思ってもらえば良い。通常、この痔は薬での治療は不可能で、完治には手術が必要だ。

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何故こんな恐ろしい病が存在するのか。人間は完全ではないということを思い知らされる。

 

 しかし切開開放術という得体の知れない手術ではあったが、私は前回ほど恐怖していなかった。なんといっても今回の手術は前回の応急処置とは違って麻酔有りなのだ。だが手術も人間のやること、完全に恐怖はゼロと言っても嘘になる。手術前の飲み食いは最低限と言われたのにも関わらず、もしかしたら”最期”かもしれないと思い、私はマイソウルドリンクであるコーラをこっそりと飲んだ。

 

 手術の前にまず手術着に着替えることになる。ペラペラで薄い生地の服で、手術中にはお尻の部分の布だけ切り取られることになる。そして病室のベッドごと手術室の中に運ばれる。お尻部分だけ丸出しでベッドに寝たまま運ばれるのはなかなか新鮮で、なんだか出荷される牛の気分に近いものがあった。

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楽曲「ドナドナ」はドイツ語に近い言葉である「イディッシュ語」の歌である。

 

 手術台に寝かされ点滴を打たれ、麻酔を背中から注射されると身体の感覚がどんどん抜けていく。月並みな表現だが、首から下が無くなってしまったかのようだった。そして尻にメスが入る。意識はあるため何かが私の尻に触っている感覚はあるのだが、痛みは全く感じない。淡々と手術が進行していく。医者達が私の血圧を読み上げる声が聞こえるのがとても臨場感があった。

 

 つつがなく手術が終わった。再度ベッドに寝かされ、病室に戻される。「意識はあるが身体は動かせない」という状態が不思議な感覚で、まるで長時間金縛りにあっているかのようだった。その後、看護師に「個人差はありますけど、2~3時間で身体の感覚は戻りますからね。今日はもう動けるようになっても歩いたりせず眠っちゃってください」と言われ手術は終わった。幕が下りてみれば案外あっさりしたもので、時間にしてみればものの30~40分ほどで手術の一連は終わってしまった。痛みは無かったし、とりあえず根本治療が終わって一安心だ……。

 

 そして2時間ほどぼーっとしてしていると、徐々に上半身の感覚が戻ってきた。まだ腰から下は動かないが、腕が動かせるようになった。麻酔特有の暖かいジーンとした感触が消え、少しづつ回復しているのがわかる。しかし、それは急に襲ってきた。いや、それは襲ってきたというよりも、「そこにあったものに"今"気付けるようになった」という方が正確だろう。そう、それはそこにあった。

 

 尿意が。

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麻酔によって身体の自由が効かない状況、危機が迫っている。


 小便。お小水。OSIKKO。とにかくトイレに行きたくなってきたのである。手術後は動くなと言われていたこともあり、事前に尿瓶は渡されていた。あなたは尿瓶を知っているか? 早い話がおしっこをするために口が広くなったビンだ。手術後の患者を動き回らせないため、トイレではなくそれにしろということである。その尿瓶がベッドのサイドテーブルに置いてある。置いてあるが、手が届かないのだ! 完全にコーラがアダとなっている!

 

 想像して欲しい。ベッドに寝ている。そして尿意が確かな存在感を持ってそこにある。尿瓶はベッドの左サイドテーブル、距離は1mと離れていないが足はおろか腰も動かない。動かなければサイドテーブルに近づくことができない。腕を伸ばしても指先は悲しく空を切る。その間にも尿意はこみ上がっていく。脳裏にダム決壊の映像がフラッシュバックする。遅れて気づく、肩から上しか動かない状況、たとえ尿瓶に手が届いたとしてもそれを使うことができない。足が、せめて腰が動かないことには事態の解決は無いのだ。

 

「動け! 動けよ! 動いてくれよッ!」

 

 脳内で叫ぶ。ほとんどエヴァに乗ったシンジくんだ。初号機のコントロールレバーに拳を叩きつけるシンジくんが如く、自分の腰を叱咤する。「今動かなきゃ、何にもならないんだ!」 だが腰は動かない。高まる尿意。張り詰めた膀胱。上半身だけでジタバタするも、アンビリカルケーブル(点滴)が揺れるだけだ。ダムは決壊寸前、もうダメなのか……? と諦めかけ天を仰いだそのとき、

