「Jump King」で賽の河原を飛び越えろ。

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師匠も走るほどに忙しくなることから12月の別名を師走というが、私の12月は「師跳」だった。「走る」のでは無く、「跳ぶ」…………つまり、「Jump King」をプレイしていたということだ。

私はカエサル。今日は「Jump King」の話をする。

・Jump King とは

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「Jump King」というゲームキービジュアルを見たあなたは思った。「スーパーファミコンのゲームか?」 たしかにドット絵で描かれたスタイリッシュさのかけらの無い甲冑キャラクターを見ればそう思うのも無理はない。しかし、これは2019年に発売されたゲームだ。最近switchやPS4にもローカライズされたことから、もはや有名なゲームかもしれない。

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ゲームとしてはアクションゲームだ。ストーリーは単純、「塔の上にいるギャルを迎えに行く……」というもので、マリオブラザーズ魔界村と大体一緒だと考えて貰えば良い。

続けて、ゲーム操作の説明(PC版)をしておこう。

 

矢印キー(←→) : 移動
スペースキー : ジャンプ

 

これだけだ。攻撃ボタンは? 村人に話しかけるにはどのボタンを押せばいいの? そんなものはない。このゲームにあるのはジャンプボタンだけだ。敵がいないから攻撃ボタンなんて存在しないし、村人は放っておいても喋り続ける狂人しか登場しないから話すためのボタンも必要ない。

ジャンプボタンを押すと、キャラクターがしゃがんで力を溜め始める。そしてボタンを押した長さに応じて、ジャンプの高さが変わるのだ。そしてジャンプしたが最後、空中で一切の制御はできない。ただただ重力と放物線に身を任せるのみ。そのジャンプを駆使して、上へ上へと昇っていくのがこのゲームの目的だ。つまり、ジャンプだけだ。他の要素は無い。

マジでジャンプだけ? マリオ兄弟だってダッシュボタンくらいあったぞ? と思ったかもしれないが、このゲームは本当にジャンプだけのゲームだ。ガードも無ければスキルも無い。仲間も居なければ手持ちもポケモンも居ないし、武器が無いので武器変形攻撃も無い。Vトリガーも無いしムーンドライブも無い。EVA-8オートも無ければ期間限定ガシャだって無いのだ。

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そして忘れてはならない本ゲームの特徴として、「落ちる」ということがある。それはアプリがシャットダウンするという意味ではない。そのままの意味で、「落ちる」のだ。勢い余ってジャンプしすぎたり、逆にジャンプが足りなかったりで足場にたどり着けないと、キャラクターは落ちていくのだ。下に、下に。

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もちろん本ゲームはオートセーブだ。通常、ゲームにおいて「オートセーブ」といえば、予期せぬゲーム終了に対しても進行度が保存される「安全弁」という役割が強いが、こと本ゲームにおいてのオートセーブは「悪意」そのものだ。落ちてしまったが最後、絶対にもう一度同じ手順を踏んで登らせてやるという作為を感じる。このため、本ゲームは非常に高難度なゲームになっている。

少しづつ、少しづつ登っていった末に、ひとつミスしただけで積み上げてきたものが台無しになる。先ほどこのゲームに「敵」は居ないといったが、あれは嘘だ。重力という敵にプレイヤーは苦しめられることになる。

賽の河原(さいのかわら)を知っているか? 冥土の三途の河原、死後の世界で、子どもが父母供養のために石を積んで塔を作るが、やがて鬼がやってきてその塔を崩してしまう。子どもはとても鬼には勝てないので、崩された塔をまたひとつひとつ積み上げていくしかない……。そういった伝説を、ゲームして遊べるようにしたのが「Jump King」だ。

そんなゲームが楽しいのか? 答えは……「あなた次第」としかいう事ができない。しかし、私は14時間45分間このゲームを遊び、そしてクリアした。だからこのゲームに少なくともそれだけの価値はあると思うし、その体験を紹介していこう。なお先に断っておくが、私がクリアしたのは「表面」と言われる通常マップのことで、いわゆる「裏面」などの更なる高難度マップはクリアしていない。

・意外と飽きない

「Junp King」をクリアして最初に思ったのは、「案外作りこまれたゲームだったな」というものだ。初見の印象としては「ジャンプ失敗でやり直しを何度も強要するという内容の、自律神経の狂ったマゾヒスト向けゲーム」という印象だったが、これが意外とそうでもない。確かにこの内容も真実なのだが、それだけでは無いのだ。

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まず、グラフィックが綺麗だ。こういったドット絵のグラフィック背景を見るのも久しくなってしまったが、なかなか精緻に描きこまれている。マップの全容は、森林エリアから始まり下水道や商店などを通って吹雪さす山間を抜けて……となかなかに長い道のりなのだが、プレイ中に新しいエリアにたどり着くたびに風景や色合いがガラッと変わり純粋にわくわくする。

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さらにゲームとしても面白い。「通常のジャンプに慣れてきたぞ」という頃合い、吹雪の雪山ステージにたどり着くのだが、このマップでは雪に足を取られて通常の移動ができなくなるばかりか、一定時間で左右に方向が切り替わる吹雪がジャンプに影響を及ぼすのだ。「ここに来て新要素かよ!?」と新鮮なプレイフィールを体験することができる。

終盤では「氷の床で足が滑るステージ」などアクションゲームならお馴染みのギミックもあり、それがこのゲームの「一度ミスしたらまたやり直し」という要素とマッチしてとてつもないスリルを生み出す。それらの要素により、ゲームとして「飽きる」ことなくプレイを続けることができるのだ。

・怒りと向き合う

「飽きる」ことなくゲームは続けられるが、しかしそれが「ストレスのない」ゲームということではない。私は別にJump Kingを作ったNexile社にカネを貰っているわけではないのでハッキリと書くが、このゲームにストレスはある。確実に。たっぷりと。

賢明なる読者諸君もわかっているとは思うが、「落下」だ。それだけだ。「落下」が非常にストレスなのだ。これを説明するのは内容の重複になるためだらだらとは書かないが、一言だけ書くなら、私はこのゲームのプレイしていた日々、たまたま目にした「タケコプターを使うドラえもん」に嫉妬した、ということだけは述べておこう。

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やり直しというのは大きなストレスだ。

明日は午前中からプレゼン発表があるから、資料を作成しなければならない。14:00から始めたプレゼン資料の作成業務、思ったより手間取って17:00までかかってしまった。しかしなんとか完成にまでこぎつけ、作成資料を保存しようとしたその瞬間、窓の外で大きな雷鳴、あっという間に停電が発生して部屋が真っ暗になった。もちろん目の前のPCモニターもブラックアウトだ。あなたの頬に汗が垂れる。

すぐに電気は復旧したが、PCを付けてみると先ほどまで作成した資料データは綺麗サッパリなくなっている。なぜ? どうして? なんでこんなひどいことをするの? あなたは無垢な5歳児のように助けを求めるが、神は見ていない。誰も助けてくれはしないのだ。ただ明日のプレゼン発表だけは確実に迫っている。あなたは5歳児のスピリットを投げ捨てて、大人としてまた同じデータを作成し始めた。ストレスで胃を痛ませながら……。

これと同一のストレスを、Jump Kingでは1時間に30回くらい感じることができる。時間あたりの絶望量がとてつもなく多い。ストレスの高コスパだ。そうして積み上がったストレスは、人に様々な影響を与える。私の場合は「怒り」だった。正直に話そう。このゲームで私がテーブル殴った回数は4回だ。

 

 

しかし……究極的に言えば、ゲームは悪くない。そのゲームを選択してプレイしているのは私だ。母親を人質に取られ「このゲームをクリアしなければ撃つ」と脅されているわけでもないので、イラつくならゲームをやめればいい。それは百も承知だ。しかし、私は不完全な人間なので、ゲームを続け……そしてあらゆる要素にイラつくのだ。

どんな場所にも、ジャンプをワンミスしたら死ぬほど落下するポイントが用意されている。製作者の底意地の悪さが見て取れる。本ゲームの開発者が誰かは知らないが、ソイツはゲーム作りの上手い性格破綻者だ。私はこのゲームをプレイしている日々、「Jump」や「King」という文字をどこかで見る度、奈落への急降下を思い出して心的外傷を負った。ポーカーでジャックとキングが配られたときなど、怒りがフラッシュバックしてまともなプレイができなくなった。

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キャラクターも腹立たしい。バケツみた甲冑を着ているコイツはなんなんだ? 敵が居ないんだから甲冑の防御力は必要ないだろ。ポーズも腹立たしい。T・ホークみたいな立ち姿しやがって。なんなんだコイツは? 

