『帰ってきた魔界村』で憤怒の咆哮をあげろ。

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序文 

 

1位「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁあ゛あ゛!!!」
2位「お゛い!!!!」
3位「クソアホ魔法使い!!!!!」

 

 文頭から謎のランキングで申し訳ないが、こちらは今週末の私の発言回数ランキングだ。普段は理性的でインテリジェンスな発言しかせず、紅茶を嗜みながら岩波文庫を読んで物静かに暮らしている私だが、ゲームをしているときだけは別だ。この週末、私は癇癪を起こして奇声を発し、唸る獣となって地団太を踏むだけの理性から最も遠い存在であった。

 

 それはなぜか、アイツが帰ってきたからだ……魔界村が。

 

 『帰ってきた魔界村』が2021年2月25日に任天度switchで発売されたのだ。簡単に説明するとこれは昔ながらの横スクロールアクションゲームであり、「帰ってきた」とあるようにこちらは1985年にアーケードで稼働した「魔界村」というゲームのリブート作である。まあ画像を見て貰えば一発で理解するだろう。こういったゲームだ。

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帰ってきた魔界村 最初のステージである。真ん中に居るのが主人公であり操作キャラであるアーサーだ。

 

 見た目通り…………古臭いゲームだ。2D横スクロールアクションで操作は移動とジャンプとショットのみ、攫われた姫を助けるために騎士が化け物を打ち倒して進むというストーリー、祖父の家の仏壇みたいに古めかしいゲームであることは否めない。

 

 さらにこの魔界村、シリーズを通して「難易度が高い」ことが特徴と言える。横スクロールと聞いて「スーパーマリオブラザーズ」を連想した人もいるだろうが、それらとは一線を画す難易度の差がある。まず主人公の性能から違う。マリオの性能を飛行機とするならば、アーサーは子供用自転車みたいなものだ。もちろん補助輪付きの。

 

 マリオには走りながらファイアボールを撃てるしジャンプの高度だって調整できる。しかしアーサーにはそれがない。しっかりと大地を踏みして立ち止まってヤリを投げるし、ジャンプは垂直ジャンプか前後のジャンプだけ、落下中に十字キーを入れても少しだって動けやしない。

 

 敵も凶悪だ。死神はアーサーより早い速度で走り命を狙いにくるし、大男は高タフネスでヤリを何発も打ち込まないと倒せない。なのにアーサーは一撃食らって鎧が剝がれればパンツ一丁のヒゲ男になってしまい、もう一撃食らうと死体どころか即しゃれこうべになってゲーム・オーバーだ。

 

 ではそんなロートル・ゲームが今更何しに来たんだ? 今や大勢の人間がゲームを通じてインターネットに接続し、見目麗しいウマを育てて運動会で走らせたり、ジブラルタルのウルトで高空から爆撃しているというのに、今更甲冑を着込んだアーサーでヤリやたいまつを投げる必要なんてあるのか?

 

 …………それは、ある。

 

 というわけで今日はゲームの話だ。『帰ってきた魔界村』の紹介をする。

 
1.最高難易度を選ぶ呪い

 買ったゲームを始めて起動する。見覚えがあったりなかったりするロゴが現れては消え、ティザームービーで見たオープニング映像が流れ、タイトルロゴが出現する。LOAD GAMEは薄字になっており選べない、初めて起動したのだから当たり前だ。オプションを少し触ってNEW GAMEを選択、そして次の瞬間、選択肢が出現する。

 

VERY HARD
HARD
NORMAL
EASY

 

 こういったシーンで私は反射的に最高難易度を選択してしまう。それは私の生い立ちに問題がある。最高難易度を選ばなければ「おまえはゲームですら挑戦できないみじめな腰抜けか?」と煽られるゲーミング・スラムで育ったという過去が私をこうしてしまった。

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 それはもはや呪いというか強迫観念みたいなものだが、今作『帰ってきた魔界村』は私に衝撃をもたらした。

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 これが本作の難易度選択画面だ。なにが衝撃かだって? もちろん私は最高難易度「伝説の騎士」を選択した。十字キーを使わずに、だ。

 

 そう、本作の選択画面では、はじめにカーソルが合っているのが最高難易度「伝説の騎士」なのだ。デフォルトの選択肢が、だ。だいたいのゲームでは難易度ノーマルレベルがデフォルトだが、今作では「伝説の騎士」。これはつまり、ゲーム開発陣が「伝説の騎士モードで遊べ」というシグナルを送っているということだ。私はそのシグナル…………カプコンからの果たし状を受け取り、不敵に微笑んだ。

 

 しかしそれが、地獄の始まりだった。

 

2.私もあなたも悪くない。悪いのは魔界だ。

 クリアがあるタイプのゲームでは、稀に「行き詰まる」ことがある。どこに行けばよいのかわからなかったり、ある特定の敵が倒せなかったりで首をかしげる。そして大体の場合、たまたま見落としていたアイテムを使うとストーリーが進んだり、弱点を突いた攻撃をするとアッサリと敵が倒れたりして「なーんだ」と思うことになるのだ。

 

 しかし本作には、その「なーんだ」が全くなかった。それはつまりどういうことか、クリアまでの目途は立っているのだ。だって横に進めばよいのだから。短距離走をすればボルトが勝つくらい当たり前だ。そう、生き残って進めば良いのだ。ゾンビやコウモリなど、敵はわらわらといるがヤリを投げれば倒せるザコばかりだ。

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 しかし、目途は立っていても、なにも予定通りにはいかない。

 

 何故か? 魔界村は本気だからだ。魔界村は本気でプレイヤーを苦しめる。言ってしまえばこのゲームは理不尽だ。ステージ道中、ゾンビなどの雑魚敵はランダムに沸いて出現するがその数に限りはなく、アーサーがステージを突破するか死して屍を風に晒すまで延々と現れ続ける。しかもその出現パターンは予測が難しく、いきなりアーサーの足元に出現したり頭上から降ってきたりと様々なパターンがある。

 

 そしてやってくる。「不可能」の時が。足元にゾンビが出現! ゾンビの出現から攻撃判定が出るまでにはわずかな猶予がある! あなたはすかさず前に跳躍した。自分の命を守り、魔界村を滅ぼすために! しかし着地した瞬間、次は足元から死神が這い出てくる! 先ほど出現したゾンビもこちらに向かってきた! しかも前方に出現したグリーンモンスターが目玉を射出する攻撃を行ってきた! 目玉攻撃と重なって別のゾンビもこちらにくるが、もちろん敵にフレンドリーファイアの概念は無い! 4方向からの攻撃だ。エマージェンシー! あなたはどうすればよいのか?

 

 どうしようもない。

 

 どうしようもないのだ。あなたも私も悪くない。運が悪い。被弾するしかない。

 

 これはゲームだ。ゲームとは言ってしまえば課題と達成の繰り返しだ。しかし毎回必ず課題達成できるわけではないというのが魔界村の特徴である。無残にアーサーが屍に変わる。ここであなたは怒るはずだ。「不完全な欠陥ゲーム!」つばを飛ばしながら消費者庁に電話をかけるかもしれない。私だって何度も激情に震えた。「私に非はない!」ゲーム画面に吠えたのは一度や二度ではない。「藤原ァ!!」ゲームデザイナーの名前を叫び、switchのコントローラを軋ませたこともある。

 

 しかし、あくまでゲームだ。ゲームが娯楽である以上、そこに悪意を見出すのはお門違いだ。だから私は消費者庁の電話番号を調べる手を止め、コントローラを握り直した。

 


3.怒りに、そして達成感に震えろ。そして魔界を打ち倒せ。

 このゲームは本当に難しい。そして何度もゲームを投げ出しそうになる。ゲームがスタートしてからアーサーが倒れるまでの平均時間はだいたい2~3分だが、私は最初のステージをクリアするのにゆうに2時間以上の時間を要した。それは少しのミスで最初からやり直しになるゲームを数十回リトライしたということであり、それは地獄に叩き落され賽の河原で石を積む作業とほぼ同じだった。形ががたがたの石は全く積み上がらないし、たまに地震が起きたり意地悪な鬼がやってきてせっかく積んだ石をバラバラのめちゃくちゃにされてしまう。その度に私はモニターに向かって言論の力で立ち向かい、自らを鼓舞した。「お゛い!!!!」「なんでなんでなんで!!!!」「クソアホ魔法使い!!!!!」頭に血が上り、目が乾きそうになる。闘志の火を絶やすわけにはいかない。だから怒りという名の薪をくべろ。

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上画像のゾーンで私は発狂寸前までいった。常人なら頭がどうにかなる困難の連続である。今私がこうしてまともでいられるのはほんの偶然にすぎない。



 そして何度も繰り返せばいつか幸運に幸運が重なることがある。石たちが奇跡的なバランスで積み上がり、見張っている鬼も眠たげに目をこすっている。そのチャンス、私は咄嗟に駆けだして船を乗っ取り、爆速で三途の川を渡って現世への復活を果たした。モニターには「ゾーン1 CLEAR」と表示されており、つまり最初のステージをクリアしたということだ。

 

 そのとき、私の口から出た声を正確に文字にするならこうだろう。

 

 「ッッッッッッッシャ!!!!!!!」

 

 アドレナリン! ドーパミン! エンドルフィン! ホーチミン

 

 様々な快楽物質が脳内に駆けめぐり、長く深い息が出る。握りしめた拳から少しづつ力が抜け、先ほどまでの怒りが快感に変わっていく。これだ。私が求めていたものはこれなのだ。この達成感は筆舌に尽くしがたいものだ。だがあなたもゲーマーならわかるだろう、苦痛と困難の先に見える光のまぶしさが。他人のゲームプレイを見てるだけでは味わえない黄金の体験、ミダス王も羨むほどの愉悦。

 

