5勝0敗がリセット!? マジック:ザ・ギャザリングのオンライン大会で私が直面した事態とは。

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 私はカエサル、プレインズウォーカーだ。プレインズウォーカーというのはTCGマジック:ザ・ギャザリング」を遊んでいる人のことを指す言葉で、山登りする奴をアルピニストと呼ぶのと大体一緒だ。

 

・大会とは

 

 さて、今日は先週末にあったオンライン大会の話をする。これはマジック:ザ・ギャザリング(以下マジック)の電子版であるMTGArenaというソフトを用いた大会で、私が参加したものは正確には予選ウィークエンドという。カードゲームの大会…………よくわかんないけどそれで勝つとどうなんの? バイデンとかに褒めてもらえるの? TCGに詳しくないあなたはそう思っただろう。なのでベイビーにもわかりやすく言うと、「最終的に賞金が出る」というものだ。

 

 世界に金はまだ残っているようで、カードゲームで遊んだ上に賞金がもらえるというのはドリームな話だ。しかし先ほども「最終的に」と言ったように賞金ゲットまでの道のりはかなり険しい。以下にその順序を書きだしてみよう。

 

STEP1:MTGArenaのランクマッチで月間最終成績1200位以内を達成し、STEP2への参加権を得る。

STEP2:予選ウィークエンド(1日目) で7勝、3敗してしまうと敗退。つまり7勝2敗以上の成績で二日目へ。

STEP3:予選ウィークエンド(2日目) こちらも先ほどと同じように3敗するまでに7勝。チャンピオンシップの権利獲得へ。

STEP4:チャンピオンシップ ここまで残れるのが200人前後で全員に賞金が確定!

 

 こんなに文字を並べられても、家電とかを買ったときについてくる説明書もまともに読めない奴にはなんのことやらわからないだろう(私の事だ)。なので、以下にイメージ図を描いた。

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 この山頂を目指しての山登りなのだが、山頂……つまりチャンピオンシップでもまた熾烈な戦いが繰り広げられる。もちろんそれは優勝者を決めるためだ。そして優勝者には賞金が15,000ドル与えられる。15,000ドル…………つまりいくらだ? 私は理系じゃないので計算できないが、専門家によるとビッグマックが1000個くらい買えるらしい。すごい!

 

 優勝者には15,000ドルだが、チャンピオンシップでは最下位だったとしても500ドルの賞金が与えられる。やはりよくわからないがビッグマック100個くらいということだろう。カードゲームで遊んでお腹いっぱいになれるんだからそれでもスゴイものだ。

 

・一日目

 さて、ここまで話したということはもちろん、私はこれらのSTEPに挑戦したということだ。といってもSTEP1は楽しくスタンダード(マジックの遊び方のひとつだ。)を遊んでいたら達成できたもので、月末になったときにあんたはよく頑張ったみたいなメールが来たことでそれを知ったくらいだ。

 

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 海外の言語なので難しいが、#601と書いてあるので601位だっということだろう。1200位までが通過ということなので大体その半分くらいだ。下の方にgood luck!と書いてあり、私の脳内でキムタクがサムズアップをする。つまりSTEP2:予選ウィークエンド1日目への参加権を手にしたということだ。

 

 私はこの予選ウィークエンドというものに参加するのが初めてだったので、当初は「まあ少しくらい勝ってジェムが貰えたらいいな」くらいの気持ちでいた。ジェムというのはゲーム内通貨であり、いわゆるガチャ石といえば理解が早いだろう。

 

 そして予選ウィークエンド1日目当日、開始時間は22:00からだ。夜遅くない……? と健康優良不良少年たちは思ったかもしれないが、これはマジックがアメリカ基準のゲームだからだ。これは専門用語なので賢明なる読者諸氏にはわからないかも知れないが、世界には「時差」というものが存在しており、日本で22:00だとしても何故かアメリカではまだ昼前くらいらしい。マジ? どうやら頭が賢い奴の調べによると世界は地球というボールのような形になっており、ジャパンでお日様が出てるとき、アメリカでは真っ暗な夜らしい。コペルニクスというどこかの男がそう言っていたらしいが、私はこの目で地球がボールだと確認していないのでまだ半信半疑だ。

 

 まあいい。とにかく私は2021年5月15日夜の22:00にパソコンの前に座ってMTGArenaを起動し、大会に参加した。Discordというインターネット電話で友人と喋りながらの気楽なものだったが、なんとそこで私は7連勝の快挙を達成したのだ!