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 頭上に何かあることに気づく。ナースコールだ! もはや背に腹は代えられない。ナースコールを連打し、看護師を呼ぶ。彼女らが辿り着くまでの時間、耐えらるかという危惧はあったが、耐えがたきを耐え、なんとか間に合った。そうして介護をしてもらいながら用を足し、私はなんとか危機を脱した。あなたがもし痔で入院するなら、手術前にはコーラは飲むな。これは私からの忠告である。介護されながら用を足すのは、まあまあ(婉曲表現)恥ずかしかった。

 

・退院

 

 その後はきちんと麻酔を抜け、比較的平穏に日々が過ぎた。便器に腰掛け用を足した後に血がガッツリ出ていてビビったりもしたが、それも数日すれば収まり無事退院となった。病院のドアから出ると、むせ返るような熱気と刺すような日差しを浴びたことを強く覚えている。八月上旬、天気は快晴、うるさいほどの蝉の声の中、私は肛門科病院と「Ⅲ型痔ろう」に別れを告げた。駅までの道のりを歩きながら、痔と共に過ごした日々を思い出す。貴重な経験ではあったが、できるなら人生において経験したくなかった日々でもあった。

 

 痔は再発しやすい病気だと医者は言っていた。再発を防ぐには、日々のケアと肛門に異常がないかの注意が必要だという。もしこれを読んでいるあなたが尻に異常を感じているのならば、悪い事は言わない、尻を軽んじずにすぐに病院に行け。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶというが、あなたは後者であるべきだ。

 

そして最後に、私からこの言葉を贈ろう。

 

尻の声を聞け…………。Listen to your ass's voice........

 

 


(――痔―― その体験記    終)

 

twitter: @caesarcola

――痔―― その体験記

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 『ハリーポッター』に、「まね妖怪」という魔法生物が登場する。原語ではボガードと呼ばれる妖怪で、暗くて狭い場所を好み、近くにいる人間の最も怖いものに化けるため、本当の姿は誰も知らないという設定だ。ハリー達はこれを利用してディメンターと呼ばれる敵を仮想的に作り出し、魔法戦闘の訓練を行っていた。

 しかし、その「まね妖怪」が私の前に出現したらどうなってしまうのか? あらゆるものの中から当人の最も怖いものに化ける妖怪が私の前に現れたとしたら……?
 その姿はアレになるだろう……………………痔に。


 今日は痔の話をする。そう、人間の尻に発生する疾患のひとつだ。私は医者ほどではないが痔に詳しい。それは何故か? ワニの恐ろしさを知る者は、ワニに噛まれた事のある者だけと同じように、私も痔に噛まれたことがあるからだ。今日は私が痔を発症してから入院して手術するまでの体験を、伝えようと思う。なお、初めに断っておくがこれは一年ほど前の体験だ。

 

・悪夢、その前兆

 

 何事にも予兆というものはある。痔も例外ではない。私の場合、それは筋肉痛から始まった。最初に始まったのは忘れもしない、2019年7月1日、月曜日のことだ。その日の私はVRのゴーグルをかぶってやるボクシングゲームをプレイしており、仮想世界でムカつく顔のボクサーを殴ったり殴られたりしていた。ゲームは買ったその日が一番楽しい。思ったより熱中してしまい、その日はシャワーをして眠った。

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 そして翌日、襲ってきたのは極度の筋肉痛だ。普段の運動不足が祟ったか、身体のあちこちが痛い。階段を登るだけで下半身が悲鳴を上げる。だがしかし、筋肉痛がするということはある程度しっかりとした運動になったということ、もともとVRゲームでの運動不足解消を目論んでいたこともあり、その痛みはなんだかんだ楽しんでいた気がする。今思えば、愚かと言う他ないのだが……。

 

 7月4日、木曜日になってやっと気づく。「筋肉痛がとれないな」と。正確には筋肉痛は引いているのだが、腰回り、主に臀部だけがまだ痛い。私の頭上にハテナマークが浮かぶが、その時はまだ自分の身に何が起きているのか気づいていない。しかし、それも無理のないことだ。あなたも想定してほしい。今までの人生で関わったこともない、親兄弟にも発生したことのない痔という疾患に、すぐさま類推が及ぶだろうか? 筋肉痛というカモフラージュを纏った尻の悲鳴に、あなたは正しく耳を貸すことができただろうか? ……私にはできなかった。