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色々と文句を言ったが……先ほどもいった通りゲームは悪くないのだ。面白い点もあるのは間違いない。なので、もしこれを読んでいるあなたが本ゲームに挑戦するといったときのために、私がいくつかのメッセージを残しておこうと思う。

しかし、これは別にJump Kingをあなたにオススメしているというわけではない。なんとか私はこのゲームをクリアして地上に帰ってくることができたが、このゲームをプレイして怒りに狂い、鬼神に目覚めてしまう人間が出てきてもなんら不思議はない。本ゲームを誰にでもオススメするというのは器物損壊罪や自殺教唆・ほう助の罪に問われる可能性すらある。だから、このゲームをプレイするかは自分の判断で行って欲しい。もちろん、ウイスキーを飲んでいない時にだ。

 

・一気呵成にやれ

まずひとつめのアドバイスだが、「一気にやれ」ということだ。このゲームは戦いだ。毎日1時間ずつちょこちょこ進めて少しづつ楽しんで……みたいなのはどうぶつの森だけにしておけ。何故なら、このゲームにレベルやスキルなどのデータ的成長要素はないため、経験値はあなたのその腕・肉体にのみ蓄積していくからだ。

どこから、どの向きに、どれくらいのジャンプ力で飛べば上手くいくかという経験値。それは職人が作り出すガラス細工のように感覚的なもので、言葉や文字で説明することはできない。そしてその感覚は、時間が経つと忘れてしまうのだ。

実際に、私は約15時間かけて本ゲームをクリアしたが、プレイした日数は六日だ。そしてその内訳は、最初の五日間が7時間、六日目に8時間かけてクリアしたのだ。このデータから本ゲームをプレイするときは「時間をとって一気にやれ」ということは明らかだ。もしあなたが「私はこのゲームを一年間かけて少しづつクリアするよ」というのなら止めはしないが、次に会うときに狂っていないことを祈るのみだ。

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(私はここで狂うかと思った。)



・兵糧を切らすな

私がこのゲームをクリアしたその日は、起きた瞬間から「今日は絶対に殺してやる(Jump Kingをクリアするぞ!)」という決意に満ち溢れ、昼前から始めて食事もとらずに8時間続けてプレイしクリアした。しかしその間私が餓死しなかったのは、きちんと兵糧を用意していたからだ。

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私が備えたのはこの「コーラアップ」だ。固めのコーラグミが戦う兵士のための食糧だというのは事情通なら知っているとは思うが、この「コーラアップ」は名前に「アップ」とある通り、「上へ……」という上昇の意志が感じられており、良い。

この項目で言いたいのは、別に「コーラアップを買え」ということではない。「サイドアーム(相棒)を用意しろ」ということでもない。「決意を固めろ」ということだ。

このゲームをクリアできなくなってしまうのは、「言い訳」が用意されたときだ。間合いを見誤ったミスジャンプ、プレイヤーは奈落の底へと落ちていく。積み上げた努力は泡と消えた。その瞬間、あなたはつい時計を見る。19:00、そろその夕食にしようか。あなたはゲームを終了し、コートを来てダイナーへ向かう……。そして、あなたのJump Kingは終わり、二度と起動されることはなかった……。

別にそれは夕食だけでなく、「もう寝る時間だから」とか「Mステが始まる時間だから」の可能性もある。それらの言い訳を最初から潰すのだ。食事は後にしてグミで空腹を紛らわせ。明日が休みの日にプレイ……もしくは仕事なんて辞めろ。Mステは録画しておけ。そういった決意を持って、Jump Kingを攻略するのが、結果的に良いジャンプに繋がるだろう。

 

・達成感がある

さて、色々と書いたが、総合してこのゲームは「プレイして良かったゲーム」であった。それはひとえに、「クリアしたときの達成感」がトップクラスだからだ。頂点にたどり着いた瞬間の気持良さ。これは明確に「勝利」と言ってもよいだろう。「勝利」の気持ちよさは筆舌に尽くしがたく、私はこのゲームをクリアした瞬間に口から出た言葉は「ザマ見ろッ!!!」だった。

「オウッ!!!! オウッ!!!!! アオオッ!!!! 」とアシカのように吠えた後、エンディングを見ながら私は立ち上がって踊った。腕を伸ばしたり縮めたり、オインゴボインゴブラザーズのように踊った。

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ジョジョの奇妙な冒険 第三部 EDより)

 

この勝利の舞こそが、私がゲームに求めるものだ。誰も見ちゃいないが、自分で自分を認めることのできる瞬間。それがゲームの楽しさのひとつだろう。塔を登り切ったその先に立つギャルを抱き、プレイヤーキャラクターは優雅に塔からジャンプし、滑空しながら降りていく。エレガントな夕日をバックにだ。その夕日の鮮やかさが、これまでのストレスを吹き飛ばして脳の報酬系をガンガンに刺激……有頂天になって腰をツイストだ。全能感、今ならどこにだって跳んで行ける気がする、この私のジャンプ力を持ってすれば……。

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想像していたよりギャルがホットなベイブだったというのも非常に良かった。情熱的なレッドドレスとブロンドの長い髪、グラマラスなボディ。先ほどはこのゲームの開発者を精神破綻者と書いたが、女の趣味の良い性格破綻者だったと訂正しておく。

 

 

それでは、私はもう行く。もちろん次の勝利の舞を踊れるステージを探しにだ。それはJump Kingの次マップかもしれないし、そうではないかもしれない。しかし、あなたもゲーマーであるならば、いつかどこかの塔の上で会うことになるだろう。もしそのときは、お互いがこれまでに集めてきた王冠を自慢しあうことにしよう…………。

 


 

Twitter:@caesarcola

 

5勝0敗がリセット!? マジック:ザ・ギャザリングのオンライン大会で私が直面した事態とは。

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 私はカエサル、プレインズウォーカーだ。プレインズウォーカーというのはTCGマジック:ザ・ギャザリング」を遊んでいる人のことを指す言葉で、山登りする奴をアルピニストと呼ぶのと大体一緒だ。

 

・大会とは

 

 さて、今日は先週末にあったオンライン大会の話をする。これはマジック:ザ・ギャザリング(以下マジック)の電子版であるMTGArenaというソフトを用いた大会で、私が参加したものは正確には予選ウィークエンドという。カードゲームの大会…………よくわかんないけどそれで勝つとどうなんの? バイデンとかに褒めてもらえるの? TCGに詳しくないあなたはそう思っただろう。なのでベイビーにもわかりやすく言うと、「最終的に賞金が出る」というものだ。

 

 世界に金はまだ残っているようで、カードゲームで遊んだ上に賞金がもらえるというのはドリームな話だ。しかし先ほども「最終的に」と言ったように賞金ゲットまでの道のりはかなり険しい。以下にその順序を書きだしてみよう。

 

STEP1:MTGArenaのランクマッチで月間最終成績1200位以内を達成し、STEP2への参加権を得る。

STEP2:予選ウィークエンド(1日目) で7勝、3敗してしまうと敗退。つまり7勝2敗以上の成績で二日目へ。

STEP3:予選ウィークエンド(2日目) こちらも先ほどと同じように3敗するまでに7勝。チャンピオンシップの権利獲得へ。

STEP4:チャンピオンシップ ここまで残れるのが200人前後で全員に賞金が確定!

 

 こんなに文字を並べられても、家電とかを買ったときについてくる説明書もまともに読めない奴にはなんのことやらわからないだろう(私の事だ)。なので、以下にイメージ図を描いた。

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 この山頂を目指しての山登りなのだが、山頂……つまりチャンピオンシップでもまた熾烈な戦いが繰り広げられる。もちろんそれは優勝者を決めるためだ。そして優勝者には賞金が15,000ドル与えられる。15,000ドル…………つまりいくらだ? 私は理系じゃないので計算できないが、専門家によるとビッグマックが1000個くらい買えるらしい。すごい!