 最初の問に戻ろう。なぜ現代にこんな古臭い見た目のゲームをやる理由があるのか? その答えは「そこにクリアがあるから」だ。ゲームにはクリアがある。そしてクリアの快感も確かにある。それには古臭さなど関係なく、ただそこに至るまでの困難がスパイスになるだけだ。

 

 集中力と操作テクニックと少しの運、そして大量の忍耐力、必要なのはこれだけだ。もしあなたが本作をプレイするならば、繰り返しの挑戦にめげるときがくるかもしれない。しかしそれでもトライ&エラーを繰り返し、艱難辛苦を乗り越えれば、やがてゴールが見え、ゴール前のボスに負けてまたやり直しになるだろう。そしてあなたは上げるのだ。怒りの咆哮を。あなたの中に眠っている獣性が目を覚まし、その獣に安らかな眠りを与えてやるにはゲームクリアしかないと気づく。そこからが、真の『帰ってきた魔界村』の始まりだ。

 

 私はこの週末で、なんとか本作の最終ステージをクリアした。だがそれは1週目、魔界村はシリーズの伝統的にもう一周全ステージをクリアしてこそ真のクリアなのだ。さらに2週目はステージが更に難しくなっているという。つまり、まだ私の眼前には茨の道が広がっているということだ。茨のトゲには猛毒が塗られ、卑劣な悪魔の仕掛けた凶悪な罠がそこかしこに仕掛けられている。

 

 それでは、私はもういく。もちろん魔界村を滅ぼすためだ。もしあなたが私と同じように魔界に足を踏み入れ、ゲームクリアという黄金のリンゴに手を伸ばすとしても、私からしてやれることはない。だが、戦っているのはあなただけではない…………それだけは保証できる。魔界の墓場、処刑場、洞窟…………そこに私がいる。だから進もう。クリアを目指して。

 

 

 

 

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二盃口をあがった人にピザを奢ることにしないか?

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 世界で最も過小評価されているものを知っているか? 平穏な日常? 安全で飲める水? 母の愛? そのどれも違う。世界で最も過小評価されているもの…………それは、「二盃口(リャンペーコー)」だ。

 

 あなたが麻雀のルールを知らなくても、変な漢字や丸の絵が書かれている小さい豆腐みたいなものを使って、ロン! とかツモ! とか珍妙な鳴き声を上げるゲームであることは知っているだろう。今日はその鳴き声ゲーである麻雀に関する話をする。

 さて、本題だ。麻雀の役のひとつに、「リャンペーコー」がある。雀頭ひとつと同じ順子2組を2セットという手役だ。文字だとなんのこっちゃわからんという人間も、以下を見ればわかるだろう。

 

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チートイツとは複合しないという豆知識もあるが、滅多に出現しないのでそんな知識は忘れても問題ない。

 そしてこのリャンペーコー、何が問題かというと圧倒的に「安い」のである。麻雀を知っている奴は既に腕を組み大きくうなずいて「その通り!」と鼻息を荒くしているとは思うが、それを解説していく。

 まずこのリャンペーコー、3翻役である。役ってのはつまり点数、スコアを稼ぐための指標で数字が大きいなら大きいほど強くてすごい。ダブルアクセルよりトリプルアクセルやトリプルトゥループや羽生結弦の方が強いのと一緒だ。そしてこのリャンペーコーと同じ3翻役にどんな別の役があるかというと、「ホンイツ混一色)」という役がある。

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これがホンイツ雀頭と面子を一種の数牌と字牌だけで構成される手役である。

 そう、これがリャンペーコーと同じ3翻役である。

 

 完全におかしい。

 

 もう一度言おう。完全におかしい。

 

 何がおかしいのか? 麻雀のルールが曖昧な人間にはまだピンときていないかもしれないが、これら二つの役、得られる点数が同じなのにも関わらず、手役を成立させる難易度が圧倒的に違うのである。それはもう違う。リャンペーコーの方が圧倒的に難しいのだ。確かに、麻雀において3翻役というのはなかなか難しい手役だと言える。成立させるだけでもかなり偉い。しかしリャンペーコーとホンイツでは、その偉さに圧倒的な違いがある。

 

 あなたは材料メーカーの若手営業社員だ。営業のベテラン先輩社員が定年間近で退職するため、ずっと懇意にしていた取引先の定期案件の引き継ぎをしていた。そして先輩社員が周囲に惜しまれつつ退職し、ついに自分一人で案件を処理しなければならなくなる。緊張しつつも教えてもらった通り業務をこなし、なんとかミスなくクローズ、取引先から「○○さん(先輩社員)がいなくなって不安だったが、あなたが優秀な人で安心したよ」とお褒めの言葉まで頂戴した。評判は部長にも伝わって社内でも一目置かれるくらいの存在になり今期の査定はバッチリ! これくらい偉いのがホンイツだ。

 

 対してリャンペーコーは、あなたの営業手法がなんか奇跡的に上手くいって孫正義イーロン・マスクビル・ゲイツに同時に気に入られ、ソフトバンクマイクロソフトから資金提供を受けて弊社の株価もうなぎ上り、投資家も目をつける一躍大企業へ。ヤフーのトップページにはあなたとザッカーバーグが肩を組んで笑う記事が掲載され、最終的に宇宙船にも広告を出すようなビッグバン・ビジネスを成し遂げる…………! リャンペーコーにはそれくらいの偉さがある。

 

 しかし、リャンペーコーへの待遇はホンイツと一緒だ。上司からの評価は今期よく頑張ったね、くらいのもので、賞与に少しの色がついて終わりである。どう考えたってリャンペーコーの方が偉い、社長賞どころか今すぐ役員の席を用意するべきくらいのサクセスを成し遂げたというのにも関わらず、待遇はホンイツと一緒。これはおかしい。

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そこには是正されるべき格差がある。

 

 よくわからない? 例えを変えよう。

 

 あなたは小学生で夏休みの宿題に取り組んでいる。算数ドリルも終えて残ったのは「自由研究」だけだ。あなたは幼心ながら地球の環境問題に心を痛めており、何かできないかと考えて住んでいる地域のゴミ拾いをすることにした。残った夏休みをかけて自分の住んでいる地域を歩き周り、目に着いたゴミを拾ってしかるべき処理をした。そしてその内容をまとめて自由研究の内容として発表する。それくらい偉いのがホンイツだ。

 

 対してリャンペーコーは、小学生ながらも卓越した知能と独創性を用いて石油に代わる全く新しいエネルギー技術を開発、その超効率的新エネルギーは地球全土の環境問題を一発で解決し、全世界の生産性を向上させ景気もウルトラ超回復、銀座に万札の雨が降って少子化地域格差も解決し絶滅したと思われていたニホンオオカミも奇跡の復活を遂げてワオーンと遠吠えをする。それくらい偉いのがリャンペーコーだ。

 

 それでも評価は同じだ。新学期になったら担任の先生はホンイツにもリャンペーコーにも同じ大きさの花丸をあげて終わりである。これをおかしいとは思わないか?

 

 まだよくわからない? 例えを変えよう。

 

 ホグワーツ魔法魔術学校に通うリャンペーコーは学校の平和を脅かすトロールとディメンターと名前を言ってはいけないあの人とハグリットとマルフォイをまとめてぶっ飛ばし、賢者の石も手に入れて秘密の部屋の謎を解き明かしついでにスニッチもその手に掴んだ。それくらい偉いのがリャンペーコーその人である。

 

 対してちょっとチェスを頑張ったロン・ウィーズリー、それがホンイツ

 

 なのに学年度末パーティーダンブルドアホンイツにもリャンペーコーにも同じだけの50点しかくれないのである! そんなことが許されてよいのか? 場合によっては許されざる呪文が飛び出てもおかしくないほどの理不尽ではないのか?

 

 そろそろわかっただろう。リャンペーコーはこれくらい不当に「安い」手役なのである。私にネクロマンサーの素養があれば麻雀のルールを考え出した奴を甦らせて首根っこをひっつかみ、何を考えていたのか吐かせた後にルール改定を迫って拒否するならアルゼンチン・バックブリーカーをお見舞いするところではあるが、それは叶わないので私はここに代案を提示することにする。

 

 そして記事タイトルだ。これから先、誰かがリャンペーコーをあがったら同卓していた他プレイヤーはご祝儀の意味を込めてあがったプレイヤーにピザを奢ることにするのはどうだろうか? 何を言っているかわかるか? そう、安い手役であるリャンペーコーと、わりと簡単なホンイツとのコストパフォーマンス格差を是正するために、生きとし生けるものなら誰でも嬉しいピザ・ボーナスを追加しようという提案だ。

 

 東四局の一本場、あなたの所持点は少し凹んでおり16000点だ。これまでの戦績から今日はあまりついてないなぁと思いつつも配牌をあけるとそこには稀にみる好配牌が! 順調に手が整って8巡目にリーチ! 手役はなんとリャンペーコーテンパイ! 滅多に見ないレア手役に思わず手が震える! そして2巡後に上家からロン! リャンペーコー成立! 開いて見せた手役の綺麗な並びに思わず皆「おっ」という声を漏らす…………しかし計算してみれば合計5翻で8000点、あなたは点棒を貰うがその少なさにしょんぼりする。「やっぱリャンペーコーは安いよなぁ~」なんてことを言いながら次の局が始まり、このレアな出来事はつまらない日常に収束していく……。

 

 しかし、ここにピザ・ボーナスを導入したらどうだろう? リャンペーコーをテンパイした時点であなたの脳内はピザに染まる。何を注文しよう? ドミノかハットかピザーラか、炭火焼ビーフかシーフードスペシャルか特うまプルコギか、生地はパン生地かクリスピーか……。よだれを抑えながらリーチを宣言、そして心高らかにロン! と叫んで牌を倒せば、周りのプレイヤーも燦然と輝くリャンペーコーにビックリ! 拍手喝采の中取り出したテレフォンでピザ屋に注文、ありったけのピザを持ってこい! 溢れるピザに溺れながら手にした点数は8000点かも知れないが、獲得したカロリーは10000キロ超! そしてピザパーティーが始まり、陽気なBGMが流れミラーボールが輝いてその週末は黄金の思い出としていつまでも記憶に残る……。

 

 どうだ? 完全にピザ・ボーナスの正当性がわかっただろう。麻雀には古くから「九蓮宝燈(チューレンポウトウ)」をあがった場合、そこで運の良さを使い切ってしまったために死ぬと言われているが、それとピザ・ボーナスも同じようなものと考えて貰えばいい。二盃口にはピザを、九蓮宝燈には死を、ということだ。

 

 さて、誰が九蓮宝燈と死の関連性を言い出したのかは知らないが、こういった口伝、文化というものはそれを伝えていった者たちが居たから伝え続いたものであることは間違いない。なのでこの文章を読み、手役の不当な格差を是正すべきだとあなたも思ったのならば、次に麻雀を始める前に一言、他プレイヤーにこう言ってはいかがだろうか?

