新セットが出る今こそ好機!  マジック:ザ・ギャザリングの始め方

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 姉たちは着飾って出て行ってしまった。あなたは屋根裏部屋の掃除を言いつけられているが、誰も訪れない部屋を掃除しなくたってバレやしない。ドレスが無いからお城の舞踏会には行けず、あなたは暇を持て余す。そこに私が現れて、あなたに魔法をかけていくのだ。これであなたも外に出れるが、行先はお城の舞踏会ではない、戦場だ。外に出てみればそこにはゴブリンやトロールが獲物を求めて闊歩しており、空は天使と稲妻が飛び交っている。ドレスなんかじゃ身を守れないから、あなたは甲冑を着込んで剣を掴む。カボチャの馬車ではスピード不足だ、あなたはドラゴンに乗り込んで空を駆ける。12時を過ぎてもこの魔法をとけず、戦いは始まったばかりであった。

 

 今日はあなたにマジック:ザ・ギャザリングMTG)を紹介する。マジックは25年以上の歴史がある古いカードゲームだが、何故今頃になってそんなゲームの紹介をするのか? それは最近になってマジックの電子版である「MTGアリーナ」のスマホ版がリリースされたからだ。更に、2021年4月23日に「ストリクスヘイヴン:魔法学校」という新しいセットが発売されるからであり、つまり、今が非常に「始め時」ということだ。

 

 「そういうあんたは何者だ?」 インターホンに出れば怪しげな営業人間が姿を現し、詐欺まがいの契約を勧めてくる現代に辟易してしまったあなたはそう思ったことだろう。なので簡単に自己紹介をしておこう。私はカエサル。インターネットで文章と絵を書いている者だ。マジック:ザ・ギャザリングを始めたのは7年ほど前だ。義務教育に例えれば、ようやくランドセルを脱ぎ中学校の制服に袖を通し始めた頃ということになる。

 

 そして私がこのゲームを紹介しようと思った理由だが、それは誰かに金を積まれたからという訳ではない。本当の理由は…………好きだからだ。このゲームが。具体的に言うとから揚げと同じくらい好きだ。あなたは出来立てのから揚げを食べた事があるか? あるなら、私がどれくらいシリアスな話をしているかわかるだろう。

 

 

 それではマジックの紹介に入るわけだが…………まずは下の画像を見て欲しい。

 

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 正直に答えて欲しいい。これらのカードを見て、あなたはどのカードを一番「いいな」と思っただろうか。可愛らしいレディならば、もちろんOKだ。この記事の続きを読んでいい。凛々しくクールなハンサムならば、それもまた素晴らしい。あなたもこの記事の続きを読むべきだ。だが…………なんかよくわからん不気味でモヤモヤした亡霊のカードを「いいな」と思った奴は今すぐ帰れ。こんな記事を読んでないでどんな方法でもいいからとっととマジック:ザ・ギャザリングを始めろ。マジックにはあんたが好きそうなカードがサハラ砂漠の砂粒ほどある。それが時間の有効活用というものだ。


・「デッキ」ではなく、「ライブラリー」

 気を取り直して、まずはこのゲームについて説明しよう。マジックは基本的に二人で対戦するカードゲームだ。そしてマジックには世界観がある。この対戦は魔法使い同士の力比べだ。つまりあなたも対戦相手も魔法使いで、土地から得たマナというエネルギーを用いてカードに書いてある呪文を唱えるのだ。つまりカードは呪文書だ。だからマジックでは、ゲームが始まると山札の事をデッキとは呼ばない、「ライブラリー」だ。それは呪文書を入れた書庫というわけだ。

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 呪文には対戦相手の憎い顔を丸焦げにするための稲妻を出すものもあれば、怪物や伝説の戦士を繰り出すための召喚呪文もある。召喚呪文で呼び出される生き物(マジックではこれを「クリーチャー」と呼ぶ。呼び出されるのがドラゴンだろうが普通の人間だろうがクリーチャーだ)で相手に攻撃したり、逆に相手からの攻撃をブロックしたりして身を守る。そして最終的に相手のライフポイントを20から0にすれば、見事あなたはこのゲームの勝者だ。

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 しかしこのマジックという戦場……一筋縄ではいかない。あなたが召喚した自慢の戦士が、対戦相手の死へと誘う呪文で無残にも殺害されることなどしょっちゅうだ。訳の分からん催眠術みたいな魔法で目覚めぬ眠りへと堕とされることもある。ひと昔前にはクリーチャーを鹿に変えてしまう術が大流行したために、「マジック:ザ・奈良公園」と言われたことすらもある。

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 マジックには大きな特徴として、相手への介入度が高いというものがある。介入度? 見知らぬ言葉かもしれないがビビることは無い。要するに相手に干渉する……敵へ妨害や攻撃ができるということだ。そして…………それらがスリリングでエキサイティングだ。もちろん相手も妨害や攻撃をしてくる。しかしそれらを巧みに躱し、とっておきの呪文で相手にダメージを叩き込む。もちろんそこまでにはいくつもの選択肢や戦略性があり、どういった結果になろうとそれはあなたの選択だ。あなたの頭はフル回転し、どうやって相手を打ちのめしてやろうかと思考が加速する。カードを操る手は力強いものになり、ドーパミンが放出される……。血沸き肉躍るなどというものではない、脳沸き指踊る戦いだ。つまり、とびきりに面白いということだ。


・ルールを覚えるにはどうすればいいの?