 

 勝利の女神に愛される……そんな瞬間がある。私は別に強いプレイヤーというわけでもなく、日々の対戦戦績も平凡なものだ。しかし間違いなくそのサタデーナイトに私はツいており、一度も負けることなく7勝することができたのだ。

 

 対戦カードゲームをかじったことがある人にならわかると思うが、これらが基本的に運が絡むゲームであることは間違いない。実力のあるどんな強豪プレイヤーだとしても運が悪ければ全く勝てないし、逆にスーパーウルトラハイパーミラクル幸運ならばちょっと賢いアライグマでもカードゲームは勝つことができる。だからといって運だけのゲームではないのがマジック……ひいてはカードゲームの面白いところなのだが、この話をすると日が暮れてまた昇ってしまうのでまた今度にしよう。

 

 ここで私のデッキを紹介しよう。マジックについて詳しくない奴には退屈かもしれないが、カードゲーマーにとって自分のデッキを解説するというのは荒野のガンマンが自分の愛銃について語るようなもので、つまり気持ち良いということだ。笑って読み流して欲しい。

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 私が使っていたのはいわゆる「ティムールアドベンチャー」といわれるデッキタイプで、「厚かましい借り手」「砕骨の巨人」「恋煩いの野獣」という通称「エルドレインの三馬鹿」を使用したデッキだ。これらは1枚のカードなのに実質2枚分のカードとして使用できる優秀なカードで、武器に例えるならカービン銃に小剣をくくりつけた銃剣といったところだ。撃ってよし斬ってよしというカードで相手を苦しめ、勝利を目指すのが私のデッキの戦術だ。

 

 中でも私のお気に入りは先述した「厚かましい借り手」というカードだ。このカードはコソ泥をする小悪党な妖精を表現したものであり、カードとして強いのはもちろん、MTGArenaでプレイしたときの演出が素晴らしい。唱えると、相手のカードを手札に戻すという妨害を行いつつも妖精がゲーム画面中央に現れこっちを見ながらガッツポーズ! こんなに憎たらしい演出があるだろうか?

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 ↑妨害しつつもこのガッツポーズ。聖人でもなきゃキレてしまう。

 これ以上ない鬱陶しいガッツポ演出を見せることで相手に与える精神的ダメージを評価し、私はこのカードをありったけ入れたデッキを構築した。


 とにかく、私は幸運にも予選ウィークエンド1日目を通過することができた。次は翌日の予選2日目、こちらでも7勝することができればチャンピオンシップに進むことができる。私は別にこのマジックというゲームで世界一になりたいぜ! と思っていたわけではないが、それが現実的なレベルになってくれば話は変わる。ゲーマーにとって勝利の味は格別だ。それが世界レベルの大会ということになれば想像するだけでも涎が出てくるものだ。もしこの幸運が連続し、たくさん勝つことができれば私の大好きなマジックというゲームで最高の体験をすることができるのでは……と私も思わずにはいられなかった。

 

・そして二日目へ

 翌日の22:00、私は昨日よりも神妙な顔をしてパソコンの前に座っていた。もちろん本気でマジックに挑むためだ。そして予選ウィークエンド2日目、チャンピオンシップへの参加権をかけた戦いが始まった。

 

 一戦目、相手は赤単色の攻撃的なデッキだった。元々有利なデッキタイプということもあり勝利。

 二戦目、青赤のミッドレンジ。相手がカッコよくて強いドラゴンで攻撃してくる中、私はコソ泥妖精で小突きまわしてなんとか勝利。

 三戦目、ならず者が大量に入った青黒のデッキ。対戦相手が運悪く事故(デッキが上手く回らないこと)する展開もあり勝利。

 四戦目、再度の赤単色デッキ、一戦目と同じように勝利。

 五戦目、青白赤のサイクリングデッキ、サイクリングとは自転車走行のことではなく手札を捨てて引く動作のことをいい、それによって動くギミックを使ったデッキ。ギリギリの展開が続いたが、最後の最後で相手がミスをして勝利。