 

 優勝者には15,000ドルだが、チャンピオンシップでは最下位だったとしても500ドルの賞金が与えられる。やはりよくわからないがビッグマック100個くらいということだろう。カードゲームで遊んでお腹いっぱいになれるんだからそれでもスゴイものだ。

 

・一日目

 さて、ここまで話したということはもちろん、私はこれらのSTEPに挑戦したということだ。といってもSTEP1は楽しくスタンダード(マジックの遊び方のひとつだ。)を遊んでいたら達成できたもので、月末になったときにあんたはよく頑張ったみたいなメールが来たことでそれを知ったくらいだ。

 

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 海外の言語なので難しいが、#601と書いてあるので601位だっということだろう。1200位までが通過ということなので大体その半分くらいだ。下の方にgood luck!と書いてあり、私の脳内でキムタクがサムズアップをする。つまりSTEP2:予選ウィークエンド1日目への参加権を手にしたということだ。

 

 私はこの予選ウィークエンドというものに参加するのが初めてだったので、当初は「まあ少しくらい勝ってジェムが貰えたらいいな」くらいの気持ちでいた。ジェムというのはゲーム内通貨であり、いわゆるガチャ石といえば理解が早いだろう。

 

 そして予選ウィークエンド1日目当日、開始時間は22:00からだ。夜遅くない……? と健康優良不良少年たちは思ったかもしれないが、これはマジックがアメリカ基準のゲームだからだ。これは専門用語なので賢明なる読者諸氏にはわからないかも知れないが、世界には「時差」というものが存在しており、日本で22:00だとしても何故かアメリカではまだ昼前くらいらしい。マジ? どうやら頭が賢い奴の調べによると世界は地球というボールのような形になっており、ジャパンでお日様が出てるとき、アメリカでは真っ暗な夜らしい。コペルニクスというどこかの男がそう言っていたらしいが、私はこの目で地球がボールだと確認していないのでまだ半信半疑だ。

 

 まあいい。とにかく私は2021年5月15日夜の22:00にパソコンの前に座ってMTGArenaを起動し、大会に参加した。Discordというインターネット電話で友人と喋りながらの気楽なものだったが、なんとそこで私は7連勝の快挙を達成したのだ!

 

 勝利の女神に愛される……そんな瞬間がある。私は別に強いプレイヤーというわけでもなく、日々の対戦戦績も平凡なものだ。しかし間違いなくそのサタデーナイトに私はツいており、一度も負けることなく7勝することができたのだ。

 

 対戦カードゲームをかじったことがある人にならわかると思うが、これらが基本的に運が絡むゲームであることは間違いない。実力のあるどんな強豪プレイヤーだとしても運が悪ければ全く勝てないし、逆にスーパーウルトラハイパーミラクル幸運ならばちょっと賢いアライグマでもカードゲームは勝つことができる。だからといって運だけのゲームではないのがマジック……ひいてはカードゲームの面白いところなのだが、この話をすると日が暮れてまた昇ってしまうのでまた今度にしよう。

 

 ここで私のデッキを紹介しよう。マジックについて詳しくない奴には退屈かもしれないが、カードゲーマーにとって自分のデッキを解説するというのは荒野のガンマンが自分の愛銃について語るようなもので、つまり気持ち良いということだ。笑って読み流して欲しい。

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 私が使っていたのはいわゆる「ティムールアドベンチャー」といわれるデッキタイプで、「厚かましい借り手」「砕骨の巨人」「恋煩いの野獣」という通称「エルドレインの三馬鹿」を使用したデッキだ。これらは1枚のカードなのに実質2枚分のカードとして使用できる優秀なカードで、武器に例えるならカービン銃に小剣をくくりつけた銃剣といったところだ。撃ってよし斬ってよしというカードで相手を苦しめ、勝利を目指すのが私のデッキの戦術だ。

 

 中でも私のお気に入りは先述した「厚かましい借り手」というカードだ。このカードはコソ泥をする小悪党な妖精を表現したものであり、カードとして強いのはもちろん、MTGArenaでプレイしたときの演出が素晴らしい。唱えると、相手のカードを手札に戻すという妨害を行いつつも妖精がゲーム画面中央に現れこっちを見ながらガッツポーズ! こんなに憎たらしい演出があるだろうか?

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 ↑妨害しつつもこのガッツポーズ。聖人でもなきゃキレてしまう。

 これ以上ない鬱陶しいガッツポ演出を見せることで相手に与える精神的ダメージを評価し、私はこのカードをありったけ入れたデッキを構築した。


 とにかく、私は幸運にも予選ウィークエンド1日目を通過することができた。次は翌日の予選2日目、こちらでも7勝することができればチャンピオンシップに進むことができる。私は別にこのマジックというゲームで世界一になりたいぜ! と思っていたわけではないが、それが現実的なレベルになってくれば話は変わる。ゲーマーにとって勝利の味は格別だ。それが世界レベルの大会ということになれば想像するだけでも涎が出てくるものだ。もしこの幸運が連続し、たくさん勝つことができれば私の大好きなマジックというゲームで最高の体験をすることができるのでは……と私も思わずにはいられなかった。

 

・そして二日目へ

 翌日の22:00、私は昨日よりも神妙な顔をしてパソコンの前に座っていた。もちろん本気でマジックに挑むためだ。そして予選ウィークエンド2日目、チャンピオンシップへの参加権をかけた戦いが始まった。

 

 一戦目、相手は赤単色の攻撃的なデッキだった。元々有利なデッキタイプということもあり勝利。

 二戦目、青赤のミッドレンジ。相手がカッコよくて強いドラゴンで攻撃してくる中、私はコソ泥妖精で小突きまわしてなんとか勝利。

 三戦目、ならず者が大量に入った青黒のデッキ。対戦相手が運悪く事故(デッキが上手く回らないこと)する展開もあり勝利。

 四戦目、再度の赤単色デッキ、一戦目と同じように勝利。

 五戦目、青白赤のサイクリングデッキ、サイクリングとは自転車走行のことではなく手札を捨てて引く動作のことをいい、それによって動くギミックを使ったデッキ。ギリギリの展開が続いたが、最後の最後で相手がミスをして勝利。


 なんと5連勝だ! 五戦目が終わり画面に「勝利」の文字が現れたとき、思わず身体が震えたのを覚えている。勝利の女神は二日連続で私に微笑み、というよりもはや満面の笑みだ。あと2勝でチャンピオンシップに進める……! 私は自分のマジック人生で最もツいてる夜に最高の全能感を得て、次の対戦相手とマッチングしようとゲーム画面をクリックした…………。

 

 ……しかし、事態はここから急変する。

 

・エラー発生

 私は意気揚々と6戦目に突入しようとしたが、なぜか対戦相手とマッチングするためのボタンが押せないのだ。ボタンが押せない……というのは予選ウィークエンドのイベントページから参加できなくなっているということであり、私はとても困惑した。私は嫌な汗をかきつつもゲームを再起動するが状況は変わらず予選に参加できない。私は解決策を求めてツイッターで検索を行った。

 

 すると、驚愕の事態が発覚した。

 

 この予選ウィークエンドの二日目、フォーマット(対戦形式)はスタンダートというものなのだが、ゲーム側のエラーでヒストリックのデッキでも参加できるようになってしまっていたのだ。これがどういうことかというと、剣道の大会にライトセーバー持ってきた奴がエントリー可能になってしまったということだ。カードパワーの違いもあり、竹刀でライトセーバーには勝てっこない。そういう完全に条件の違った対戦が可能になってしまっていたのだ。

 

 私は通常通りスタンダードのデッキ(竹刀)でエントリーし、当たった対戦相手の五人もスタンダードのデッキであり幸運なことにジェダイにもシスにもマッチングはしなかった。なので私としては「良かったぁ……」という他ないが、確かにライトセーバーとマッチングした人は同情するしなんらかの補償はするべきだとも思った。そして、そのエラーを確認したMTGArenaの運営が、確認のためにマッチングを一時停止したということのようだった。

 なるほど、それではヒストリックのデッキでは参加できないようにしてマッチングが再開するのだろうか。と私が思っていたところに、次のツイートが目に飛び込んできた。

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 『予選ウィークエンド2日目をリセットします。(中略)すべての勝ち負けは0に設定されます。』

 

 

 

……………………。

 

 


 住宅用の火災報知器にひもがついていることを知っているだろうか? このひもを引くことで報知警報の停止や点検ができるようになるもので機能としては警報停止ボタンを押すことでも代用可能なので場合によっては取り外してもいいものらしい……。

 

 どうしていきなり火災報知器の話をしたかって?