 

「もし二盃口あがったらピザ・ボーナスで」

 

 その一言で、何かが変わっていくかもしれない。

 

 あなたはピザ・ボーナス文化の担い手になった。もちろん、これからは私も言っていく所存だ。我々はひとりじゃない。同志達がこの青い空の下で同じ思いを胸に秘めている。そろそろこの文章も終わりにする。しかしいつの日かピザ屋が「二盃口お祝いセットメニュー」を作るその日まで、我々の草の根活動は続いていくのだ。我々は文化の担い手。そして我々はひとりじゃない。それを忘れるな。

 

 それでは、さらばだ。

 

 

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動物園のエサやり全部やって、最も奢りがいのある動物を決める。

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・序幕

 

 動物園とホストクラブは本質的に同じだ。

 

 ヒツジやウサギ達に園内で売られているエサを与える、という体験が動物園の楽しみのひとつであることに異論はないだろう。であれば、ゲスト(客)がホスト(動物)に飲食物を与え、一緒に過ごす時間を楽しむのが目的という点において、動物園とホストクラブは本質的に同じといえる。

 そして、ホストというのは個人の売り上げがモノを言う世界、徹底した実力主義だ。渋谷で、六本木で、歌舞伎町で、今宵もホスト達はNo,1の座を目指して切磋琢磨しているのである。

 であれば、ホストクラブ「Zoo」でも決めるべきだろう。売り上げNo,1、つまり最もエサを奢りたくなるエースどうぶつは誰なのかを!

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・動物園へ

 というわけで、宇都宮動物園に来た。

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 私はカエサル。今日は動物園に居るどうぶつ達に全員にエサを奢り、最も奢りがいのある動物は何か決定する。ずばりどうぶつ界の「夜王」を決める戦いということだ。

 それでは、さっそく行ってみよう。

 

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 いきなり虚ろな目をしたキリンに見下ろされたかと思ったら、入園券販売場だった。チケットとエサを購入する。エサを買いたいと言う私の言葉に「100円です」と受付のお姉さん。しかしすかさず「3つくれ」と返す。今日の私は間違いなく太客だ。
 ついでに、お姉さんに質問してみる。

「エサの奢り甲斐があるどうぶつはいるか?」

「キリンさんですかね! おすすめです!」

 私のシリアスな質問にも笑顔で答える……流石プロだ。キリンさん……これはチェックの必要があるだろう。

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 エサは紙袋に入れて渡される。これがどうぶつ界のドン・ペリニヨンというわけだ。

 

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 中身はニンジンやキャベツの切れ端、パンの耳など、だいたい初期のチェンソーマンが食べていたものと同じだった。私の普段の食事と大差ないということでもある。

 

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 道を進んでいくと、ブチハイエナがその姿を見せた。そのクールな外見にはファンも多そうだが、残念ながら彼らのような猛獣類にエサを与えることはできないため、今回の審査からは対象外となる。

 園内を進むと、ついにエサを奢ることができるどうぶつ達に出くわした。

 

・ヒツジ

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 最初のエントリーは眠れないときに数えることでもお馴染み、ヒツジだ。どこか牧歌的なイメージのある彼だが、ホストとしての力量は未知数である。今夜眠れなくなるほど私を夢中にしてくれるのだろうか……?
 さっそく、エサをあげる。

 

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 目の前にエサを差し出すと……

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 食べた! 素朴な表情だが、どこか満足げである。

 

 奢りがいという視点でみると、エサを貰ってその場で嬉しそうにもしゃもしゃやっているのは、まるで入社二年目の単純だが素直な後輩社員に昼食を奢るような気持ちよさがある。彼の視線は大根を食べている間もずっとこちらに釘付けで、そのつぶらな瞳からは無防備な信頼が感じられた。

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・ウシ

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 ヒツジのすぐ傍にこのような区画が。そう、2021年の主役、牛のお出ましだ。

 

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 近づいてみるとかなり巨大だ。サイズだけならライオンと変わらない体躯がこちらに歩み寄ってくる姿はかなり迫力がある。この黒い種は口之島牛(くちのしまうし)という日本に二種しかいない純粋な日本在来牛である。

 

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 しかし、そんな巨大な彼も差し出されたエサは素直に食べていた。そのたくましいスタイルの彼が尻尾を揺らしながらエサを食べる姿はなんだか可愛らしく、思わず続けてキャベツやニンジンもあげてしまった。ギャップを活かしたなかなかの接客スキルである。

 

・こぼれ話

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 余談だが、こちらは猛獣ゾーンに居たライオンである。立ち姿の凛々しさと裏腹に、「オシッコを飛ばします」の注意書きが非常にアナーキーだ。

 

・ミニチュアホース

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 動物たちのその知能の高さには驚かされる。近づいただけでは見向きもしなかった彼――ミニチュアホースだが、私が鞄から紙袋を取り出すと、一目散にこちらに駆け寄ってきたのだ。まだ紙袋からエサを取り出していないのに、である。野生のヒグマがハチの巣に蜜があることを知っているように、紙袋の中にエサがあることを知識として知っているのだろう。

 

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 早く出せとばかりに鼻を鳴らす彼の態度は完全にオラオラ系で、つい私は気圧されたようにエサを差し出してしまった。完全に彼の営業手法にハマっている。しかし、「求められている!」という感覚はなかなか悪くないなと思った。

 

 

・昼食(人間の)

 と、ここで私は昼食をまだ摂っていないことを思い出した。ここがホストクラブならば、彼らと同じものを食べその時間を共有するのも楽しみのひとつだろうと考え、私はこれを持参していた。

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 コンビニで購入した野菜スティックである。どうぶつ達が食べているものとほとんど一緒だが、こちらは人間用だ。ミニチュアホースは「それ俺のだろ」とばかりに私に近づいてきて鼻を鳴らす。しかし無視して私がそれを食べると、彼はどこか困惑したような動きでこちらを見つめていた。一矢報いたようで少し気分がいい。

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 しかし、そこで困惑していたのはミニチュアホースだけではなかった。振り返ると、全然関係ない親子連れがそこに立っていた。彼らからはこちらが「どうぶつのエサを自分で食べている人間」に見えたことだろう。狂人を見る目で私を見つめていた。

 

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「いや別に動物のエサを食べていたわけではなくて! これは持参した野菜スティックで!」と彼女たちに弁明するわけにもいかず、私は逃げるようにその場を後にした。

 

 

・ウサギ

 ウサギは可愛い、それはこの世の真理のひとつ。可能ならばいつだって愛でたいのがウサギという生き物だ。ポーカーするときにトランプをめくることができないという点を除けば、私がウサギをペットにしていない理由は何もない。

 そんな彼らも動物園ならば直接触れ合ってエサをあげることができる。私はそう期待してウサギ達が居るゾーンに赴いた。

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 居た! ……が、

 

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 感染予防のため、ふれあいやエサやりは中止となっていた。私は思わず地に膝をつき、わが身に起こった理不尽、世にも凄惨な仕打ち、とても見てられない災難に涙を流した……。


 しかし、時節柄やむを得ない事とはいえ、ウサギなしにどうぶつエサやりNo,1を決めてよいとは思えない。

 

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 なので神奈川県川崎市にあるウサギ&ハリネズミと触れ合えるカフェ「うさぎパラダイス」に来た。私はこういったカフェに来たのは初めてだったが、ここではどうぶつ達におやつをあげることもできるらしく今回の目的に合致している。スタッフ(人間)にその旨を伝え、料金を払っておやつを購入した。

 

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 おやつはドライフルーツと専用ビスケットだった。私よりもハイソサエティな食事をしている。

 

 そしてウサギと対面……と思いきや、スタッフに「どちらのウサギさんにしますか?」と言われ、私は思わず首を傾げた。

 どちらのウサギさん? どういうことだ? 疑問に思い辺りを見回すと、

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「…………!! 壁に案内板がある!」

 

 本当にホストクラブだ……! いや、このお店のウサギさんは全員メスなので厳密に言えば違うが、指名制システムのクラブっぽさに驚きを隠せない。思わずまじまじと案内板の紹介文を読んでしまった。

 

「茶々(ちゃちゃ)さんで……」

 

 最終的に見た目の好みで選んだ。スタッフに連れられ、ウサギが……いや、茶々氏が私の前に姿を現した。

f:id:caesarcola:20210110195827j:plain  ホーランドロップという血筋の彼女は体長は30cmほどど小柄だが、5倍以上大きい私に全然おびえないどころか堂々とした佇まいで悠然と構えていた。そしておやつを差し出すと……!

