散財、浪費、人生…………そしてゲームマーケット

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 散財、浪費、人生…………そしてゲームマーケット

 

 『メイド イン ワリオ』が遊びたかった。当時小学生だった私は、その欲望に脳を支配されていた。

 

 『メイド イン ワリオ』シリーズというのは、ワリオとその仲間達が作ったという設定の様々なミニゲームが遊べるという内容のゲームタイトルだ。当時はNintendoDSでの最新作『さわる メイド イン ワリオ』がリリースされていた。

 

 男子小学生におけるDSとは、江戸時代における刀と一緒だ。それを持っているかいないかで士農工商、身分が証明される。そして私は「持たぬ者」だった。すると友達と集まって遊ぶ楽しい時間だって、ゲームの時間になれば寂しい時間になる。DSを持っている友達を指を咥えて見ているしかないのだ。

 

 しかし小学生も武士と同様、情けがある。DSで遊ぶのを交代してくれるのだ。友人の山岸くんが私に貸してくれたのが初めてだったと思う。私は秘蔵の名刀を受け取るが如くうやうやしい手つきで彼のDSを受け取り、タッチペンで画面をつっついた。その時遊んだゲームが「さわる メイド イン ワリオ」だったのだ。

 

 ワリオは麻薬的に面白かった。人間、一度覚えた快楽を忘れることができない。そして私はDSを欲しがる亡霊になった。親にねだるが、そう簡単には手に入らない。こうして鬱屈した気持ちが溜まったまま半年が経過し、季節は夏になった。そしてやってきた、あの悪夢の行事「夏祭り」が。

 

 いや、夏祭りは悪くない。悪いのはその出店、いわゆるテキ屋だ。中でも「くじ屋」、あれが小学生の私に悪夢を見せた。ご存知ない方のために解説すると、夏祭りなどにある「くじ屋」は概ね一回100円や200円などでくじを販売し、「当たり」を引くとエアガンやゲームソフトなどの高額なおもちゃが景品として手に入るというシステムの出店だ。そして、私の目の前にあるくじ屋の景品にはあったのだ。あのNintendoDSが。

 

 

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 単刀直入に言おう。この文章を読んでいる小学生には残酷な真実で申し訳ないが、あれらの「くじ」に当たりは入っていない。それらは純粋な子供から小遣いを騙し取るためのペテンで、言ってしまえば詐欺だ。だが、小学生の私にそれを見抜くことはできなかった。そこからは概ね推察の通りだ。哀れなキッズだった私はDS欲しさに全財産を投じ、「夏祭り用に」と両親に持たされたなけなしの二千円を全て失ってしまったのである。

 

 そこからは暗黒の記憶……焼きそばもりんご飴も買えず、お腹を空かしたまま夏祭りの喧騒の中を歩くのは悲しいほどみじめだ。あのときのことを思い出すと今でも心がじくりと痛む。それが人生で初めて味わった「散財」の虚しさ……であった。

 

 というわけで、今日は「散財」の話だ。といっても先ほどのような暗い話だけではない。今日は良い話を持ってきた。良い「散財」の方法だ。今日はその話をする。

 

 今週末、つまり2020年11/14(土),11/15(日)の二日、国際展示場にてゲームマーケットというボードゲーム即売会イベントがある。ゲームマーケットは有名なのでエンタテイメンツへのアンテナが高い者は既に知っているだろう。今回のイベントは昨今の感染症対策のことも踏まえ、入場には電子チケットというアイテムが必要とやや煩雑なミッションがあるが、それらは確定申告と一緒で人間にぎりぎり乗り越えられる試練ということだ。

 

 さて、それではそのゲームマーケットで何をすれば良いのか、それはずばり『ヌ-03 カエサルコマンド』ブースに行って新作ゲーム「一夜漬ケ」を購入するのだ! 

 

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 …………イラストに見覚えがある? これはお前が作ったゲームじゃないかって? そうだ。私は私の作ったゲームの宣伝をする。しかしこれは血の通った宣伝・プロモーションだ。一切の誇張はなく、真実をあなたの目に突き付け、胸倉を掴んで「Do, or do not」を問う行為だ。製品の実際の制作者によるプロモーション…………あなたがそれを信じられないと言うのなら、この世で信じられるものはあなた自身だけということになる。それは孤独であり寂しい生き方だからすぐにやめろ、親兄弟や親友の愛に気づき、優しさをもってそれを育め。

 

 何の話だったか……自作ゲームの紹介だ。ゲーム紹介用のコミックを掲載する。

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 ゲーム「一夜漬ケ」は3~6人用のカードを使った対戦型ボードゲームだ。特徴はそのゲーム性にあり、プレイヤーが勝利のために集めるのは巨万の富でも金銀財宝でもなく『偏差値』という点である。プレイヤーはテストに備え勉強を行う、だが勉強しすぎると寝坊してしまうというリスクもある。つまりチキンレースだ。そしてテストの教科毎に手に入る偏差値の量が違うため、戦局を判断して冷静な意思決定を求められるという要素もある。そういったエキサイティング・ゲームだ。

 

 ゲームの細かいルールの詳細は省くが、別段難しい要素はなく、対象年齢も8歳からとなっている。これを11/14(土),11/15(日)国際展示場にて行われるゲームマーケット2020秋 ヌ-03 カエサルコマンドにて販売する。価格は2000円だ。そう…………私があの日、卑劣な詐欺によって失った金額に等しい。あれは詐欺だったが、こちらは2000円払えば絶対に手に入る。

 

 小学生の私にとって二千円の散財は、かなり大きな「散財」であった。しかし今回、私はこの「一夜漬ケ」の制作費など諸々で30万円ほどかかっている。この週末、初出展である私のゲームが全く売れなければそれらはきっかり赤字になり、つまり私の人生における「散財」ランキングを更新するということだ。その行く末がどうなるのか、今の私には知る由もない。だが後悔もない。ただ震えてはいる。

 

 ボードゲームというのは人と人とを結びつけ、ゲームプレイを通じて興奮・智略・友情・感動・勝利など様々なものをもたらす。それらは言葉で簡単に表現できるものではなく、人間の記憶に鮮やかに刻み付けられる熱だ。ボードゲームという熱した焼き印で刻んだ記憶はしばらくすると熱を失うが、痕は残る。その痕こそが死ぬ前に思い出すような黄金の記憶であり、ボードゲームの価値だ。つまりそうしたボードゲームを自分の手で創り出すというのが私の目標である。

 

 今でも私のペンケースには「メイド イン ワリオ」のソフトが入っている。それはかなり昔にあの日を思い出してから買ったものだ。電子ゲームとボードゲームという違いはあるが、私の作るゲームも誰かの記憶に強く残るものになってくれれば嬉しい。それはもちろん、悲しき散財の悪夢ではなく、楽しく愉快な黄金の記憶としてだが。

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ゲームマーケット公式サイト:

gamemarket.jp

 

 


P.S このタイトル「一夜漬ケ」は、元々春に開催予定だったゲームマーケットのために作成したものであった。当時にもゲームの紹介記事を書いていたので、もう少しゲームについて知りたいという場合は、そちらも参照されたし。

caesarcola.hatenablog.com