 

 それはもちろん、放心して天井を見上げることしかできなかったからだ。天井にある火災報知器を見つめ、「ああ…………ああ…………」と声を出すことしかできなかったからだ。

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 徒労。その二文字が脳内に浮かび上がる。時間は24:30。既に月曜日になっている。『リセット。全ての勝ち負けは0に設定される』 二時間半の激闘は無かったことになり、勝利の女神は泡と消えた。Discordで通話していた友人たちの「これは…………」という声に返す言葉もない。

 

 頭を抱えながらも私は上記のようにツイートを行った。文末に「もう一回勝ちましょう」などと言っているが、これは精いっぱいの強がりだ。運が絡むゲームの性質上、強い奴が必ず勝てるわけではないし、だからこそ私は二日続けて12連勝を記録することができた。しかしここからまた7勝……それは長く長く遠くて険しい道のりに見えた。

 

 結局、リセット後の予選再スタートが始まったのは日本時間の01:50ほど。既にかなり眠たいが、勝負は再度ここからだ。私はリポビタンDを蓋を開けて、徹夜の覚悟を決めた。勝利の女神がまだ消えていないことを祈りつつ、対戦相手とのマッチングを始めた……。

 

一戦目、赤緑の攻撃的なデッキ。サイドインした〈燃えがら地獄〉というカードで戦場を火の海にして勝利。1勝0敗。

二戦目、青黒緑〈巨獣の巣〉デッキ。打ち消し呪文が噛み合って勝利。2勝0敗。

三戦目、白青黒〈予言された壊滅〉デッキ。「厚かましい借り手」を唱えるタイミングが下手だったり私の細かいミスもあり敗北。2勝1敗。

四戦目、白単色の攻撃的なデッキ。相手のデッキが綺麗に回って敗北。2勝2敗。

五戦目、赤単色の攻撃的なデッキ。昨日から赤単デッキにはまず負けないこともあり、勝利。

六戦目、青赤のミッドレンジ、襲い掛かるドラゴンにコソ泥妖精で対抗するも、二頭のドラゴンが止められず敗北。予選ウィークエンド2日目、敗退。日本時間04:32。

 

 結果、3勝3敗でフィニッシュとなった。

 

 そのときの率直な感想を言えば、悔しいというのが正直なところだ。いくらリセット前に5連勝していたとはいえ、証拠の画像もなければそもそもその直後3連敗して敗退して可能性も十分にあったため、それを元にどうこう言うことに意味は少ないだろう。本当に強い奴なら勝敗リセット後も連勝できたのでは? などと言われれば私としては憤怒の表情で睨みつけることしかできないし、深夜というよりもはや明け方の5時前にそんな気力は残っていなかった。

 

・プレインズウォークは続く

 

 アメリカは訴訟大国といわれているが、日本在住の私が本件に対して大きな声をあげることのコストパフォーマンスは悪いだろう。しかし、何も対処をしないというのも他人事がすぎるかと思い、私は日本ウィザーズに一通だけメールを送った。

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↑大した内容ではない。要約すれば「しっかりしろ」という六文字で済むようなものだ。しかしこういった小さい声の集約が何かのきっかけになることを祈っている。 

 

 マジック;ザ・ギャザリングはとてもエキサイティングで面白い最高のゲームだ。しかし運営も最高かというと、少なくとも今はそうではない。だが人間が必ずミスをするように、そのミスから学べるのも人間だ。つまり人間やその集合体は良い方向に変化していくことができると私は信じている。繰り返しになるが、少しづつでも良い方向に変わっていってくれというのが、いちプレインズウォーカーとしての願いである。

 

 私は今後もこのゲームを遊び続けるだろう。それは私がゲーマーで、ゲームを通した真剣な力比べが楽しいからだ。深夜に熱中してカードゲームに臨み、緊張でマウスを手繰る手が震え、汗でシャツをにじませる体験などなかなかできるものではない。それは間違いなく私の人生を豊かなものにしているし、この楽しさを忘れることなどできない。

 


 さて、そろそろ私の話は終わりだ。これを読んだあなたがどう思うかはわからないが、何か思う所があればツイッター等でシェアしてくれれば私がそれを読んで面白がったりするだろう。あなたがこの記事を面白いと思ったのならば、私が書いた他の文章を読むのもいいだろう。マジックに興味を持ったならば、ぜひ始めてみるのがオススメだ。そしてもう既にあなたがプレインズウォーカーだったならば、私と次に会うのは戦場ということになる。そして私の妖精が、あなたのパーマネントを手札に戻してガッツポーズを決めるのだ。その瞬間のあなたの表情を楽しみにして、今日はここで筆を置くことにしよう……。

 


 

 

追記! (2021年5月18日 日本時間08:33更新)

 本記事が公開されたのは5月17日の日本時間09:30ほどだったが、

 

 5月18日の02:48(もちろん日本時間、言うまでもなく深夜だ)にウィザーズからメールが来ており、その内容を要約すると

「あんたが予選でたくさん勝ってたことが確認できたのでチャンピオンシップに招待するぜ!」

というものだった!

 

 つまり、これらが私の見ている幻覚などでなければ、6月4日-6日開催の「ストリクスヘイヴン チャンピオンシップ」の参加権利を獲得したということだ!

 

 目を覚ましざまにメールを確認した私は思わず「やったぜ!」と叫び、1分ほど喜びのダンスを踊って嬉しさに震えた。

 

 本記事は記録として残しておくが、賢明なる読者諸氏は次の更新記事が「ストリクスヘイヴン チャンピオンシップ 優勝レポート」となり大量のビッグマックと共に私がサムズアップを決めている画像が掲載されているよう祈っていて欲しい。

 

行くぜ! チャンピオンシップ!

 

twitter.com

 

新セットが出る今こそ好機!  マジック:ザ・ギャザリングの始め方

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 姉たちは着飾って出て行ってしまった。あなたは屋根裏部屋の掃除を言いつけられているが、誰も訪れない部屋を掃除しなくたってバレやしない。ドレスが無いからお城の舞踏会には行けず、あなたは暇を持て余す。そこに私が現れて、あなたに魔法をかけていくのだ。これであなたも外に出れるが、行先はお城の舞踏会ではない、戦場だ。外に出てみればそこにはゴブリンやトロールが獲物を求めて闊歩しており、空は天使と稲妻が飛び交っている。ドレスなんかじゃ身を守れないから、あなたは甲冑を着込んで剣を掴む。カボチャの馬車ではスピード不足だ、あなたはドラゴンに乗り込んで空を駆ける。12時を過ぎてもこの魔法をとけず、戦いは始まったばかりであった。

 

 今日はあなたにマジック:ザ・ギャザリングMTG)を紹介する。マジックは25年以上の歴史がある古いカードゲームだが、何故今頃になってそんなゲームの紹介をするのか? それは最近になってマジックの電子版である「MTGアリーナ」のスマホ版がリリースされたからだ。更に、2021年4月23日に「ストリクスヘイヴン:魔法学校」という新しいセットが発売されるからであり、つまり、今が非常に「始め時」ということだ。

 

 「そういうあんたは何者だ?」 インターホンに出れば怪しげな営業人間が姿を現し、詐欺まがいの契約を勧めてくる現代に辟易してしまったあなたはそう思ったことだろう。なので簡単に自己紹介をしておこう。私はカエサル。インターネットで文章と絵を書いている者だ。マジック:ザ・ギャザリングを始めたのは7年ほど前だ。義務教育に例えれば、ようやくランドセルを脱ぎ中学校の制服に袖を通し始めた頃ということになる。

 

 そして私がこのゲームを紹介しようと思った理由だが、それは誰かに金を積まれたからという訳ではない。本当の理由は…………好きだからだ。このゲームが。具体的に言うとから揚げと同じくらい好きだ。あなたは出来立てのから揚げを食べた事があるか? あるなら、私がどれくらいシリアスな話をしているかわかるだろう。

 

 

 それではマジックの紹介に入るわけだが…………まずは下の画像を見て欲しい。

 