 

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  ありていに言って、あまりにもチャーミングで美しい。はなをヒクつかせながらこちらに近づき、手のひらからおやつを食べていく姿はさながら動物界の楊貴妃だ。手の上のおやつが無くなるともう用済みとばかりに去ってしまうが、私はその尻を追いかけ追加のおやつを与えたいという欲望に逆らえない。魔性の女、獣装の麗人、まさしく傾国の美女である。
 

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  そのキュートさにあてられ、ウシの10倍写真撮影してしまった。

 

ハリネズミ


 続いて、同店舗のハリネズミに対面した。

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 その特徴的なトゲトゲの外皮は体毛が変化したもの、とは知っていたが、私自身ふれあうのは初めてのことだった。実際に身体に触ろうとするとトゲが刺さりかなりガッツリ痛い。このトゲの塊が音速より速く迫ってくる……と考えると、もはやソニック・ザ・ヘッジホッグは恐怖の対象でしかない。

 

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 なのでおやつはピンセットであげることになった。エサのミルワームを与えると、精一杯身体を伸ばして食べようとするプリティな姿を見ることができる。それはまさに目に入れても痛くないほどの愛らしさ! ハリネズミに使うとあまりに恐ろしい表現だが。

 

・コイ

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 場所は戻って宇都宮動物園、こちらには池のコイにエサを与えることのできるスポットも存在していた。専用のエサを購入し、水面にばら撒く。


 すると!

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 ゴボゴボッ!! という音を出して水面が急激に波立つ。コイ達の食欲は他のどうぶつ達に比べ群を抜いていた。池の中にいる同胞より先に食べねばという思いがひしひしと感じられる。奢りがいという観点で見ると、こちら側に一切興味を持ってない点はマイナスポイント。しかし貪欲にエサを取り合う彼らを見ると、コロッセオで剣闘士(グラディエーター)の戦いを観戦していた上流階級のようなサディスティックな快感を味わうことができる。

 

・他のどうぶつたち

 他にも、宇都宮動物園では色々などうぶつにエサをあげることができた。

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 ファロージカ。宇都宮動物園に在籍するのは白変個体という白い毛並みの種類だった。神々しい色合いである。

 

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 アジアゾウ。エサを投げ入れるとその大きな鼻を使って器用に拾い上げる姿を見ることができる。

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 ニホンジカ。ニンジンをあげようとした際に私の指もペロリと舐められ、「食われる!」と思ってついバックステップしてしまった。

 

 と、ここまでエサやりをやって気づいた点がひとつある。

 

「哺乳類ばかりだ……」

 

 宇都宮動物園には哺乳類以外の動物もたくさんいるのだが、残念ながらエサやり体験ができる動物は哺乳類がメインだった。例外は池のコイくらいで、脊椎動物というくくりで見ても哺乳類と魚類のみ。これでは「エサの奢りがい」No,1を決めるのには不十分かもしれない。

 

 というわけで、東京都原宿にある「ふくろうの里」に来た。

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・ふくろう

 鳥類代表として、ふくろうにエサをあげようという狙いである。この「ふくろうの里」では、うさぎパラダイスと同様にふくろう達と触れ合い、もちろんエサやり体験をすることもできる。

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 そしてここにも在籍するふくろう達の紹介メニューが! 思わずまじまじと見つめてしまう。ふくろう達には「アルト」「おはぎ」「カノン」などの可愛げのある名前がつけられていた。……しかし!

 

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 突然の「グレート・ムタ」!

 「スカラ」と「あずき」に並ぶ名前としてはアバンギャルドすぎる。毒霧攻撃でもしてくるのか? 私は思わず警戒し気を引き締めた。

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 そして対面したのはベンガルワシミミズクのじじ氏、黒と橙色のグラデーションが美しく、その凛々しい瞳は知性を感じさせ、まさに「森の賢者」といった風格だ。

 

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 そしてこちらが今回あげるエサ、うずらの肉である。一見「ちょっと嬉しい居酒屋の小鉢」といった見た目だが、フクロウが同じ鳥類であるうずらを食べるという無情な食物連鎖が発生している。

 

 スタッフの方(人間)が言うには、彼らの名前を呼ぶとフクロウが腕に飛んできてエサを食べてくれるらしい。これはぜひ試さねばと思い、私は手袋をはめて恐る恐る口を開いた。

 

「…………じじさん!」

 

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 バサバサッ!! と羽ばたきの音がした後、腕にずしっとした重みが! ピンセットから肉をついばんでいく勢いに、私も思わず敬語になってしまった。こちらの呼びかけに応えてくれるという、まるで昔から彼らとの絆を育んできた鷹匠にでもなったかのような体験をすることができて、私は大変満足した。エサの奢りがいという点でも高得点だ。

 

・トカゲ

 哺乳類・魚類・鳥類ときたら次は爬虫類だ。東新宿にある「爬虫類カフェ らぷとる」に訪れた。

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 ここでもトカゲやヘビなど様々な爬虫類を見ながら時間を過ごすことができるほか、気に入った種がいたら購入しお迎えすることもできる。もちろん、今回の趣旨でもあるエサやりと触れ合い体験をすることも可能だ。

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 私は店内を見て回ったあと、スタッフに「アフリカンロックモニター」にエサやり体験をしたいと告げた。

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 アフリカンロックモニターという名前からはわかりづらいが、彼はオオトカゲの一種である。体長は1メートルほどにも及び、「小さい怪獣」というイメージがぴったりとくる。

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 今回奢るエサは「ささみ」だ。画像だけだとこれからバーベキューでも始まるのかな? といった感じだが、もちろんトカゲ達はこのまま生でいく。

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 エサを見せると、爬虫類特有の細長い舌を伸ばし……

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 ガブリと食らいつく! そして咀嚼もせずに丸呑みである。そのエネルギッシュさはトングを持つ腕にも衝撃が伝わるほどであり、私に「捕食」という二字を想起させた。

 丸呑みという食べ方は咀嚼する時間がないので、わりと短時間で終わってしまう。そのためエサの奢りがいという視点で見ると少し呆気なさを感じてしまった。

 

 

・結果発表!

 全体を通してエサを大量にあげたので、どうぶつ達に使った金額が週間の私の食事代より遥かに高くつき、ホストクラブでお金を湯水のように使って豪遊する気持ちを疑似体験することができた。

 

 さて、ここからは肝心の本題だ。結果発表はランキング形式での発表とする。

 

 それでは、奢りがいのある動物ランキング、第3位の発表から!

 

・第3位

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 完全に茶々氏のキュートさにやられてしまった。自由気ままに私の周囲を駆け回り、たまに私の足をつついてくる姿は小悪魔を超えて色欲の悪魔アスモデウスだ。私のカメラの記録容量を圧迫し、おやつをねだって私の財布も圧迫する姿は堂々のホストぶりだった。

 ここに第3位の称号を授与しよう。

 

・第2位

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 銀賞にはヤギがランクイン。その立派な二本のツノと全てを見通すように澄んだ瞳に惹きつけられたというのも評価に値するが、本当に評価された点は他にある。

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 エサをあげた後、それだけの量では満足せず……

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 前足で柵を叩いて"おねだり"するのだ!

 求めよ、さらば与えられん、とは聖書の一節だが、彼もエサを手に入れるためにはただ待つばかりではなく積極的に要求していく必要があることを理解している。全ての交渉の第一歩目、欲しいという意志を示すというその姿勢に感動し第2位に選ばせてもらった。彼の前世は交渉人(ネゴシエーター)なのだろう。

 

・第1位
 さて、満を持して第1位の発表だ…………どうぶつホスト界のNo,1、最強のエースであり動物園で最も奢りがいのあるどうぶつ…………それは!

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 ダイナミック! 評価点はそれに尽きる。体高4メートルにも及ぶサイズは動物園所属アニマルの中で最大で、その剛健な首が手元のニンジンを目指して迫ってくるのは大迫力の一言だ。

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 その舌も長く、また力強い! 持っているニンジンを「首を伸ばして待ってたよ」とばかりに持っていく姿は流石の貫禄。そして大きな口で咀嚼する姿は生物としてのスケールの違いを感じさせ、見ていて気持ちの良い食べっぷりだ。まさに「奢りがい」という点においてエースの座にふさわしい!

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↑2体で迫る! 迫力を超えて緊張感が走る。

 動物園に入園した際に受付さんが言っていた「オススメはキリン」という言葉の通りの結果になってしまった。さすがプロといったところか……、いや、彼女もキリンの魅力にやられたホスト狂いの一人だったのかも知れない……。

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 アミメキリン、彼こそがホストクラブ「Zoo」のナンバー1だ!

 


・終幕

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 そもそも、人はなぜ動物園でエサやりをするのだろうか。私が思うに、それは人とどうぶつ達との共通点だからではないだろうか。人間とどうぶつの行動様式は違う。キリンは服を着ないし、ゾウがインターネットをすることもない。しかし、食事をするという一点は人間も動物も同じだ。食事というのは生物の根源的な喜びであり、その種族を超えた喜びの共有を求めて人は「エサやり」をするのだろう。

 

 本記事で紹介できなかった中でも、エサの奢りがいのあるどうぶつはたくさんいた。どのどうぶつ達にもそれぞれの生活があり、またそれを見て触れ合えるのが動物園の良さである。私は今回の検証を通して、また動物園とどうぶつ達のことが好きになることができた。

 

 

 それでは、私はもう行かなければならない。どうぶつに与えるばかりでなく、自分のエサも確保する必要があるからだ。しかし日々の消耗…………荒波に揉まれ、すり減る精神やマナの補給が必要となったとき、私は動物園に癒しを求め赴くことだろう。そのとき偶然あなたが隣にいたならば、そのときはイチ押しどうぶつ達の話をするとしよう……太陽が西の地平線に沈むまで……。

 

 

 

 

 

twitter:@caesarcola

散財、浪費、人生…………そしてゲームマーケット

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 散財、浪費、人生…………そしてゲームマーケット

 

 『メイド イン ワリオ』が遊びたかった。当時小学生だった私は、その欲望に脳を支配されていた。

 

 『メイド イン ワリオ』シリーズというのは、ワリオとその仲間達が作ったという設定の様々なミニゲームが遊べるという内容のゲームタイトルだ。当時はNintendoDSでの最新作『さわる メイド イン ワリオ』がリリースされていた。