 なんと5連勝だ! 五戦目が終わり画面に「勝利」の文字が現れたとき、思わず身体が震えたのを覚えている。勝利の女神は二日連続で私に微笑み、というよりもはや満面の笑みだ。あと2勝でチャンピオンシップに進める……! 私は自分のマジック人生で最もツいてる夜に最高の全能感を得て、次の対戦相手とマッチングしようとゲーム画面をクリックした…………。

 

 ……しかし、事態はここから急変する。

 

・エラー発生

 私は意気揚々と6戦目に突入しようとしたが、なぜか対戦相手とマッチングするためのボタンが押せないのだ。ボタンが押せない……というのは予選ウィークエンドのイベントページから参加できなくなっているということであり、私はとても困惑した。私は嫌な汗をかきつつもゲームを再起動するが状況は変わらず予選に参加できない。私は解決策を求めてツイッターで検索を行った。

 

 すると、驚愕の事態が発覚した。

 

 この予選ウィークエンドの二日目、フォーマット(対戦形式)はスタンダートというものなのだが、ゲーム側のエラーでヒストリックのデッキでも参加できるようになってしまっていたのだ。これがどういうことかというと、剣道の大会にライトセーバー持ってきた奴がエントリー可能になってしまったということだ。カードパワーの違いもあり、竹刀でライトセーバーには勝てっこない。そういう完全に条件の違った対戦が可能になってしまっていたのだ。

 

 私は通常通りスタンダードのデッキ(竹刀)でエントリーし、当たった対戦相手の五人もスタンダードのデッキであり幸運なことにジェダイにもシスにもマッチングはしなかった。なので私としては「良かったぁ……」という他ないが、確かにライトセーバーとマッチングした人は同情するしなんらかの補償はするべきだとも思った。そして、そのエラーを確認したMTGArenaの運営が、確認のためにマッチングを一時停止したということのようだった。

 なるほど、それではヒストリックのデッキでは参加できないようにしてマッチングが再開するのだろうか。と私が思っていたところに、次のツイートが目に飛び込んできた。

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 『予選ウィークエンド2日目をリセットします。(中略)すべての勝ち負けは0に設定されます。』

 

 

 

……………………。

 

 


 住宅用の火災報知器にひもがついていることを知っているだろうか? このひもを引くことで報知警報の停止や点検ができるようになるもので機能としては警報停止ボタンを押すことでも代用可能なので場合によっては取り外してもいいものらしい……。

 

 どうしていきなり火災報知器の話をしたかって?

 

 それはもちろん、放心して天井を見上げることしかできなかったからだ。天井にある火災報知器を見つめ、「ああ…………ああ…………」と声を出すことしかできなかったからだ。

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 徒労。その二文字が脳内に浮かび上がる。時間は24:30。既に月曜日になっている。『リセット。全ての勝ち負けは0に設定される』 二時間半の激闘は無かったことになり、勝利の女神は泡と消えた。Discordで通話していた友人たちの「これは…………」という声に返す言葉もない。

 

 頭を抱えながらも私は上記のようにツイートを行った。文末に「もう一回勝ちましょう」などと言っているが、これは精いっぱいの強がりだ。運が絡むゲームの性質上、強い奴が必ず勝てるわけではないし、だからこそ私は二日続けて12連勝を記録することができた。しかしここからまた7勝……それは長く長く遠くて険しい道のりに見えた。

 

 結局、リセット後の予選再スタートが始まったのは日本時間の01:50ほど。既にかなり眠たいが、勝負は再度ここからだ。私はリポビタンDを蓋を開けて、徹夜の覚悟を決めた。勝利の女神がまだ消えていないことを祈りつつ、対戦相手とのマッチングを始めた……。

 