 さて、マジックというゲームの概要はわかった。だが、肝心のルールは? とあなたは思うかも知れないが、この記事で細かいルールをここに書く気はない。往々にしてこういうルールは「とりあえずやりながら説明しよう」の方が伝わるし、誰かにフェイスtoフェイスで教えてもらった方がいいからだ。それができないなら先ほども言った「MTGアリーナ」という電子ゲーム版でもチュートリアルがある。周りにルールを知っている奴が居ないし電子ゲーム版じゃなくて紙のカードで覚えたいぜ、という奴は最終手段だ。直接私に「教えてくれ!」とメッセージを送れ。そのときは予定を合わせよう。

 

 ルールを覚えるときに、ひとつ注意点がある。それはルールを覚えるときに「細かい部分」は無視しろ、ということだ。マジックは古いゲームであり、ルールにも例外が大量にある。なのであなたがまず覚えるのは基本的な部分だけでいい。「土地をセットして呪文を唱えて、クリーチャーでアタックして相手の顔面をボコボコにする」という内容だけだ。顔面ボコボコ、だけ覚えたらあなたは立派なプレイヤーである。私が保証しよう。

 

 もしかしたらあなたの周りに出現したマジックプレイヤーは「クロックがどうのこうの」「クリーチャーのスタッツがアレでコレでテンポアドバンテージがうんぬん……」などと訳の分からないうわ言を喋り始めるかもしれない。しかしそれはカードゲーマーの鳴き声みたいなものなので、完全に無視していい。ちょうど麻雀で点数計算を覚えなくても遊んでいいというのと一緒だ。犬や牛がワンワンいったりモーモーいうが、人間のあなたが理解する必要はない。もしかしたら、いずれあなたも犬や牛の言葉がわかるようになるかも知れないが、そうなったら一緒になってワンワンモーモー言おう。それはそれで楽しいものだ。

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 (↑最初は完全に無視していい。可哀そうだと思ったらたまに聞いているフリをしろ)


・カードを持っていなくてもリミテッドならしっかり遊べる。

 さて、ここからが本題だ。まずハッキリというが、マジックを遊ぶのにデッキ(ゲームが始まればライブラリーと呼ばれるが)を最初から持っている必要がない。それは電子ゲーム版なら実際の紙のカードを集める必要が無いというような意味ではなく、リミテッドという遊び方が存在するということだ。

 

 それでは、リミテッドとはどういう遊び方なのか? 簡単に言うと、その場で決められた数のブースター・パックを開封し、中に入っているカードでデッキを組み上げて戦う、というルールだ。既に自分が持っているコレクションの中から自由にカードを選んでデッキを組み上げる構築戦ではなく、限られた(=リミテッド)カードの中からデッキを組み上げる、という意味なのである。

 

 ちょうど今流行っているサバイバル系シューティング…………PUBGやエーペックスレジェンズ…………みたいなものだ。あれらも最初からお気に入りの装備を持っているわけではなく、なんでか知らんがヘリからダイブして武器やアイテムを探して回り、そして拾った銃で殺し合う。リミテッドでは宝箱やサプライボックスではなくブースターパックで、カービン銃やフラググレネードではなくクリーチャーやソーサリー呪文で戦うのだ。

 

 このリミテッドというルールはマジックの中でも別に特殊な遊び方ではなく、しっかりと公式世界大会等のルールにも採用されている。ブースター・パックには15枚のカードが入っているが、もちろん事前に中身を知ることはできない。つまり、このルールの良いところはカードプールが初心者も熟練者も同じ条件で始められるということだ。

 

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(筆者の好きなカードを紹介:この凶暴なゴブリンは醜くて素晴らしい。フレーバーテキストを読んで、「こいつは…私だ!」と感じたためお気に入りだ。死ぬほど弱いが)

 

 リミテッドにもいくつかルールがあるが、最も単純な6パックを開封しそこからデッキを作る「シールド」というルールでは、15×6、つまり90枚のカードの中から40枚のデッキを組むことになる。最初はやや難しいかもしれないので、できれば既にマジックをプレイしている人にアドバイスを貰いながらデッキを組むのがベストだろう。

 

 ここで、抜け目ないあなたは気づいたはずだ。「リミテッドを勧めているけれど、結局デッキを組むのは難しいの? 初心者を甘言で陥れて狩るための卑劣な罠だったの?」確かに……デッキを組むのは難しい。しかし、それを差し置いてもリミテッドには魅力があるから勧めているのだ。決して卑劣な罠ではない。

 