 

 男子小学生におけるDSとは、江戸時代における刀と一緒だ。それを持っているかいないかで士農工商、身分が証明される。そして私は「持たぬ者」だった。すると友達と集まって遊ぶ楽しい時間だって、ゲームの時間になれば寂しい時間になる。DSを持っている友達を指を咥えて見ているしかないのだ。

 

 しかし小学生も武士と同様、情けがある。DSで遊ぶのを交代してくれるのだ。友人の山岸くんが私に貸してくれたのが初めてだったと思う。私は秘蔵の名刀を受け取るが如くうやうやしい手つきで彼のDSを受け取り、タッチペンで画面をつっついた。その時遊んだゲームが「さわる メイド イン ワリオ」だったのだ。

 

 ワリオは麻薬的に面白かった。人間、一度覚えた快楽を忘れることができない。そして私はDSを欲しがる亡霊になった。親にねだるが、そう簡単には手に入らない。こうして鬱屈した気持ちが溜まったまま半年が経過し、季節は夏になった。そしてやってきた、あの悪夢の行事「夏祭り」が。

 

 いや、夏祭りは悪くない。悪いのはその出店、いわゆるテキ屋だ。中でも「くじ屋」、あれが小学生の私に悪夢を見せた。ご存知ない方のために解説すると、夏祭りなどにある「くじ屋」は概ね一回100円や200円などでくじを販売し、「当たり」を引くとエアガンやゲームソフトなどの高額なおもちゃが景品として手に入るというシステムの出店だ。そして、私の目の前にあるくじ屋の景品にはあったのだ。あのNintendoDSが。

 

 

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 単刀直入に言おう。この文章を読んでいる小学生には残酷な真実で申し訳ないが、あれらの「くじ」に当たりは入っていない。それらは純粋な子供から小遣いを騙し取るためのペテンで、言ってしまえば詐欺だ。だが、小学生の私にそれを見抜くことはできなかった。そこからは概ね推察の通りだ。哀れなキッズだった私はDS欲しさに全財産を投じ、「夏祭り用に」と両親に持たされたなけなしの二千円を全て失ってしまったのである。

 

 そこからは暗黒の記憶……焼きそばもりんご飴も買えず、お腹を空かしたまま夏祭りの喧騒の中を歩くのは悲しいほどみじめだ。あのときのことを思い出すと今でも心がじくりと痛む。それが人生で初めて味わった「散財」の虚しさ……であった。

 

 というわけで、今日は「散財」の話だ。といっても先ほどのような暗い話だけではない。今日は良い話を持ってきた。良い「散財」の方法だ。今日はその話をする。

 

 今週末、つまり2020年11/14(土),11/15(日)の二日、国際展示場にてゲームマーケットというボードゲーム即売会イベントがある。ゲームマーケットは有名なのでエンタテイメンツへのアンテナが高い者は既に知っているだろう。今回のイベントは昨今の感染症対策のことも踏まえ、入場には電子チケットというアイテムが必要とやや煩雑なミッションがあるが、それらは確定申告と一緒で人間にぎりぎり乗り越えられる試練ということだ。

 

 さて、それではそのゲームマーケットで何をすれば良いのか、それはずばり『ヌ-03 カエサルコマンド』ブースに行って新作ゲーム「一夜漬ケ」を購入するのだ! 

 

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 …………イラストに見覚えがある? これはお前が作ったゲームじゃないかって? そうだ。私は私の作ったゲームの宣伝をする。しかしこれは血の通った宣伝・プロモーションだ。一切の誇張はなく、真実をあなたの目に突き付け、胸倉を掴んで「Do, or do not」を問う行為だ。製品の実際の制作者によるプロモーション…………あなたがそれを信じられないと言うのなら、この世で信じられるものはあなた自身だけということになる。それは孤独であり寂しい生き方だからすぐにやめろ、親兄弟や親友の愛に気づき、優しさをもってそれを育め。

 

 何の話だったか……自作ゲームの紹介だ。ゲーム紹介用のコミックを掲載する。

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 ゲーム「一夜漬ケ」は3~6人用のカードを使った対戦型ボードゲームだ。特徴はそのゲーム性にあり、プレイヤーが勝利のために集めるのは巨万の富でも金銀財宝でもなく『偏差値』という点である。プレイヤーはテストに備え勉強を行う、だが勉強しすぎると寝坊してしまうというリスクもある。つまりチキンレースだ。そしてテストの教科毎に手に入る偏差値の量が違うため、戦局を判断して冷静な意思決定を求められるという要素もある。そういったエキサイティング・ゲームだ。

 

 ゲームの細かいルールの詳細は省くが、別段難しい要素はなく、対象年齢も8歳からとなっている。これを11/14(土),11/15(日)国際展示場にて行われるゲームマーケット2020秋 ヌ-03 カエサルコマンドにて販売する。価格は2000円だ。そう…………私があの日、卑劣な詐欺によって失った金額に等しい。あれは詐欺だったが、こちらは2000円払えば絶対に手に入る。

 

 小学生の私にとって二千円の散財は、かなり大きな「散財」であった。しかし今回、私はこの「一夜漬ケ」の制作費など諸々で30万円ほどかかっている。この週末、初出展である私のゲームが全く売れなければそれらはきっかり赤字になり、つまり私の人生における「散財」ランキングを更新するということだ。その行く末がどうなるのか、今の私には知る由もない。だが後悔もない。ただ震えてはいる。

 

 ボードゲームというのは人と人とを結びつけ、ゲームプレイを通じて興奮・智略・友情・感動・勝利など様々なものをもたらす。それらは言葉で簡単に表現できるものではなく、人間の記憶に鮮やかに刻み付けられる熱だ。ボードゲームという熱した焼き印で刻んだ記憶はしばらくすると熱を失うが、痕は残る。その痕こそが死ぬ前に思い出すような黄金の記憶であり、ボードゲームの価値だ。つまりそうしたボードゲームを自分の手で創り出すというのが私の目標である。

 

 今でも私のペンケースには「メイド イン ワリオ」のソフトが入っている。それはかなり昔にあの日を思い出してから買ったものだ。電子ゲームとボードゲームという違いはあるが、私の作るゲームも誰かの記憶に強く残るものになってくれれば嬉しい。それはもちろん、悲しき散財の悪夢ではなく、楽しく愉快な黄金の記憶としてだが。

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Twitter

twitter.com

 

ゲームマーケット公式サイト:

gamemarket.jp

 

 


P.S このタイトル「一夜漬ケ」は、元々春に開催予定だったゲームマーケットのために作成したものであった。当時にもゲームの紹介記事を書いていたので、もう少しゲームについて知りたいという場合は、そちらも参照されたし。

caesarcola.hatenablog.com

 

Self‐Introduction カエサルの自己紹介

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 この記事では当ブログを運営している私、カエサルとは何者なのか、それを説明する。いわゆる自己紹介だ。主に私がインターネット上で行っている活動を紹介していく。

 

 さっそく……と言いたいところだが、まず質問だ。あなたは自己紹介というものが得意だろうか? ここで「得意だぜ!」と言える人間は少ないだろう。新しい環境や広がっていく人間関係に自己紹介はつきものだ。しかし、いざ自己紹介をしようと思うとこれが案外難しい。名前と年齢と出身地と…………なんてありきたりなことを言い、「趣味は……音楽鑑賞と読書……ですかね」などともごもご言って終わりだ。

 

 しかし、それは上辺だけの自己紹介だ。何故なら本当は誰も他人の出身地など興味無いからだ。あなたはゲームでキャラクターセレクトをするとき、そのキャラクターの出身地など最初に見るだろうか? マリオやリュウピカチュウの出身地なんて誰も知らない。まず見るのはそのキャラが「何ができるか?」だろう。マリオはジャンプができてリュウ波動拳が出せてピカチュウは電撃が繰り出せる。それがまずは重要だ。なのでこの記事の自己紹介も私に何ができるのかという記事だ。ただ、自己紹介で「私の特技は10万ボルトです」なんて言い出す奴が居たら危険なサイコ野郎だから近づくのはやめておけ。

 


①ブログ・文章

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△実際にはキーボードで書いているので紙資源の無駄は発生していない。

 まず本ページからもわかる通り、主に文字と挿絵、写真を用いた記事を執筆している。内容は主に読んだ人を楽しませるための、エンターテイメントを目的とした記事だ。なので経済や政治などの固い内容や、ヒグマの生態についてや次の直木賞作家の予想、はたまた現世の真理に迫る超常現象探求記事の執筆予定はない(が、依頼次第では有りうる)。

代表的なエントリとしては以下などがある。

caesarcola.hatenablog.com

△ポップコーン以外の映画館フードメニューを知らなかったので、まとめて食べてしまおうという記事。


caesarcola.hatenablog.com

△世にも恐ろしい病状「痔ろう」になり、入院と手術を行ったときの記録。

caesarcola.hatenablog.com

△オススメのボードゲーム、ではなく、オススメのボードゲーマーの特徴をまとめてみたという内容。

 

 また、他Webページに記事を執筆した経験もある。2020年4月に開催されたVRChatというバーチャル空間上で行われたイベント「バーチャルマーケット4」にて、企業ブースを紹介する記事を取材・紹介記事執筆を行った。詳細は以下リンクの通り。

www.v-market.work

 

 映画を軸に「好き」を語るサイト「ムービーナーズ」でも記事を書いた。映画を「浅く」見ようというシネマ初心者向けの記事である。詳細は以下のリンクを確認してほしい。

m-nerds.com

 

 エンタメ系・コラム・ネタ系、その他面白そうな記事執筆の依頼は歓迎している。連絡はメールもしくはTwitterのDM(ダイレクトメッセージ)まで。

Mail:chikuwato@gmail.com

Twitter@caesarcola

 

②イラスト

 