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△これは当時の私の日記である。まだ必死さがない。

・発症 苦痛の潮流

 そして週末だ。土曜日から自宅に数人の友人達が遊びに来ており、色んなボードゲームで一緒に遊んでいた。昼、まだ私は冷静でいられた。ふとした際に尻に刺激が与えられるとズキズキとした痛みが走るが、まあまだ耐えられるレベルだ。

 

 しかし、さすがにもうこれは筋肉痛では無いという判断が下せるほどには痛みの波が来ており、何か対処をしなければならない。
 そのため、夜に薬局に向かった。
 店員に「尻が痛い」という話をする。
「痔だと……思われます」
 男性の店員がやたら丁寧に言ったのが印象的だった。私は「そうか……」とショックを受けずにはいられなかった。痔。臀部の疾患。認めたくはないが現在進行形で尻の悲鳴が響いている。私は勧められるがままに尻に塗る薬を購入し、塗布してから眠った。これでよくなるだろうと、その時は思っていた。

 

 翌日、友人達が家に泊まったため、日曜日も彼らは遊んでいた。そう、「彼らは」だ。私はどうしていたかって? 痛みに伏せていたのだ! 布団の上でうずくまり、メソメソとするしかない。薬を塗ったはずの尻は全く回復せず、どころか痛みは加速度的に強くなっていく! 体感的には尻の中で誰かが太鼓の達人をやっており「カッ」を連打しているかのようだ! 友人達は心配してくれるものの、それで痛みが引くわけではない。熱も出る。日曜日なので病院もやってない。完全に四面楚歌だ! この日の記憶はもうあまりない…………かろうじて覚えていることは、七夕だなと盛り上がる友人に差し出された短冊に、震える手で「痔、治れ」と書いたことだけだ。

 

 そして夜がきた。心配してくれながらも友人達が帰宅し、家にひとりになった。まだ痛みは加速していく。もはや立って歩くだけでも激痛が走る状況。発熱もある。パソコンの前に座るのも辛かったため、なんとかDiscord(音声通話アプリ)だけ起動し、友人に近くの肛門科のある病院を調べてもらった。窮地の友こそ真の友という言葉もある。この時の友人には改めて感謝を言いたい。そして調べてもらったページだけブックマークし、神に祈るような気持ちでうつ伏せになっていた。ここでひとつのTipsだが、激しい痔になると仰向けなどにはなれない。もちろん、尻に負荷がかかるからだ。うつ伏せ一択だ。あなたの友人がうつ伏せになっていたら、それは痔にもだえ苦しんでいるのかも知れない。この日は丸一日、這って移動した。

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・病院、手当

 月曜日の朝、痛みの増加に限界などなかった。苦痛に顔面は歪み、太鼓の達人は難易度「おに」になっている。トイレに行きたくないため食事もとっていない。空腹・発熱・尻に激痛という状況でタクシーを呼び、肛門科のある病院へ。もはや揺れる車内でおとなしく座席に腰掛けることなどできず、運転手に断ってから後部座席でもうつ伏せになっていた。

 

 そして病院にたどり着き、永遠とも思える待ち時間を終え、医者に診てもらう。じゃあお尻見せてもらえますかの声に、待ってましたとばかりにズボンを脱ぐ。もはや恥じらいなどという領域(レベル)の話はとうに終わっている。ここからは命のやり取りだ。医者は一目見て「うわーヒドイね」などと言う。そんなことわかっとるわ!!!と叫びだしたくなるのを我慢する。「もうこれから切っちゃおう」と医者が言う。どうやら、膿が溜まっていて痛みを引き起こしているらしく、それを排除してしまえばだいぶ楽になるとのこと。「やってくれ!」と致命傷を負い死亡寸前の兵士が仲間に銃殺を頼むかのごとくお願いし、そのまま手術室へ。

 