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 正直に答えて欲しいい。これらのカードを見て、あなたはどのカードを一番「いいな」と思っただろうか。可愛らしいレディならば、もちろんOKだ。この記事の続きを読んでいい。凛々しくクールなハンサムならば、それもまた素晴らしい。あなたもこの記事の続きを読むべきだ。だが…………なんかよくわからん不気味でモヤモヤした亡霊のカードを「いいな」と思った奴は今すぐ帰れ。こんな記事を読んでないでどんな方法でもいいからとっととマジック:ザ・ギャザリングを始めろ。マジックにはあんたが好きそうなカードがサハラ砂漠の砂粒ほどある。それが時間の有効活用というものだ。


・「デッキ」ではなく、「ライブラリー」

 気を取り直して、まずはこのゲームについて説明しよう。マジックは基本的に二人で対戦するカードゲームだ。そしてマジックには世界観がある。この対戦は魔法使い同士の力比べだ。つまりあなたも対戦相手も魔法使いで、土地から得たマナというエネルギーを用いてカードに書いてある呪文を唱えるのだ。つまりカードは呪文書だ。だからマジックでは、ゲームが始まると山札の事をデッキとは呼ばない、「ライブラリー」だ。それは呪文書を入れた書庫というわけだ。

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 呪文には対戦相手の憎い顔を丸焦げにするための稲妻を出すものもあれば、怪物や伝説の戦士を繰り出すための召喚呪文もある。召喚呪文で呼び出される生き物(マジックではこれを「クリーチャー」と呼ぶ。呼び出されるのがドラゴンだろうが普通の人間だろうがクリーチャーだ)で相手に攻撃したり、逆に相手からの攻撃をブロックしたりして身を守る。そして最終的に相手のライフポイントを20から0にすれば、見事あなたはこのゲームの勝者だ。

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 しかしこのマジックという戦場……一筋縄ではいかない。あなたが召喚した自慢の戦士が、対戦相手の死へと誘う呪文で無残にも殺害されることなどしょっちゅうだ。訳の分からん催眠術みたいな魔法で目覚めぬ眠りへと堕とされることもある。ひと昔前にはクリーチャーを鹿に変えてしまう術が大流行したために、「マジック:ザ・奈良公園」と言われたことすらもある。

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 マジックには大きな特徴として、相手への介入度が高いというものがある。介入度? 見知らぬ言葉かもしれないがビビることは無い。要するに相手に干渉する……敵へ妨害や攻撃ができるということだ。そして…………それらがスリリングでエキサイティングだ。もちろん相手も妨害や攻撃をしてくる。しかしそれらを巧みに躱し、とっておきの呪文で相手にダメージを叩き込む。もちろんそこまでにはいくつもの選択肢や戦略性があり、どういった結果になろうとそれはあなたの選択だ。あなたの頭はフル回転し、どうやって相手を打ちのめしてやろうかと思考が加速する。カードを操る手は力強いものになり、ドーパミンが放出される……。血沸き肉躍るなどというものではない、脳沸き指踊る戦いだ。つまり、とびきりに面白いということだ。


・ルールを覚えるにはどうすればいいの?

 さて、マジックというゲームの概要はわかった。だが、肝心のルールは? とあなたは思うかも知れないが、この記事で細かいルールをここに書く気はない。往々にしてこういうルールは「とりあえずやりながら説明しよう」の方が伝わるし、誰かにフェイスtoフェイスで教えてもらった方がいいからだ。それができないなら先ほども言った「MTGアリーナ」という電子ゲーム版でもチュートリアルがある。周りにルールを知っている奴が居ないし電子ゲーム版じゃなくて紙のカードで覚えたいぜ、という奴は最終手段だ。直接私に「教えてくれ!」とメッセージを送れ。そのときは予定を合わせよう。

 

 ルールを覚えるときに、ひとつ注意点がある。それはルールを覚えるときに「細かい部分」は無視しろ、ということだ。マジックは古いゲームであり、ルールにも例外が大量にある。なのであなたがまず覚えるのは基本的な部分だけでいい。「土地をセットして呪文を唱えて、クリーチャーでアタックして相手の顔面をボコボコにする」という内容だけだ。顔面ボコボコ、だけ覚えたらあなたは立派なプレイヤーである。私が保証しよう。

 

 もしかしたらあなたの周りに出現したマジックプレイヤーは「クロックがどうのこうの」「クリーチャーのスタッツがアレでコレでテンポアドバンテージがうんぬん……」などと訳の分からないうわ言を喋り始めるかもしれない。しかしそれはカードゲーマーの鳴き声みたいなものなので、完全に無視していい。ちょうど麻雀で点数計算を覚えなくても遊んでいいというのと一緒だ。犬や牛がワンワンいったりモーモーいうが、人間のあなたが理解する必要はない。もしかしたら、いずれあなたも犬や牛の言葉がわかるようになるかも知れないが、そうなったら一緒になってワンワンモーモー言おう。それはそれで楽しいものだ。

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 (↑最初は完全に無視していい。可哀そうだと思ったらたまに聞いているフリをしろ)


・カードを持っていなくてもリミテッドならしっかり遊べる。

 さて、ここからが本題だ。まずハッキリというが、マジックを遊ぶのにデッキ(ゲームが始まればライブラリーと呼ばれるが)を最初から持っている必要がない。それは電子ゲーム版なら実際の紙のカードを集める必要が無いというような意味ではなく、リミテッドという遊び方が存在するということだ。

 

 それでは、リミテッドとはどういう遊び方なのか? 簡単に言うと、その場で決められた数のブースター・パックを開封し、中に入っているカードでデッキを組み上げて戦う、というルールだ。既に自分が持っているコレクションの中から自由にカードを選んでデッキを組み上げる構築戦ではなく、限られた(=リミテッド)カードの中からデッキを組み上げる、という意味なのである。

 

 ちょうど今流行っているサバイバル系シューティング…………PUBGやエーペックスレジェンズ…………みたいなものだ。あれらも最初からお気に入りの装備を持っているわけではなく、なんでか知らんがヘリからダイブして武器やアイテムを探して回り、そして拾った銃で殺し合う。リミテッドでは宝箱やサプライボックスではなくブースターパックで、カービン銃やフラググレネードではなくクリーチャーやソーサリー呪文で戦うのだ。

 

 このリミテッドというルールはマジックの中でも別に特殊な遊び方ではなく、しっかりと公式世界大会等のルールにも採用されている。ブースター・パックには15枚のカードが入っているが、もちろん事前に中身を知ることはできない。つまり、このルールの良いところはカードプールが初心者も熟練者も同じ条件で始められるということだ。

 

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(筆者の好きなカードを紹介:この凶暴なゴブリンは醜くて素晴らしい。フレーバーテキストを読んで、「こいつは…私だ!」と感じたためお気に入りだ。死ぬほど弱いが)

 

 リミテッドにもいくつかルールがあるが、最も単純な6パックを開封しそこからデッキを作る「シールド」というルールでは、15×6、つまり90枚のカードの中から40枚のデッキを組むことになる。最初はやや難しいかもしれないので、できれば既にマジックをプレイしている人にアドバイスを貰いながらデッキを組むのがベストだろう。

 

 ここで、抜け目ないあなたは気づいたはずだ。「リミテッドを勧めているけれど、結局デッキを組むのは難しいの? 初心者を甘言で陥れて狩るための卑劣な罠だったの?」確かに……デッキを組むのは難しい。しかし、それを差し置いてもリミテッドには魅力があるから勧めているのだ。決して卑劣な罠ではない。

 

 その魅力とは…………パックを開封できることだ。「パックを開封して遊ぶルールなんだから当たり前だろ。何を言っているんだ?」その通りだが、しかし、それを差し置いてもパック開封というのは楽しい! 当たりが入っているかもしれない物を開けていくというのは、最も単純な運試しだ。おみくじや福袋など、人間は古来より運試しが好きだ。パックから強力なレア・カードが出現すればそれはもう嬉しいが、そのカードをすぐに使用して遊べるというのがリミテッドの楽しいところだ。

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(カード紹介2:美しくも怪しいデーモンのイラスト、ハイファンタジーの良さがある。私はこれを所持しているが、コレクション目的なので対戦に使用したことはない。)

 