 Illustration……イラストレーションの語源は「照らす」「明るくする」を意味するラテン語「lustrare」だという。人は素敵なイラストや絵画を見たとき、おっと思うと共に目を見開き多くの光をその瞳に取り込む。その光こそがこの冷たく暗い現代社会で道を照らすための灯火であることは間違いない。ツイッターで一枚のイラストを見る時間はせいぜい10秒にも満たないだろう。だがその10秒は明日を生き抜く燃料となる10秒だ。イラストに限らず、芸術にはその力がある。

 

 私は一次創作・二次創作問わずキャラクターをメインとしたイラストを描いてTwitterやpixivに投稿している。ブログ用の挿絵とは違い、ある程度力を入れて描いている。絵柄はキュート・ポップ・コミカル調がメイン。アメコミテイストやセクシー調のイラストも描くことがある。

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Twitter@caesarcola

 

 イラストコミッション(報酬を頂いて描く)という形で依頼を受け付けており、処理が簡単なWebサービスであるSkebを利用して受け付けている。以下リンク参照。

 

skeb.jp

こちらは以前にクライアントに依頼していただいた内容とそのインプレッションである。

 

 

 

ボードゲーム作成

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 ボードゲームを知っているか? 昨今ではボードゲームにブームが来ていると言う。確かに、巷にはボードゲームカフェなども誕生し、「ガキの遊び」ではないボードゲームという趣味が認められているようになったと感じられる。だが私はボードゲームはやはり「ガキの遊び」ではないかなとも思っている。何故なら遊んでいるときのぎゃーぎゃー言っている雰囲気や、いい大人が勝利を目指してムキになってサイコロを振る姿は小学生と比べて何の遜色もないからだ。しかし、ゲームはそうやって遊ぶのが最高に楽しい。つまり、ボードゲームは「大人もガキになれる遊び」なのだ。

 

 昨今のボードゲーム事情は置いといて、私はサークル「カエサルコマンド」を率いて自作ボードゲームを作成、オンライン販売している。2020年に始めた活動のため、作成したゲームは1本のみだが、今後も余裕があれば活動していきたいと考えている。

 

 2020年11月14日-15日(土日)に開催されるゲームマーケットに参加予定であり、そこでボードゲーム『一夜漬ケ』を頒布する。3~6人用のカードを使用したボードゲームで、簡単なルールと1ゲーム10~20分ほどでお手軽に楽しめるゲームとなっている。手に取って見てみたいという方はぜひ遊びに来て欲しい。

gamemarket.jp

 

 2020年の春に開催されるはずだったゲームマーケット春は世間の情勢を考慮し中止になってしまった。そのときの記事と、ゲームの紹介もブログにまとめている。

 

caesarcola.hatenablog.com

 

こちらは直接オン=ライン通販サイトにアクセスするリンクである。

caesarcommand.booth.pm

 また、全国の黄色いホビーショップこと「イエローサブマリン様」にも販売委託しているため、手に取って確認してみたい方は実店舗に行ってみるのもオススメである。

 

④4コマ漫画

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 Twitter上で『ハイパーエンターテイメンツ4コマ』というタイトルの4コマ漫画を毎週水曜正午に投稿している。内容は、この世のあらゆる道徳を超え叡智と空理に基づき世界の真実を切り取ったエキセントリックな4コマ漫画である。難しい? ただ読んだままに感じ取ってもらえればそれでよい。あと特徴として爆発が多い。何故か? 岡本太郎は「芸術は爆発だ」と言ったらしいが、私に言わせれば「爆発が芸術」だからだ。

twitter.com

 

⑤短編小説
 noteにて短編小説を公開している。現在2本。内容はどれもコメディ。5~10分ほどで読めるものを目安にしている。空いた時間に読んで面白がって貰えれば大変嬉しい。

note.com
オレオレ詐欺じゃない電話なのに、全然信じてもらえない男の運命は… というコメディ短編小説

 

note.com


△こちらはVRChatを用いて老人が孫と遊ぼうとするという内容の小説。VRChatをプレイした経験のある人はオススメ。

 


・以上


 一度にたくさんの情報を書き連ねたため、これを読んだあなたの脳は既にパニック直前、面前清一色をテンパイしたときのように慌てていることだろう(何を言っているのかわからない? 面前清一色【メンゼンチンイーソー】とは麻雀における難しい役のことだ。私は麻雀でこの状況になると脳が忙しくなってahーとかuhーとしか言えなくなってしまう)。だが、パニックになっても大丈夫なよう、ページの最後に先ほどまでに記載したリンクをまとめておいた。

 

 また、今回の記事では私にできることをメインで書いたため、いわゆる一般的な自己紹介で触れる趣味などのパーソナルな部分については書かなかった。そちらについても書いて欲しいという声があがればその内書くかもしれない。

 

 これで自己紹介は以上だ。あなたがここまで読んでいただいたのなら感謝する。インターネットにおける自己紹介というのは一方通行なのでここまで好き放題書くことができる。しかし、それは読む側も一方的にページを閉じることもできるということだ。そういう意味でこの場はフェアだ。だから私はインターネットが好きだ。

 

 では、インターネットではなくアンフェアな、リアルの場ではどう自己紹介すれば良いのだろうか……? リアルの場、フェイスtoフェイスの場では何かして気分を害すると、いきなり相手が殴りかかってくる危険性だって有りうる。仕方ない、ここは無難に「趣味は……音楽鑑賞と読書……ですかね」とでも言っておこう。

 

 

以下リンク

caesarcola.hatenablog.com


caesarcola.hatenablog.com

caesarcola.hatenablog.com

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skeb.jp

caesarcola.hatenablog.com

caesarcommand.booth.pm

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【総額5280円】映画館のフードメニュー全部頼んでお腹いっぱいになる。

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 もしあなたが小説家で、作中の主人公がヒロインを連れて映画館に行ったとする。主人公は気を利かせてチケットを事前に取ってあるが、ドリンクなど売店のフードメニューはそうはいかない。二人はカウンターの前に立ち、そしてヒロインはこう言う。

 

「ポップコーンとドリンクのセットください」

 

 これだけだ。

 

 本当にこれだけ。映画を見に来たとき、小説の登場人物だろうがノンフィクションの私たちだろうが売店で喋るセリフは本当にこれだけである。統計は取っていないが、概ねの人が映画館の売店ではポップコーンしか買ったことが無いだろう。かくいう私もそうだ。しかし、それでは先ほどの凡庸なセリフしか出てこない! 本当のヒロインは食いしん坊なのに!

 

「シネマイクポップコーンのセット、味はクレイジーソルトで飲み物はコカ・コーラ。あとはチョコクリームチュリトスとジョンソンヴィルホットドッグのチーズソース、オリジナルサンドはアボカドバジルモッツァレラ、ちょびっとチキンとフリじゃがもつけてください」

 

 本来ヒロインが言うべきセリフはこれだ。その後、欲望のままに頼み過ぎたことに気づいたヒロインが赤面し照れ隠しにはにかむ。そのキュートさにやられた主人公と読者は彼女への好意が高まり作品の完成度もグングン上昇していく。やがて小説は直木賞をとって大ヒット、ドラマになり映画になり印税が1000000ドル入ったあなたは豪邸を構え太い葉巻をぷかりとやって満足げに微笑む…………はずだった。

 

 しかしそうはならなかった。それは何故か? もちろんあなたが知らなかったからだ。ポップコーン以外のフードメニューを!

 


 というわけで今日は映画館の話だ。映画……ではなく映画館売店のフードメニューの話である。冒頭に書いた通り、私たちは映画館でポップコーン以外を買わない。確かにポップコーンは売店の主役だろう。しかし実際にはあるはずなのだ。影に隠れたまだ見ぬメニューが。それらは爪を研ぎ、まだ見ぬ獲物を待ち構えている……。

 

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 今回はそれらの脇役をまとめて一気にいただこうという計画だ。映画も観てお腹もいっぱいになってマジでハイになるのは間違いない。善は急げとばかりに、私は家を飛び出した。

 

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 TOHOシネマズに到着した。普段は映画を鑑賞だが、今日はディナーを完食だ。エスカレーターを昇っていくと、映画館特有の暗がりが訪れた。

 

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 売店に到着、ポップコーンの良い香りが辺りを漂っている。平日の夜という時間帯を選んだため、カウンターに人はあまり並んでいなかった。レジ前に立つと、カウンターのお姉さんが「いかがいたしましょうか?」と問いかけてくる。

 

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△メニューは許可を貰って写真撮影させていただいた。



 私は決意をもって口を開き注文内容を読み上げてる。ポップコーン、ドリンク、ホットドッグ、そしてチュロス……。ひとつひとつフレーバーやドリンクの種類を選択しながら注文していく。最初、店員さんはにこやかに対応していたが、私がジョンソンヴィルホットドッグと言った辺りで私の背後を気にした様子を見せ、

 

「トレーがおふたつになりますが構いませんでしょうか?」と言った。

 

 確かにそうだろう。既に注文量は他のお客さんと比べて結構な量だ。そこでお姉さんはおひとり様じゃないと判断し、お連れ様が居るのかなと推測したのだろう。しかし私は単独行動、孤独のグルメ、一人民族大移動だ。

 

「一人なんですけど、大丈夫ですか?」

 

 と返すと、「一応大丈夫です」と返事が。映画館に精通している方はお気づきだろうが、2020年現在映画館は感染症対策のため、スクリーン館内座席はひとつひとつ間を空けて着席することになっている。つまり肘置き兼トレー設置箇所を座席の両側どちらも使うことが可能なのである。なので一人でトレーがふたつでも今日は大丈夫なのだ。これ幸いとばかりに注文を続ける。

 

「ホッドドッグのナポドッグwithチーズソース、オリジナルサンドはハム&チーズ、ちょびっとチキンとフリじゃが……」

 

 そう続けていくと、レジのお姉さんは珍獣でも目にするような瞳でこちらを見つつ、「少々お時間いただきますが、よろしいでしょうか?」と遮った。「食い過ぎだデブ」とは言わない、流石プロだ。私が「構いません」と返すと、お姉さんはレジ奥の他スタッフに何やら指示を出していた。

 

 

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△淡々と大量の注文をしていく。お姉さんは曖昧な笑みを浮かべていた。

 

 アイスクレープなどのデザートメニューを注文しようとするとトレーが三つになる可能性があったため、それらは断念し映画の後に再度改めてオーダーすることにする。そしてしばらく経つと、カウンターに並べられたふたつのトレーにフードが並べられ、ついに私に提供された。

 

 そしてこれらが、今回いただくメニューの全貌である!