 手術室に入る。医者の説明によると、私の痔は「痔ろう」という種類らしく、痔の中でも数パーセントほどの割合でしか発生しないⅢ型痔ろうというレアなタイプ。こんなところでSSRを引いても嬉しくともなんともないが、このタイプの痔は市販の薬ではどうにもならないらしい。道理で……と昨夜の苦しみを思い出しながら手術室で待つ。

 

 まず看護師のおばさんが入ってきた。私はうつ伏せで手術台に。おばさんが準備しながら「年いくつ?」だの「どこ住んでるの?」なんて話しかけてくるが、もはや私は痛みで目に見えるもの全てが憎い状況。「へえーウチの息子と同じくらいだ」などとおばさんは言っているが、私は「そっすか」と返すのが精いっぱい。手術室にはリラクゼーション効果のありそうな音楽が流れており、ふとおばさんは「何か聞きたい音楽ある? あればかけるけど」などと聞いてきたがテンパった私は「…………B'z」と午後のラジオみたいなリクエスト、さらに「B'zはなかったわ(笑)」と言われるBAD COMMUNICATION。そしておばさんは、手術の前にお尻綺麗にしますねー等といって私の尻に手を

 

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 この世の人間の怒り・悲しみ・あらゆる負の感情がひとつになったかのような激痛。
 艱難辛苦の濃縮還元。修羅・畜生・餓鬼に続く地獄。
 おばさんの手が私の尻を凌辱していく。(掃除と消毒)
「殺すぞババア! 息子も殺す!」処置がもう1秒長かったらそう口から出ていたのは間違いない。

 

 そして掃除が終わった。一息つこうとするも……手術室の奥からさっきの医者(男)が姿を現す。そして彼の手には……銀色に輝くメス! 施術が始まっ

 

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 泣いた。声を上げて泣いた。誇張などではない。私は大人だが「あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!」みたいな声を上げたし涙も出た。麻酔など無い。尻の表面に冷たいメスが当たる感覚。今思い出しても寒気がする。「もうすぐ終わりますからねー」みたいなことを言う医者に、「もうすぐっていつだ!? おい!!! てめえのもうすぐはこんなに長いってのか!??」とキレて問い詰めたい気持ちが脳内に駆ける。しかし人間、怒りは持続しない。最後の方は「もうやめて……許して……」と生娘のように許しを乞う面持ちだった……。

 

 そして……施術が終わった。私はメソメソとしながら手術台に伏せている。二日連続のメソメソ。医者はさっさと出て行った。おばさんが「出した膿、見る?」などとサイコパスみたいなことを聞いてくるが、「……ぃぃ」と幼女のように返事することしかできない。尻にガーゼを当てられ、「回復室」というメソメソ状態の奴を転がしておく場所へ移動した。そこで待てと言われ、横になりながら私はどうして生きているのか、生命の意味とはという哲学的な問について考えていた。

 

・回復 そして……

 

 そしてしばらくして、気付く。尻の痛みが引いている。太鼓の達人はいなくなり、出血している感覚はあるものの痛みはほとんどない。「助かった……」思わずつぶやく。痛みが消えた。世界が私を祝福しているかのようだった。目に見えている光景が輝きだした。看護師が戻ってきた。手術中は刺し違える予定だったおばさんだが、今は白衣の天使に見える。丁重にお礼を言い、再度診察室へ。

 

 医者が戻る。彼ほどの名医にかかれて私は運が良かった。再度お礼を言い、もう帰るだけだと私が思っていると、医者は口を開いた。

「本手術の日程を決めましょう」

「は?」

「今のは応急措置だから。ちゃんと切開手術しないとまた痛むよ」

 

 

悪夢はまだ終わっていなかった。

 

次回、真夏の大手術編へ続く。

 

 2020/06/17 追記 後編

caesarcola.hatenablog.com

無料で人類を滅ぼす! その時が来た……。【PS4 X-Morph:Defense】

 生意気な文明を築いた矮小な人間共を、レーザービームや爆発兵器を用いてめちゃめちゃに滅ぼしたい……それが皆の共通の願いだということは論じるまでもない。そして今日はいい話を持ってきた。そう、その願いを叶える話を持ってきたということだ。

 