・これからプレインズウォーカーになる者たちへ

 あなたはリミテッドの概要を覚えた。そしてパックを開封したくてうずうずしている。だがまあ待て、まだ行くな。あなたは「リミテッドを遊ぶぞ! うおおお」と雄叫びをあげて走り出そうとしているが、このままではあなたは他の魔術師にズタズタに引き裂かれ、マジックが嫌いになってしまうかもしれない。あなたが負けてべそをかくのは別にしょうがない。涙は無限ではないし、敗北から学び強くなるのもゲームの楽しみだからだ。しかしマジックを嫌いになるのはダメだ。楽しむはずのゲームを嫌いになるようでは、何が何やらわからないからだ。だからもう少しだけ、私の話を聞いていけ。

 

 しかし……これ以上話を聞くのが難しいということを私は知っている。例えばあなたはプレステやらスイッチ、スチームなどで新しくゲームを始めたときに、チュートリアルを最後まで聞くだろうか? 訳知り顔のジジイとかが出てきていちいちバッグの開き方やら装備の変更方法などを宣うが、あなたはベイビーじゃないから話を聞かずに手近な敵に突撃する。そして返り討ちになったとき改めて操作や知識を学ぼうとすればいいが、往々にして「クソゲー……」と呟いてコントローラを放り出し腹が減ってきたことに気づいてカップヌードルでも食べようかとお湯を沸かし、エンド・オブ・ゲームになってしまう…………今までに何度も繰り返されてきたゲームの悲劇だ。それと同じような悲劇をマジックでも起こしたくはないと私は考えている。では…………どうすればいいか? 私は頭を捻って考えた。そして、ごちゃごちゃ言うと「訳知りジジイ」になってしまうので、ひとつだけ言おうと決めた。

 

 「楽しみ方を見つけろ」 私にできるチュートリアルはこれが最後だ。マジックには様々な楽しみ方がある。今日書いたパック開封や、バトルの熱狂などというものはマジックの面白さのほんの一部に過ぎない。カードに書いてあるイラストを眺めたりお気に入りをコレクションするのも楽しみのひとつだし、フレーバーテキストを読んでカードの世界に思いを馳せるのも正しい楽しみ方だ。これは余談だが、マジックに登場するカードには小説になっている物語があり、それを公式ウェブサイトで読むこともできる。

 

 楽しみ方に正解も制限もない。あなたの目的は楽しい趣味の時間を過ごすことで、マジックのルールを覚えたり対戦で勝利を目指すのは二の次だ。実際に私も細かいルールを覚えるようになったのは初めてから2年くらい経ってからだし、未だにミスも多い。それでも、このゲームは面白く、まだまだやめられそうにない。


 マジックのプレイヤーは魔法使いであるという設定を最初に書いたが、それら魔法使いには「プレインズウォーカー」という総称がある。和訳すれば、「次元渡り」だ。マジックのカードは様々な次元が舞台になっている……それはつまり私たちが住む地球ではなく、どこか別の宇宙が舞台ということだ。通常の人間は地球で生まれたら地球の景色だけを見て死ぬ。しかしプレインズウォーカーの灯がともった人間は違う。カードを通して様々な次元を旅することができる。それは初めて月に降り立ったアポロ11号の船長ニール・アームストロングも羨むような大冒険だ。そしてあなたは今、そのプレインズウォーカーの灯に覚醒しようとしている…………。

 

 それでは、私はもう行く。次の戦場を求めて旅に出るということだ。もし別の次元であなたと出会ったらならば、そのときはもちろん力比べだ。一切手を抜く気は無い。あなたもプレインズウォーカーとしての実力を鍛えていることだろうし、それを全力で迎え撃ってこそ戦いというのは美しく楽しいものだからだ。あなたの唱える呪文が刃となって私の首を狙ってくることを、ずっと楽しみにしている。

 

 「灯を点せ/Ignite Spark」 

 

 それでは、さらばだ。

 

 

 

 

 …………おっと、肝心のマジックへと繋がるリンクなどを張るのを忘れていた。以下にリンクを張っておく。あとは好きにしろ。

 

(MTG 日本公式)

mtg-jp.com

 

MTGの物語や小説に興味がある奴はこっちだ)

https://mtg-jp.com/world/story/

 

(MTGアリーナ、電子ゲーム版のアクセスはこっちだ。)

https://mtg-jp.com/mtgarena/

 

(スマホ版はこっち)

t.co

 

(これは筆者のTwitter。挑戦状はこちらからということだ。もちろん、称賛や絶賛の連絡もこちらから。) 

twitter.com

 

 

 

 終

50円玉くんさぁ……ちょっとこっち来て

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 50円玉くんさ……ちょっとこっち来て

 

 あ、いいよいいよ座って、楽にして。突然だけど、ちょっと話聞いてくれる?

 例えばさ、友人と遊んでいて、ご飯どきになって「夕飯どうする?」って聞いたとき、常に「なんでもいいよ」って答える奴いるじゃん?

 それって本人からしたら「自分は何にでも対応できますから決定権は差し上げますよ」って言ってるのかもしれないけど、こっちからしたら夕飯を決めるのにも、料理するか買ってくるか考えたり、外食するならご飯屋さんを調べたりするとか意思決定のコストがかかるわけじゃん? 

 そもそもこちらに何らかの希望があるのなら「○○にしない?」って聞くわけで、

 「夕飯どうする?」

 って言葉の時点で

 「現状、私にはアイデアがないので一緒に考えませんか?」

 と言ってるのを察してほしいじゃん?

 それを「なんでもいいよ」の一言だけで思考放棄されるのはちょっと不親切というか、協力的じゃないよなあって、そう思わない? いつもこっちが舵取りしてるなぁみたいな、ほんの小さい不満、溜まるじゃん?

 いや、わかってる。完全にこっちが面倒なことを言ってるってのはわかってるよ。「一緒に考えて欲しい」なら「一緒に考えて」って言えって話だし。そもそも「なんでもいいよ」って言うのはマジに「なんでもいい」のであって、そこに悪気とかは一切無いってのはわかってるよ。勝手に不満を溜めてるのはアンタだろ、って言われたらその通りなのかもしれない。

 だから私も「なんでもいいよ」って言われても別に「そっかー。じゃあピザでも取る?」って返すし、ピザ食べてればそんな不満はすぐ忘れるよ。私も面倒なことがあったらすぐピザ頼んじゃう癖があるのは認めるけど、やっぱ少しは一緒に考えて欲しいんだよね。口には出さないけど。こんな細かいことを口に出して喧嘩するのもつまらないしさ。

 でもさ、そういうすっごい細かい不満を口に出して伝えることで、もしかしたらお互いに進歩があるかもしれないじゃん。相手も「そうか、次はなんでもいいとは言わずに自分も考えてみようかな」って思ってくれたら嬉しいしさ、同じような場面に出くわすことも少なくなったらWin-Winじゃん。

 だからさ、今日はそういう小さい不満を口に出して言ってみたいわけ。

 いいかな?

 それじゃ、言うね。

 

 50円玉くんさ、100円玉と見分けづらすぎない???

 

 そんなことないって? 穴があいてるからって100円玉と見分けつくって?

 そうか、それならこっち来てこれ見てよ。

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 こういう言い方は卑怯かもしれないけど、みんな思ってるよ? 見分けづらいって。

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 「側面からみたときほぼ一緒で困る」って、口に出して言わないだけで、心の中ではみんな思ってる。

 心が狭い奴だと思われそう……と思うから皆言わないだけで、不満は常に溜まってるんだよ。キミ知ってた?

 今日私がレジで100円玉出すつもりで自信満々に50円玉出して、店員に「コイツ、算数が愚かか?」って顔で見られたからこんな事を言ってるんじゃない。みんなが思ってるから、みんなの事を考えて言ってる。

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 だからさ、もう少しなんとかなんない? なんかやりよう、なかった?

 …………。

 …………え? これでも頑張ったほうだって? 昔はもっとひどかったって?

 …………そうなの?