一戦目、赤緑の攻撃的なデッキ。サイドインした〈燃えがら地獄〉というカードで戦場を火の海にして勝利。1勝0敗。

二戦目、青黒緑〈巨獣の巣〉デッキ。打ち消し呪文が噛み合って勝利。2勝0敗。

三戦目、白青黒〈予言された壊滅〉デッキ。「厚かましい借り手」を唱えるタイミングが下手だったり私の細かいミスもあり敗北。2勝1敗。

四戦目、白単色の攻撃的なデッキ。相手のデッキが綺麗に回って敗北。2勝2敗。

五戦目、赤単色の攻撃的なデッキ。昨日から赤単デッキにはまず負けないこともあり、勝利。

六戦目、青赤のミッドレンジ、襲い掛かるドラゴンにコソ泥妖精で対抗するも、二頭のドラゴンが止められず敗北。予選ウィークエンド2日目、敗退。日本時間04:32。

 

 結果、3勝3敗でフィニッシュとなった。

 

 そのときの率直な感想を言えば、悔しいというのが正直なところだ。いくらリセット前に5連勝していたとはいえ、証拠の画像もなければそもそもその直後3連敗して敗退して可能性も十分にあったため、それを元にどうこう言うことに意味は少ないだろう。本当に強い奴なら勝敗リセット後も連勝できたのでは? などと言われれば私としては憤怒の表情で睨みつけることしかできないし、深夜というよりもはや明け方の5時前にそんな気力は残っていなかった。

 

・プレインズウォークは続く

 

 アメリカは訴訟大国といわれているが、日本在住の私が本件に対して大きな声をあげることのコストパフォーマンスは悪いだろう。しかし、何も対処をしないというのも他人事がすぎるかと思い、私は日本ウィザーズに一通だけメールを送った。

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↑大した内容ではない。要約すれば「しっかりしろ」という六文字で済むようなものだ。しかしこういった小さい声の集約が何かのきっかけになることを祈っている。 

 

 マジック;ザ・ギャザリングはとてもエキサイティングで面白い最高のゲームだ。しかし運営も最高かというと、少なくとも今はそうではない。だが人間が必ずミスをするように、そのミスから学べるのも人間だ。つまり人間やその集合体は良い方向に変化していくことができると私は信じている。繰り返しになるが、少しづつでも良い方向に変わっていってくれというのが、いちプレインズウォーカーとしての願いである。

 

 私は今後もこのゲームを遊び続けるだろう。それは私がゲーマーで、ゲームを通した真剣な力比べが楽しいからだ。深夜に熱中してカードゲームに臨み、緊張でマウスを手繰る手が震え、汗でシャツをにじませる体験などなかなかできるものではない。それは間違いなく私の人生を豊かなものにしているし、この楽しさを忘れることなどできない。

 


 さて、そろそろ私の話は終わりだ。これを読んだあなたがどう思うかはわからないが、何か思う所があればツイッター等でシェアしてくれれば私がそれを読んで面白がったりするだろう。あなたがこの記事を面白いと思ったのならば、私が書いた他の文章を読むのもいいだろう。マジックに興味を持ったならば、ぜひ始めてみるのがオススメだ。そしてもう既にあなたがプレインズウォーカーだったならば、私と次に会うのは戦場ということになる。そして私の妖精が、あなたのパーマネントを手札に戻してガッツポーズを決めるのだ。その瞬間のあなたの表情を楽しみにして、今日はここで筆を置くことにしよう……。

 


 

 

追記! (2021年5月18日 日本時間08:33更新)

 本記事が公開されたのは5月17日の日本時間09:30ほどだったが、

 

 5月18日の02:48(もちろん日本時間、言うまでもなく深夜だ)にウィザーズからメールが来ており、その内容を要約すると

「あんたが予選でたくさん勝ってたことが確認できたのでチャンピオンシップに招待するぜ!」

というものだった!

 

 つまり、これらが私の見ている幻覚などでなければ、6月4日-6日開催の「ストリクスヘイヴン チャンピオンシップ」の参加権利を獲得したということだ!

 

 目を覚ましざまにメールを確認した私は思わず「やったぜ!」と叫び、1分ほど喜びのダンスを踊って嬉しさに震えた。

 

 本記事は記録として残しておくが、賢明なる読者諸氏は次の更新記事が「ストリクスヘイヴン チャンピオンシップ 優勝レポート」となり大量のビッグマックと共に私がサムズアップを決めている画像が掲載されているよう祈っていて欲しい。

 

行くぜ! チャンピオンシップ!

 

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