 どういう意味かって? X-Morph:Defense(エックス モーフ ディフェンス)というゲームの話だ。今日はこれをあなたに教える。

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 このゲームが、現在PS Plus の特典で無料配信されている! 初心者に向けて解説しておくと、PS Plusという月額500円くらいのプレイステーションのサービスに加入していると、毎月様々なゲームが配信されそれらを無料で遊ぶことができる。それが今月(執筆時2020年5月)は上記のゲームだということだ。無料……それはすごいことだ。仕組みはわからないが、何かこの世の理を超えた力が働いているのは間違いない。

 

 さて本題に戻ろう。X-Morph:Defenseであなたは地球を襲う侵略者になる。そう、地球を襲う側だ。タイトルにはディフェンスとあるが、あなたは人類を襲う側だ。なぜタイトルにディフェンスとあるかは後で説明する。あなたは高度な文明を持った人類でない生命体【X-Morph】の一員となり、そこでお面のデジタル生命体みたいな上官の命令に従い、地球を侵略していく。人間はその小賢しい知恵を使って反撃を試みてくるが、あなたはそれを上回る戦略と暴力を持ってそれに応える、というゲームだ。

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左上のコンボイみたいな奴が上官だ。あなたは彼の指令に従って地球の各地を襲い、侵略していく。

 

 そろそろやる気になったか? あなたはカブを売ったり買ったりして無人島を開拓するために生まれてきたのか? それとも10連ガチャガチャを回して出てきたアイドルを育成するために生まれてきたのか? それもひとつの答えだろうが…………思い出せ、破壊と殺戮、あなたの両手はそのためにある。

 

 このゲームのジャンルはタワーディフェンス&シューティングということになる。シューティングはともかく、タワーディフェンスというジャンルは耳馴染みの無い奴もいるだろう。別にここはウィキペディアじゃないので詳細な説明はしないが、自分の陣地を攻めてくる敵を、待ち構えて倒すというゲームだ。侵略者なのにディフェンス? そう疑問を抱くかもしれないが、「侵略者が地球に築いた拠点」を取り返そうとしてくる人類からそれを守る、タイトルのディフェンスはそういう意味だ。

 

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人類は様々な兵器を投入してくる。その中には想像を超えた巨大兵器もある! しかしあなたもレーザー兵器や火炎放射器迫撃砲、そして知恵と勇気を駆使して、攻め来る卑劣な人類を蹴散らすのだ!

 

・Y.E.L.L エール……


 この記事は攻略記事ではないので、ゲームの詳細な内容やら攻略については書かない。じゃあ何を書くのか? それはこのゲームをプレイしているあなたに贈るエールだ。応援……エールを書く。

 

 そもそも、このゲームはいくらか難しい。私は常に最高難易度でゲームを始める呪いにかかっているのでベリーハードで始めたが、かなり手こずっている。人類は我らの侵略に抵抗し、様々な戦車や航空部隊を送り込んで地球を奪還しようとしてくる。戦略を考えた上で実際に兵器を操作してプレイしなければならないこのゲームは、実際難しく、小癪なことに何度もゲームオーバーという名の煮え湯を飲まされている。なので侵略ニュービーのあなたはひょっとすると人類の抵抗に屈し、PS4のスイッチを切ってまた島に戻り、カブを売ったり買ったりしてたぬきに借金を返す作業に戻ってしまうかもしれない……。

 

 だが、待つんだ。ゲームのスイッチを消す前に、私の言葉を思い出せ。全てを試したか? 使ってない武装は無いか? 利用していない地形は無いか? 下手に頭を使い過ぎてトリッキーな戦略に頼るよりも、愚直に最大火力を叩きこみ続けるほうが最適解だということもある。あなたの心に聞いてみろ。人類侵略を簡単に諦めていいのか? 卑劣で、愚鈍で、取るに足らない虫けらにも等しい人類を地球にのさばらせて良いのか? あなたは誓ったはずだ。絶対に人類を滅ぼすと。さあ立ち上がれ。ボムを撃て。ビームを撃て。塔を建設しろ。ミサイルを叩きこんで敵機を撃墜するのだ。