 へー、そうなんだ。現在の形の50円玉になったのは1967年からで、一番最初に50円玉ができた1955年には穴も無ければ直径も今より4mm大きかったんだ。それがやっぱり100円玉と見分けづらいからって穴をあけたのが1959年。

 

 それで1967年に当時素材に使っていたニッケルだと自販機を故障させるかもしれないからって、素材を替えて直径も小さくして現在のデザイン、つまり三代目になったんだ。

 Wikipediaってなんでも知ってるね。

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 でも文字だけだとよくわかんないな。昔の50円玉持ってない? って流石に持ってないか。

 え? 持ってないけどネットで売ってますよって?

 あ、ほんとだ。穴があいてるのもあいてない一番初期の奴も売ってるじゃん。楽天市場は何でも売ってるなあ。

 

 

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 買っちゃったよ。こんな形で送られてくるんだね。

 

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 こっちは裏面。50円玉を二枚買うのに送料込みで1000円超えてビックリしたよ(各330円)。お金でお金を買うのってなんか可笑しいよね。物の価値ってのは不思議だ。

 比較のために取り出すよ。

 

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大きさ比較 左から初代、二代目、現在版、100円玉。

 

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初代と二代目(25.0mm)は現在の100円玉(22.6mm)より大きいんだね。

 

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側面比較 こちらも左から初代、二代目、現在版、100円玉。

 

 …………ごめん! 比べると確かに良くなってる。さっきは事情も知らずに責めるようなことを言ったわ。知らなかったことを悪いとは思ってないけど、ちょっとキミの気持ちを無視した物言いだったと思う。反省します。努力してるのにそれを無視されて責められるなんて、嫌な気持ちにさせてしまったと思う。繰り返すことしかできないけど、ごめんなさい。

 どの口が言うんだって話なんだけど、こういう「相手の事情も知らずに強い言葉を使う」ってのはやめた方がいいよね。正確にはやめるっていうか……「自分、もしかしたら相手の事情も知らずに強い言葉を使ってるかも」って気づけるようになりたいって感じかな。今後は気を付けます。

 

 ごめんごめん、話が逸れた。50円玉の話だったね。

 

 私は今のところ生きている間に小銭のデザインが変わったのは500円玉しか経験がないけど、新500円玉になったときは金色っぽくなってカッコイイなあって思ったよ。それを考えたら、50円玉のデザインが変わったときに当時の人々は嬉しかったろうね。「これで100円玉と見分けやすくなる!」って。

 考えてみれば今のデザインの50円玉は、もう54年も使われてるのか。半世紀だよ半世紀。それじゃもしかしたら近い内に、次のデザイン変更があるかもしれないね。でもそうなったら、どうすればいいんだろう。最初に私は言ったけど、やっぱりまだ100円玉と見間違えることはあるじゃん。あれどうにかできないのかな。こういうのって、言ったからには自分でも考えてみた方がいいよね。

 というか、みんな思ってたと思うんだけど、側面のギザギザを無くせばよくない?

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 これでいいじゃん。100円玉も50円玉も側面にギザギザがあるから間違えるんだからさ、シンプルに無くせばよくない?

 …………側面にギザが無いと1円玉と間違えるって?

 いやいや、流石に1円玉は小さいし間違えないでしょ。並べて比べたらわかるよ。

 

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 左は50円玉の上に1円玉を乗せています。

 

 これは…………間違えるかも。いや、確実に間違えるわ。というか、1円玉ってこんなに大きかったっけ? 50円玉が小さいのか?

 え? そもそもひとつ前の50円玉デザインにはギザギザなかったの? あ、ほんとだ。じゃあ今の50円玉にはやっぱり必要性があってギザギザつけてるんだ。偽造対策とかそういう理由なんだ。へぇ。そっかぁ。

 うーん。じゃあこれからの50円玉はどうすればいいんだろう? 素材の問題だろうから色を変えるのは難しそうだし、側面のギザギザは100円玉か1円玉とかぶるし……。

 …………え?

 ……そもそもこれからは電子マネーだって? キャッシュレスの時代?

 ……………………。

 …………いやでもああいうのって難しそうじゃん…………なんかアプリとかインストールとか…………どこで使えるのかわからないし……。

 …………今やほとんどのお店が電子マネーに対応してる?

 …………でもほら、貨幣っていうのはひとつの文化じゃん…………こういう国の文化ってのは守ってかないとさ…………。

 ……経済産業省もキャッシュレスを推奨してる?

 ………………。

 …………。

 ……あ、もうこんな時間か! 夕飯どうする?  ピザとる?

 

 


 終

 

 

 

 

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新作格ゲー「アイドルマスター ミリオンライブ シアターデイズ ミリ女ファイト」をプレイしてみた。

 

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 2021年4月1日、それは彗星のように姿を現した。

 

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 アイドルマスター ミリオンライブ シアターデイズ ミリ女ファイト

 死ぬほど名前が長い。格ゲーマーはあまり長い文字が読めないため誰も認識できないのではないかという不安はあるが、

 アルティメット マーベル バーサス カプコン 3

 や

 メルティブラッド アクトレス アゲイン カレント コード

 とそんなに変わらない文字数なのでギリギリ大丈夫だろう。そんな際どいラインを突いてきたアグレッシブな格ゲーが、この令和に突如として現れたのだ。そう、唐突にだ。なんの事前情報やプロモーションもなく、4月1日になった瞬間プレイ可能になってリリースという、現代のゲーム業界ではなかなか見ることのできない挑戦的スタイルである。

 

 そしてそれを聞いた筆者は新作格ゲーが出たと聞いて思わず飛びついたのである。

 

 すぐにインストールを開始する。ここで注意だ。本作はスマホアプリのゲームであり、SteamやPSストアでいくら探しても見つけることはできない。何なら「ミリ女ファイト」と検索しても出てくるか怪しいし、アプリのゲームジャンルは何の間違いか(音楽&リズム)で登録されているため、皆さまも検索の際には要注意だ。

 

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 ゲームをインストールすると、上記のようなタイトル画面が表示された。キャラクターが拳を向け合っており、格ゲーなのは間違いない。恐らく女性キャラが主体のゲームなのだろう。アルカナハートシリーズやスカルガールズなど、見目麗しく可憐なキャラクター達が活躍する格ゲーも現代では珍しくない。彼女たちも見た目はまるでアイドルのように可愛らしくてプレイする前から期待が持てた。

 

 タイトル画面の二人は恐らく本ゲームにおけるリュウ・ケン枠(基本的な操作感のスタンダードなキャラクター)なのだ。左側のジャブを放っている女性がリュウポジションだろう、波動拳みたいな髪色だし。

 

 

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 ゲームを始めるとなかなか長いチュートリアルやムービーが始まる。私は格闘ゲームは長いことプレイしており、鉄拳やバーチャファイターなどの複数タイトルのプレイ歴もあるため、今更チュートリアルなどは必要ない。悪いがスキップさせてもらった。

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 途中、キュートなキャラクターがどんなステージにするかと聞いてきたが、私は格ゲーはトレーニングモードから入るタイプ。トレモ用ステージに決まっている。

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(↑トレモステージといえばこういうところ。画像はカプコン公式から転載)

 

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 チュートリアル中にこのような説明も出てきた。文字が長くて読めないが、「判定強化」「ダメージガード」「コンボ継続」「コンボボーナス」などの格ゲー用語が頻出していることはわかる。「ダブルブースト」はおそらくゲージを二本消費して繰り出す必殺技などであろう。

 

 さて、チュートリアルが終わると二人の女学生が出てきてゲームの世界観を説明してくれた。

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 どうやら本作はお嬢様学園に通う女生徒たちを操作し、武闘祭で優勝しようというストーリーらしい。ストⅡとほぼ一緒だ。格ゲーではベーシックな構成といえる。

 

キャラクターセレクト

 ストーリーモードを選択すると、キャラクター選択画面が開いた。

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 どうやら、3人1チームのゲームシステムで、チームエディットは無いようだ。初代キングオブファイターズと同じである。

 

 と、キャラクター達の説明を見ていて気付く。

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 ジュリア! ジュリアじゃないか!

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(「鉄拳」シリーズの拳法使い、ジュリア・チャン。画像は鉄拳公式サイトより)


 私の知るジュリアから大きくビジュアルは変わったが、格ゲーでバージョンごとに見た目が変わることは珍しくない。そしてアプリの開発会社を確認して確信する。「鉄拳」シリーズと同じバンダイナムコ…………これは、そういうことなのか?


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 上記の彼女が虎身肘(こしんちゅう)や旋空衝腿(せんくうしょうたい)、マッドアックスを繰り出すというのか………?