 

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 商品それぞれの紹介は後でするとして、今日初めて見るメニューも多くポップコーン以外にも様々なメニューがあることを改めて認識した。ホットドッグやオリジナルサンドなどはポップコーンでいうところの塩かキャラメルかのように他のフレーバーがあるため、これで真に全種類というわけではないが、大枠の注文ではこれらでコンプリートだ。


 それでは早速館内に入って実食! と言いたいところだったが、そこで重大なミスに気づく、映画のチケットを買っていなかった。というか、フードメニューを頼むことに夢中で肝心の映画について何も考えていなかった。映画のチケットも持たずに大量の食べ物抱えて仁王立ちだ。これではただ映画館に迷い込んだフードファイターである。だが幸運にもちょうどよいタイミングの映画があったため、そのチケットを購入する。食べ物が多すぎるためもしかしたら匂いを気にする方も居るかなと思い、スクリーン内の端っこの座席を購入した。


 両手に山盛りのトレーを持って館内に入る。ちなみに購入したチケットは「コンフィデンスマンJP プリンセス編」という映画のもの。長澤まさみが演ずる詐欺師を主人公にする作品で、2018年に放送されたドラマシリーズ二度目の劇場版だ。映画泥棒のムービーを横目に、座席にトレーをセットする。

 

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 今までに映画館に来たことは数あれど、両側にトレーをセットしたのは初めてだった。両手に盾を装備した感覚というのか、それともジャンクマンというのか、すごい防御力の上昇を感じずにはいられない。何というか、「完全になった」感覚がある。ふかふかのシート、これから始まる面白そうな映画、そして大量の食事……。これを完全、パーフェクトと言わずに何と言えよう。そういった全能感に包まれながら、映画が始まり、そして私はフードメニューに手を伸ばした……。

 

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 まず最初に手をつけたのはやはりポップコーンだ。この世で最も美味しくポップコーンを食べれる場所はここしかない。映画館売店の主役に敬意を表し、神妙な手つきでそれをつまみあげた。

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 今回は塩味をセレクトした。映画館で食べるそれはほのかな温かみがあって嬉しい。先ほどは「つまみあげた」などと書いたが、私は手のひらを一杯に使ってわし掴み、むしゃりと口につめて冷たいコーラで流し込んでいた。「満足」という言葉が生み出されたとき、そこにはポップコーンとコーラがあったのだろうというほどの味だった。

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 お次はチュロスだ。チョコクリームチュリトスと、見た目が完全にハッピーなレインボーチュリトスの二本を選んだ。チュロスは出来たてで温かいのも嬉しく、チョコレートの方は食べる前からわかっていたがとても美味しい。チョコの甘さがポップコーンの塩味と相乗効果を生み出しており、「甘いしょっぱいで永久機関」が簡単に実現できる。ポップコーンと同時に売ろうと提案した担当者はMENSA会員だろう。


 レインボーチュリトスの方はイロモノだろうと思っていたが、しかし意外にもこれは「当たり」だった! 七色のパウダーはそれぞれ別の味で、イチゴ、マンゴー、レモン、バニラ、メロン、ソーダ、コーラという味構成だ。これが飽きずに楽しめるし、見た目にも次はどんな味かなとわくわくしながら味わうことができる。ふざけた見た目やおちゃらけた言動だが実力はエキスパート、まさに漫画の強キャラのようなチュロスであった。

 

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 次は「ジョンソンヴィルホットドッグ ナポドッグwithチーズソース」だ。パンにナポリタンと太いソーセージが入っており文字通りチーズソースがかかっている。これらへんから菓子ではなくしっかり「食事」という雰囲気が出てきた。味はというと炭水化物! 肉! そしてチーズ! と男子中学生の好きそうな要素を詰め込んだ味である。つまり、単純だがだからこそ確かな需要があるということだ。そして男は基本的に中学生から成長しないので、当然私にも需要があり大変美味しかった。

 

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 オリジナルサンドはハム&チーズをセレクト。先ほどのホットドッグからもわかる通り私はチーズが好きだ。図らずもパンに炭水化物とたんぱく質を挟んだ食べ物が二連続になってしまったが、こちらはパン生地にゴマが入っており差別化されている。食べ応えという点では先ほどのホッドドッグの方が優っていたが、逆に言うと小腹が空いたな……くらいのときはこちらの方がオススメである。

 

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 ちょびっとチキンという名前だが別に「ちょびっと」というほど量が少ないというわけではない。普通にからあげクンより多い。それは謙遜なのか、命名した奴が大食漢なのか、それとも夜に揚げ物を食べる罪悪感から目を逸らすための免罪符のための「ちょびっと」なのかはわからないが、しっかりとした量があり満足できる。油を摂取したいぜ! と思ったのならこれを頼んでおけば間違いない。

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 最後はフリじゃが。一言で言ってしまえばポテトで、今回はのり塩味を選んだ。マクドナルド系の固さのあるポテトではなく、ソフトなタイプのそれだ。これを味わっているときに、スクリーンでは東出昌大が爆弾の爆発を受けてガッツリ吹っ飛んでおり、それと似てガッツリ濃いのり塩の風味が舌にくる味だった。映画館にポテトがあるイメージが無かったため、私にとっては新発見であった。


 ここまででとりあえず味の紹介は以上だ。私はこれらのメニューを「コンフィデンスマンJP プリンセス編」を鑑賞しながら食べ続け、わかったことがひとつある。それは、「全部のフードメニューを頼むと普通に多い」ということだ。「当たり前だろ」「脳みそが不足しているのか?」「おまえはMENSAじゃない」などの声が聞こえてくるが、少し考えてみて欲しい。何も知らない状態で、映画館のフードメニュー全部食べたろ! と思ったときに、思い浮かべるのは「ポップコーンと……チュロスと……あとなんかサンドイッチみたいなのあったかな」くらいのものではないだろうか。


 私もそれくらいの見込みで映画館に来てみて、意外な種類の多さに驚いていた。ホットドッグとオリジナルサンドって素因数分解したらほとんど一緒じゃないの? と思わないでもないが、完全にこちらの見通しが甘かったと言わざるを得ない。映画も佳境になり、小日向文世演ずるリチャードが宿敵の謀略にピンチになっている中、私は自らの満腹にピンチになっていた。当日は普通に朝昼食べていたのも、原因のひとつだろう。


 それでも、やはり映画の120分という時間は長い。食事に疲れたら少し手を止めて映画に集中し、回復して口が暇になったらまた食べる、というサイクルを続けていると、上映開始90分後くらいに完食することができた。満腹ながら鑑賞した「コンフィデンスマンJP」はラストで数々の伏線が見事に回収され、コメディ好きの私にとって大満足の内容だった。後に計算したところ、この上映時間中に摂取したカロリーは約2242kcal。映画の内容的にも、摂取カロリー的にもこの120分は実に濃密な時間であった。

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 完食したトレーを返却し、劇場を後にする……と言いたいところだが、まだ忘れ物がある。そう、デザートだ。劇場から出た瞬間再度売店に直行した私をレジのお姉さんがどう思っているかは知らないが、デザートを声高に注文した。

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 こちらがデザートメニューのアイスクレープチョコバナナ味と、ゴディバカップアイスのミルクチョコレートチップ味だ。映画館でデザートが売っていることも新たな発見だったが、二種類あるというのも驚いた。映画を見終わっていたこともあったため、テイクアウトで購入してカバンにしまい、溶けてしまう前に急いで帰宅する。

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 既に満腹と書いたがデザートは別腹だ。別腹……牛ではない身で使うには便利すぎる言葉であるが、アイスクレープは冷たくしっとりとしていて美味しかった。甘さは少し控え目で、アイスではあるがクレープに包まれたスティック状になっており、手を汚さず片手で食べることもできるので映画館内での食事にも適しているのだなと感じた。

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 最後……長い長いディナーだったがこれで最後だ。GODIVA カップアイス。半溶けになったそれをスプーンで救い上げると、それを追うようにアイスが伸びてその粘度の高さが濃密なチョコレートを予感させる。実際食べてみるとチョコレートの甘さが口いっぱいに広がり、館内で食べたチョコレートチュリトスと合わせ、温かいチョコと冷たいチョコが同じ胃に同居し、チョコがいっぱいで嬉しいなという気持ちになった。


 本日TOHOシネマズに支払った総額は5280円、まあまあ高額に思えるが、映画内で長澤まさみが行方を左右した金額が10兆円ということを考えると微々たる金額だろう。また、総摂取カロリーは2726kcal。先月にブログで「ダイエットをしました!」と書いた後にこのカロリー摂取量は減量の神に中指を立てる行為だと思われるが、映画館からの帰りは15分くらい歩いたのできっと神もお許しになるだろう。


 さて、今回は映画館のフードメニューにスポットライトを当てて話をしたが、チュロスやポテトなど様々な発見があった。これを読んだあなたが映画館に行った際、新たな選択肢の存在に気づき、豊かなシネマライフを送ってもらえたならば幸いである。何故なら、選択肢の多さというのはいつでも人生を豊かにするものだからだ。体脂肪も豊かにするって? そういった問い合わせには現在対応しておりません。ただ、メニュー毎のカロリーを調べる際にTOHOシネマズに電話した際、快く対応していただいたオペレーターさんには最大限の感謝を捧げたい。ありがとうございました。