 その魅力とは…………パックを開封できることだ。「パックを開封して遊ぶルールなんだから当たり前だろ。何を言っているんだ?」その通りだが、しかし、それを差し置いてもパック開封というのは楽しい! 当たりが入っているかもしれない物を開けていくというのは、最も単純な運試しだ。おみくじや福袋など、人間は古来より運試しが好きだ。パックから強力なレア・カードが出現すればそれはもう嬉しいが、そのカードをすぐに使用して遊べるというのがリミテッドの楽しいところだ。

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(カード紹介2:美しくも怪しいデーモンのイラスト、ハイファンタジーの良さがある。私はこれを所持しているが、コレクション目的なので対戦に使用したことはない。)

 

・これからプレインズウォーカーになる者たちへ

 あなたはリミテッドの概要を覚えた。そしてパックを開封したくてうずうずしている。だがまあ待て、まだ行くな。あなたは「リミテッドを遊ぶぞ! うおおお」と雄叫びをあげて走り出そうとしているが、このままではあなたは他の魔術師にズタズタに引き裂かれ、マジックが嫌いになってしまうかもしれない。あなたが負けてべそをかくのは別にしょうがない。涙は無限ではないし、敗北から学び強くなるのもゲームの楽しみだからだ。しかしマジックを嫌いになるのはダメだ。楽しむはずのゲームを嫌いになるようでは、何が何やらわからないからだ。だからもう少しだけ、私の話を聞いていけ。

 

 しかし……これ以上話を聞くのが難しいということを私は知っている。例えばあなたはプレステやらスイッチ、スチームなどで新しくゲームを始めたときに、チュートリアルを最後まで聞くだろうか? 訳知り顔のジジイとかが出てきていちいちバッグの開き方やら装備の変更方法などを宣うが、あなたはベイビーじゃないから話を聞かずに手近な敵に突撃する。そして返り討ちになったとき改めて操作や知識を学ぼうとすればいいが、往々にして「クソゲー……」と呟いてコントローラを放り出し腹が減ってきたことに気づいてカップヌードルでも食べようかとお湯を沸かし、エンド・オブ・ゲームになってしまう…………今までに何度も繰り返されてきたゲームの悲劇だ。それと同じような悲劇をマジックでも起こしたくはないと私は考えている。では…………どうすればいいか? 私は頭を捻って考えた。そして、ごちゃごちゃ言うと「訳知りジジイ」になってしまうので、ひとつだけ言おうと決めた。

 

 「楽しみ方を見つけろ」 私にできるチュートリアルはこれが最後だ。マジックには様々な楽しみ方がある。今日書いたパック開封や、バトルの熱狂などというものはマジックの面白さのほんの一部に過ぎない。カードに書いてあるイラストを眺めたりお気に入りをコレクションするのも楽しみのひとつだし、フレーバーテキストを読んでカードの世界に思いを馳せるのも正しい楽しみ方だ。これは余談だが、マジックに登場するカードには小説になっている物語があり、それを公式ウェブサイトで読むこともできる。

 

 楽しみ方に正解も制限もない。あなたの目的は楽しい趣味の時間を過ごすことで、マジックのルールを覚えたり対戦で勝利を目指すのは二の次だ。実際に私も細かいルールを覚えるようになったのは初めてから2年くらい経ってからだし、未だにミスも多い。それでも、このゲームは面白く、まだまだやめられそうにない。


 マジックのプレイヤーは魔法使いであるという設定を最初に書いたが、それら魔法使いには「プレインズウォーカー」という総称がある。和訳すれば、「次元渡り」だ。マジックのカードは様々な次元が舞台になっている……それはつまり私たちが住む地球ではなく、どこか別の宇宙が舞台ということだ。通常の人間は地球で生まれたら地球の景色だけを見て死ぬ。しかしプレインズウォーカーの灯がともった人間は違う。カードを通して様々な次元を旅することができる。それは初めて月に降り立ったアポロ11号の船長ニール・アームストロングも羨むような大冒険だ。そしてあなたは今、そのプレインズウォーカーの灯に覚醒しようとしている…………。

 

 それでは、私はもう行く。次の戦場を求めて旅に出るということだ。もし別の次元であなたと出会ったらならば、そのときはもちろん力比べだ。一切手を抜く気は無い。あなたもプレインズウォーカーとしての実力を鍛えていることだろうし、それを全力で迎え撃ってこそ戦いというのは美しく楽しいものだからだ。あなたの唱える呪文が刃となって私の首を狙ってくることを、ずっと楽しみにしている。

 

 「灯を点せ/Ignite Spark」 

 

 それでは、さらばだ。

 

 

 

 

 …………おっと、肝心のマジックへと繋がるリンクなどを張るのを忘れていた。以下にリンクを張っておく。あとは好きにしろ。

 

(MTG 日本公式)

mtg-jp.com

 

MTGの物語や小説に興味がある奴はこっちだ)

https://mtg-jp.com/world/story/

 

(MTGアリーナ、電子ゲーム版のアクセスはこっちだ。)

https://mtg-jp.com/mtgarena/

 

(スマホ版はこっち)

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(これは筆者のTwitter。挑戦状はこちらからということだ。もちろん、称賛や絶賛の連絡もこちらから。) 

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