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 人間を丸焼きにして喜んでいた時のことを思い出せ……



 人類の抵抗は激しい。たかだが一人当たり1.5kgしかない脳みそを使い作り上げた大量の兵器と練り上げた戦略で戦線を押し上げてくる。だが何事にも永遠はなく、人類の戦力は無限ではない。勝機はある。闘い続ければ、諦めなければきっと道は開ける。諦めそうになったときは人類のムカつく顔を思い出せ……。あなたならやれるはずだ。

 

 では、私はもう行く。もちろん、憎き人類に破壊の鉄槌を下しに行くのだ。あなたももう行くがいい。次に会うときは、ウイスキーを片手に滅ぼした人類の哀れな姿を語り合おうではないか……。

 

 

私は自作ボードゲームをあなたに勧める

 今日が何の日か知っているか?

 

 ゲームマーケット、というものがある。インターネットをしていて耳ざとい奴は知っているだろう、それは電源を用いないアナログゲームの即売会のことだ。ボードゲームやカードゲーム、TRPGなどのおよそエレキの力を用いない全てのゲームが一堂に会し、それを楽しむものが集まるサミットのようなものだ。

 

 そしてその、第何回かはわからないが春のゲームマーケットが開催されるはずの日が今日だったというわけだ。そう、例のウイルスの仕業だ。これに関しては仕方ないという他ないし、生活の安全について私は何も語ることがない。ただ、ゲームマーケットを楽しみに日々を生き抜いて奴にとってはただ災難だったというほかないし、マジで悲しめ……としか私もかけてやる言葉はない。悲しむことは悪いことではない。それも糧にするのが強い生き方というものだ。

 

 それでは、この記事はゲームマーケット追悼の記事なのか? それは違う。何故なら、この記事はあるひとつのボードゲームをあなたに推薦し、買わせることを目的とした記事だからだ。ここまで読んでピンときた奴も多いだろう。そう、筆者も今日催されるはずだったゲームマーケットに出展……つまり、サークル側として参加しゲームを売る予定だった人間のひとりだということだ。そしてそれは初参加で、要するにそこで初めて陽の目を見るはずのボードゲームが存在したということだ。

 

 幸い、現代ではウェッブの力が発展しており、難しい仕組みはわからないがたくさんクリックすると目当ての商品が手に入るオン=ライン通販というものがある。おかげで完全に売る手段が絶たれたというわけではない。だが、実際に目で商品を見て買うのと、発光するブラウザで情報を見て購入手続きを進めるのとでは天と地ほどの違いがある。現地ではゲームを実際に手に取り、このゲームが本当に楽しいゲームなのか、爆発する罠だったりしないだろうかとチェックしてから買うことができるが、オンライン通販ではそれをすることができない。すると客足が遠のくのも現実で、現状、私のゲームはまだほとんど売れていない。

 

 ここまで読んで、「ははーんわかったぞ、この記事では自分のゲームの宣伝をジャンジャンして美辞麗句を並べたて、売れないつまらんゴミを押し付ける気だな! 作者自らの宣伝なんて嫌いだ!」なんていう奴が出てくるのも私は完全に読み切っている。だが、宣伝を嫌うというのは経済活動の否定であり、即ち文化の否定だ。そういう腰抜けに構う時間は全くないので今すぐ立ち去れ。商品について一番詳しく説明できるのは作った本人だということは明らかだ。「ほう、作者自らの宣伝か。この俺を唸らせることができるかな?」と、新しい銃を選ぶ凄腕のガンマンのような目つきをした真の戦士だけが、次の段落を読むことができる。

 

・あなたは生徒、明日はテスト

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 これがパッケージ画像、ひいてはタイトルだ。「一夜漬ケ」の文字が見えるか……?読めない奴は少ないだろうが、これは「いちやづけ」と読む。勉強を一晩徹夜で間に合わせる、という意味の言葉だ。そして、キャッチコピーとパッケージを見せただけで、熟練のゲーマーには一発で必要な情報が伝わる。なのでさっそくこの画像を見せたというわけだ。熟練ならこのゲームは本気のゲームだということがわかっただろうし、プレイ時間が10分~20分のお手軽な対戦ゲームだということも伝わっただろう。キャラクターの決断的な表情と、パッケージの軽快な色使いがそれを伝えている。

 