 それでは、私はもういく。夜空に無数の星があるように、この世にはたくさんの映画館がありそれぞれのフードメニューがある。つまりまだ見ぬ選択肢があるということだ。私は映画を見るのも好きだし食事をするのも好きだ。つまり映画館は最高だ。これからもそこに行く足を止めることは無いだろう。もしこれを読んでいるあなたも映画が好きで、偶然私の隣の席に座ることがあったならば、そのときはオススメのフードメニューを教え合うことにしよう……。

 


 

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Skeb……初めてイラストを描いてお金を貰った。

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 エレクトロン硬貨というものをご存知だろうか。紀元前600年頃に発行されていた世界最古の硬貨で、金や銀等の化合物の塊に刻印を打ったものだという。そしてその刻印とは、ライオンの紋章がかたどったものであった。


 何故ライオン? 映画に登場するような鼻持ちならない皇帝のように、やはり古代の王様もライオンをペットにして愛でていたのだろうか? しかしこれがどうやらマジのようで、そのエレクトロン硬貨を発明したリュディア王国の王、アリュアッテス2世は獅子を自分の象徴として、硬貨にその姿をデザインしたようなのである。世界最初の硬貨に自分の顔ではなくライオンを刻印するとは、非凡なセンスだと思わざるを得ない。ライオンもやはりネコ科の生物、人類はやはりネコの魅力に屈するしかないのか……。


 ネコはまあ置いといて、現代の日本の硬貨には菊や桜など植物の絵が描かれているが、最古の硬貨にも同様にライオンの紋様が描かれている。お気づきだろうが、共通点として硬貨には絵柄が描かれているのだ。それは何故なのか? 別に紋様や絵など、機能的には必要のないデザインが施されている理由はあるのだろうか?

 

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 恐らくは偽モノ防止のためデザインに複雑さを持たせる…というのが理由なのだろうが、私は違う視点の解釈も主張してみたい。


 ここからは私の推測だが、ヒトつまり人間は絵や模様などデザインというものを本能的に好ましく感じる性質があると思う。絵や模様というモノを見ると、ただの数字や図形を見たときとは違い、ぬくもりに似た感触を受けるはずだ。そして生活に根付く硬貨というものに親しみを覚えてもらうため、硬貨にライオンをデザインしたのではないだろうか。


 そのぬくもり……暖かみ……ほのかなエネルギー……そういったものを感じるため、古くナスカの地上絵やピラミッドの壁画は描かれたのではないだろうか。そして現代にも絵やイラストといった創作活動が連綿と続いているのだろうと私は思う。

 


 というわけで今日は絵の話だ。お金の話でもある。Skeb(スケブ)というサービスを利用し、生まれて初めて絵を描くことでお金を稼いだという内容だ。といっても、別にこれはSkebの宣伝記事というわけではないし、自分をガンガンに売り込む営業記事というわけでもない。単純に、この一連の経験と現在の心境を記録として残しておこうという意図で書かれた記事である。


 まず、Skebというサービスの簡単な説明をする。イラストコミッション……早い話がお金を払って絵を描いてもらうサービスのことで、イラストのリクエストに際し打ち合わせなどが無く煩雑さが全然ないことが特徴になっている。煩雑さがないというのは良いことだ。手続きが面倒でマイナポイントの入手を諦めてしまうような人間には面倒がないというのは大変魅力的だ。


 私がこのサービスを知ったのは2019年の春頃だっただろうか、イラストを描いてお金を貰えるサービスがあるらしい、くらいの認識だった。それを例えるなら、1971年、銀座にマクドナルド1号店が初上陸したときの地方民くらいの気持ちだろうか。「都会ではシャレたモノが流行っているらしいが、まあ田舎の自分には関係ないだろう」という気持ち。


 しかし2020年初頭から、日ごろ見るTwitterのタイムラインにおいて、Skebのリクエストによって描かれたイラストを見る事が多くなってきたのである。インターネットサービスの普及速度はマックのチェーン展開より速い。あっという間にあの緑色のアイコンはタイムラインの常連となった。そして私も登録はするだけタダだからと軽い気持ちでSkebにクリエイター登録を行ったのである。

 

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 しかしわかっていたことではあったが、Skebにリクエストは一切来なかった。知らない商品を買うことはできないというのはコマーシャルの基本だが、私は知られていない商品だった。そしてそれは当たり前のことで、私はイラストを描くといっても月に1~3枚程度、それにジャンルも雑多で、そのとき描きたいキャラクターのイラストを描きたいように描くというだけのタイプだったからだ。


 それでは何故リクエストが来たのか…? という疑問があるが、ここで少し話を変えて、VRChatというゲームの説明をする。VRChatはバーチャル空間上で他ユーザーとコミュニケーションをとって遊ぶというゲームで、それを私もプレイしていた。このゲームの特徴として各ユーザーが自身のボディとなるアバターを自作してアップロードできるというものがある。つまり皆が思い思いの姿、形で生活しているのだ。


 少し想像しづらいかもしれないが、皆がそれぞれ自分の望む姿で過ごしているというのは本当に面白い。猫耳を生やした美少女も居れば屈強な重装騎士も居る。スターウォーズに登場するロボのようなアバターを見たと思ったら足元にワニが這っていることもあるのだ。そしてその姿が目の前で動いている。サイバー……と感じずにはいられない。

 

 なので、私が他プレイヤーのアバターのイラストを描くというのも不思議な事ではなかった。VRChatのゲーム内で撮影したスクリーンショットを元にキャラクターイラストを描いていた。バーチャルとはいえ、そのキャラクターの中身はきっと人間で、今のところ中身がエイリアンだったことはない。つまりアバターのイラストを描けばその中身の人間も喜んでくれることも多く、それもモチベーションに繋がっていた。


 そして今回、Skebでリクエストをしてくれたクライアントの方もVRChatで会った方の一人だった。おそらく、人間のはずだ。確認はとっていないが。

 


 イラストという趣味を始めてから10年になる。


 2020年9月のその日、朝目を覚ますとメールボックスに見慣れぬ文字が並んでいる。「[Skeb] リクエストが届きました」。見た瞬間、思わず背筋が伸びた。雷に打たれたような気分で、呼吸も浅いままリクエストの文章を読んだ。VRChatのアバターを描いて欲しいというテキストと資料のリンク、そして決して安くない金額が記載されていた。


 お金、報酬、対価、やはりそのインパクトは大きい。イラストに限らず、芸術活動に対してお金を支払うというのは一番シンプルで強力なリスペクトを示す行為だ。私はその行為が自分に向けられたことが嬉しかった。頭の奥の方がビリビリとして、大きく息を吸い込んだ。台所に向かい、買いだめしてある栄養ドリンクを一本飲んだ。


 パソコンの前に戻り、マウスを操って「リクエストを承認」のボタンを押した。この瞬間から私に「対価を貰ってイラストを描く」という責務が発生したことに、大げさでなく緊張した。朝の6時48分だった。

 

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 その日から3日かけてイラストを描いた。武田信玄上杉謙信の一騎打ちのような緊迫感……。ほとんどバトルみたいなものだ。線を引き色を塗っている最中、背後に居るクライアントが私の後頭部に拳銃を突き付けている。私が腰抜けのイラストを納品した瞬間、クライアントは容赦なく引き金を引き、後にはいくばくかのお金を握り締めた哀れな亡骸が転がることになる。そういった鬼気迫る戦いだ。


 ラフを描き、線を引いて、色を塗って、影や光を描き込んでいく。いつもやっていることだが、「実戦」は初めてだ。しかしそれはとても楽しかった。緊張感はある。しかしそれはむしろスポーツの大会に出場するときのような緊張感だ。自分が培ってきたもので対等な勝負をする……それは少なくとも私にとって楽しい緊張感だった。


 やがてイラストは完成し、納品を済ませることができた。Skebはクリエイター側に非常に有利なシステムなので、納品してからボツやリテイクの要求が出ることはない。だから基本的には納品した時点で戦いは終わっているのだが、やはりクライアントが本当に満足しているのか、それが非常に気になっていた。


 しかしそれは杞憂だった。クライアントの方はTwitterで私の描いたイラストを紹介し、リップサービスかもしれないが褒め言葉まで書いてくれていたのだ。それを見たときの私の達成感といったら! 私は両手を固く握り締め、歯を強く噛み締めて短く息を吐いた。瞬きを何度かして、大きく息を吸い込んだ。

 

 


 そして私は銀行に向かい、通帳記入を行った。振込者名にSkebの文字、その隣には振込手数料が引かれた金額が記載されていた。学生時代に初めてアルバイト料を振り込まれたときや、就職してから初任給を貰ったときよりも大きい衝動が私を襲った。創作活動を趣味にしている者のほとんどが、一度は「これでお金が稼げたら」と思うことだろう。そして、私はたった一度とはいえそのトロフィーを獲得したのだ。ピコン、と実績解除の音が聞こえた気さえした。嬉しい。単純だがその気持ちでいっぱいだった。

 

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 最後に、このトロフィーを私は胸に掲げて今後の人生を送って行くのは間違い無いが、これは様々なめぐり合わせによってもたらされた幸運の出来事だということをしっかりと憶えておくことにする。Skeb……VRChat……それらの要因が噛み合い、こういったレアな体験をすることができた。クライアントやSkebやVRChatの開発者には心よりの感謝を述べたい。この記事は私のための記録だが、これを読んだあなたが少しでも楽しめたら良いなと願っている。


 それでは……私はもういく。それがどこにあるのかわからないが、次の戦場を探しに行かねばならない。燃料は少ないが、もしまた会えたならそのときは再会を喜ぼう。そして、私達が勝ち得たトロフィーの話をほんの少しだけするとしよう……。


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