 それでは次にゲームのルールだが、私はそういうまだるっこしい事は説明しない。元来アナログゲームのルールなんて実際のゲームが手元にないとほとんど意味がわからないし、知ったところでそれが購入のきっかけになるとは思えないからだ。だが、ゲームの雰囲気くらいは知りたいという人間も居るだろう。なので、ゲームの概要を伝えたコミックを描き、それを以前にツイートしているのでそれを張る。

  リンクをクリックするのは面倒だ……。そういう奴が居ることも私はとっくに看破している。なので画像を張る。

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 このコミックを読めば雰囲気はばっちり掴めるだろう。ツイート元には「本音編」と題した別のページもあるから興味のある奴は読め。

 それでは……このゲームを買うべき奴はどういう奴か、それを話していく。

 

1.トラッシュトークが好きな奴

 トラッシュトークとは、原義では、「スポーツの試合前の記者会見や試合中に汚い言葉や挑発で相手選手の心理面を揺さぶる、また相手の気を逸らすような会話で混乱させ、調子を乱させる作戦のこと」を指すらしいが、ここではもっと広義でゲーム中の軽口のことを指す。ゲーム中に行う雑談やちょっとしたジョークのことだ。

 

 このゲームではそれらのトークが行われやすいようにデザインされている。まず、ゲームのモチーフがテスト……スクールで行われる試験のことだ。島の開拓を行ったり、宝石の売り買いをしたことがある奴は多くないだろうが、テストを受けた事がない奴はいないだろう。実際のテストについて思いを馳せ、昔話をするのも良いし、「俺は学年首席だったんだ! だからこのゲームも強いはずだ!」と息を巻いてゲームに臨むのもよいだろう。

 

 また、ゲームに用いられるカードにも工夫がある。そこにはコミカルなイラストとユーモアに富んだテキストが記載されている。テキストに意味はなく、いわゆるフレーバーテキストという奴だが、それをネタに喋ることもできる。以下にいくつかのカードを公開しよう。

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 これらのカードを実際に触り、あなたは友人と軽妙にトークすることができる。ゲーム本体には上記のようなカードがこの5倍以上存在するため、ゲーム中すぐに飽きてしまうということは無いだろう。

 

 以上が、このゲームをプレイするのにおすすめできる奴だ。1.と書いたが2.は無い。たくさん挙げればキリがないし、読者全員が当てはまってしまうとなれば本末転倒だからだ。それだけ私はこのゲームに自信を持っているということでもある。

 

 さて、そして今回の記事はこれで終わりだ。興味を持った奴は以下の通販サイトから購入することができる。通販…………それが面倒なことはわかっている。会員登録……住所の登録……支払い方法の選択…………様々な障害が立ちはだかる。私もできることなら今からあなたの前にワープして、財布から金を抜き取ってゲームを置いて帰りたいが、現代の科学力ではまだそれは不可能らしい。なので私からはたくさん頑張れ……という月並みなアドバイスをすることしかできない。

BOOTH:https://caesarcommand.booth.pm/items/1943055

ボドゲーマ:https://bodoge.hoobby.net/games/ichiyazuke

アークライト:https://arclightgames.shop/shop/shopdetail.html?brandcode=000000000426&search=%B0%EC%CC%EB&sort=

 

 ただ、余談だがBOOTHというサイトを用いて購入を行うと、実際にこの筆者が発送を行う。梱包担当(私の右手と左手のことだ)がプチプチに包んで箱に入れ、発送担当(私の右足と左足のことだ)が発送センターまでゲームを運ぶ。基本的に毎日注文の確認を行っているので購入ボタンから2~3日で届くはずだ。私はそれらの努力をする。あなたには購入の努力をしてほしい。匿名発送サービスを使っているので筆者に住所がバレていつの日にか爆弾を送られるというリスクも無い。

 他の通販サイトではどうやっているかわからないが、大人がやっていることなので大丈夫だろう。今のところ、「商品が来ない」「ゲームではなくポテトチップが入っていた」などの文句は来ていない。

 

 それでは、今度こそここでゲームの紹介は以上だ。あとはゲームの感想だが、それはあなたが文章を入力するべきだろう。「一夜漬ケ」を掴んだ、その手で。

 

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