 

 いや、さすがに同名の別人だろうと判断しゲームに戻った。

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 ゲーム画面はオーソドックスな2D格ゲーといえる。左下の移動orガードと、右側のアタックボタンで操作を行う形式である。

 ガードはバーチャファイターと同じくボタンで行う形式である。投げはフリック入力で繰り出すことができ、打撃・ガード・投げの三すくみはしっかりと存在している。

 

 

ジャンプ が存在しない超硬派格ゲー

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 現代の2D格ゲーには大きく二種類に分けられる。「コンボゲー」か「差し合いゲー」だ。前者はジャンプして繰り出す派手な空中コンボが魅力なブレイブルーシリーズなど、後者は刃が届くか届かないかジリジリとした硬派な地上戦が魅力のサムライスピリッツなどがある。本作はコンボ要素が少なくどちらかと言えば「差し合いゲー」に分類されると思うが、現代の格ゲーにはない大きな特徴があるのだ。

 

 ジャンプが存在しないのである。地上戦が主戦のサムライスピリッツですらジャンプ攻撃はあったというのに、本作「ミリ女ファイト」にはそれがない。ジャンプがないということはもちろん飛び道具もない。つまり、地上戦の間合い管理と打撃orガードor投げの読み合いを研ぎ澄ませた超硬派格ゲーなのだ。

 

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 飛び道具がないため、冒頭に「波動拳出しそう」と説明した彼女(徳川まつり氏)ですら、素手喧嘩(ステゴロ)の剣闘士(グラディエーター)であった。セリフも見るからに強者のそれだ。

 

 おそらく、お嬢様にジャンプなどさせたらスカートの裾が大変なことになってしまう危険性があるためこういった仕様になっているのだとは思うが、この思い切った仕様はとても挑戦的だと感じた。

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 ↑そのわりに、ダウン確定技(本作では「弾き飛ばし」)ではしっかりとふっとぶ。余談だが、ここからダウン追撃コンボなどは存在しなかった。

 

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 ↑投げ(本作では「つかみアタック」)ではしっかりと腰の入った大外刈り(技名不明)を見ることができる。

 

スマホ格ゲーのパイオニアになれるか

 キャラクター達は可憐で美しくまるでアイドルのようである。(どうやらファイターだけではなく実際にアイドル活動をしているという噂もある。要検証)そんな彼女たちが拳を交わし互いを高め合っていくというコンセプトはプレイしていて非常に楽しいものであった。

 

 本作は現状CPU対戦のみで、モードはストーリーモードとフリー対戦のみ。ストーリーモードではクリアするとチームキャラクター三人の「姉妹的仲良さ」なコミュニケーションを見ることができる。CPU対戦の難易度はそれほど高くなく、しっかりとガードをして確定反撃を入れることを意識してプレイすればクリアは簡単であった。

 

 さて、そんな本作「アイドルマスター ミリオンライブ シアターデイズ ミリ女ファイト」であるが、残念ながら期間限定でプレイできる作品である。プレイ可能な期間は2021年4月1日23:59までとかなり短い。なお、プレイ期間終了後はミニゲームとして音楽に合わせてボタンを押すリズムゲームを続けて遊べるようになるという噂もある(要検証)この短い期間でその全貌を知ることはかなり難しいと思われるが、興味を持ってくれたのならばぜひ本作をプレイしてみて欲しい。

 

 

 

カエサルの自己紹介 2021年3月版

 カエサルの自己紹介 2021年3月版

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 インターネット・サーフィンにおけるウェブページとはクローシュに覆われた料理のようなものだ。「そのカッコつけた比喩の前に『クローシュ』って何なんだ?」 あなたはそう思う。クローシュというのはフランス料理のフルコースなどで皿の上を覆っている銀色の蓋のことだ。かくいう私もついさっき調べるまで、この蓋の名前を知らなかった。「シルバーシールドとかだろ。略してシルシル」と思っていた。

 

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 話がそれてしまった。そう、ウェブページの話だ。現代のウェブページはクローシュに覆われた料理と同じで、クリックして蓋を開けてみるまでその中身の良し悪しはわからないのだ。蓋の先にあるのは役立たずのガラクタかも知れないが、知る喜びをもたらす充実したページかもしれない。ちょうど私が先ほど「クローシュ」の名を知ることができたのは、検索した結果運良くナイスなページに当たったと言えるだろう。

 

 しかし、インターネットは博打ではない。どのレストランに入るか選ぶことができるのと同じように、何をクリック・タップするかはあなたに権利がある。そしてそのレストランではどんなシェフが料理をしているのか? ウェブページは誰が書いているのか? 次に重要になってくるのはそれだ。

 

 なので、自己紹介だ。あなたは私、カエサルが何者なのかを知り判断することができる。「コイツは電池切れの目覚まし時計と同じくらい役立たず」と切り捨てる事もできれば、「もう少し観察を続けてみよう」というジャッジもできる。なので私が何をやっている者なのか、この記事では説明していく。

 

 半年ほど前に同じような自己紹介記事を書いている。しかしインターネットは高速で緊急だ。情報のアップデートは必要なので、こうして更新することに決めた。

 

(以下が前回のリンクである。)

caesarcola.hatenablog.com

 

それでは、2021年3月版を始めていく。

 

①ブログ・ライティング

 まずはメインの活動にしている文章での活動だ。本ブログのタイトル「カエサル 文章 書く」は知能がギリギリの怪物が「オレ オマエ すき」と言ってるのに似ていてやや危ない印象を受けるかもしれないが、つまり端的に要点をつくタイトルというわけだ。私の知能がギリギリかは、まあ、議論がわかれる。

 ブログの内容は主に読んだ人間を楽しませるためのエンターテインメント記事だ。代表的なエントリをいくつか紹介する。

 

caesarcola.hatenablog.com

△ポップコーン以外の映画館フードメニューを知らなかったので、まとめて食べてしまおうという記事。私のブログでは最もPV(ページビュー)が多く、世間の食べ物に対する関心の強さを感じた。

 

caesarcola.hatenablog.com

△ゲストがホストに飲食物を与えるという点で、動物園とホストクラブは同一であるという視点から、動物界ナンバー1ホストを決めようとした記事。

 

caesarcola.hatenablog.com

△世にも恐ろしい病状「痔ろう」になり、入院と手術を行ったときの記録。闘病記としての記録と、でん部のケアを軽視する人類への警鐘という役割がある。

 

caesarcola.hatenablog.com

△こちらは麻雀のルールについて言及した記事。タイトルからもわかる通り真面目な記事ではない。しかし、二盃口が安い手なのは本当だ。

 

 他にはゲームをプレイした感想をメインとした紹介記事を書くこともある。

caesarcola.hatenablog.com

△高難易度ゲーム「帰ってきた魔界村」の感想記事。難易度が高いゲームに挑む楽しみを紹介している。

 

 

 また、他メディアで記事を執筆させていただいた経験もある。

 2020年4月に開催されたVRChatというバーチャル空間上で行われたイベント「バーチャルマーケット4」にて企業ブースの取材記事を書かせていただいた。具体的にはマーベルスタジオの新作映画「ブラック・ウィドウ」のPRをするブースの紹介である。

www.v-market.work

 

  VR SNSの最先端をお届けするWEBマガジン「バーチャルライフマガジン」でハイクオリティアバター「フィーちゃん」を紹介させてもらう記事を執筆した。 

vr-lifemagazine.com

 

 映画を軸に「好き」を語るサイト「ムービーナーズ」でも記事を書かせていただいた。映画を「浅く」見ようというシネマ初心者向けの記事である。

m-nerds.com

 

 エンタメ系・コラム・ネタ系・ゲーム系、その他面白そうな記事執筆の依頼は歓迎している。連絡はメールもしくはTwitterのDM(ダイレクトメッセージ)まで。

Mail:chikuwato@gmail.com

Twitter@caesarcola

 

 ここまで読んできたあなたならわかると思うが、私の文章は基本的に長く、高カロリーだ。インターネットのテキストで好まれるのは「ライトでカジュアルでイージー」だとはわかっているため、長い文章でも可能な限り読み味を軽くできるように努めていく所存である。

 

 

②イラスト

 ブログ中に挿絵が入っていることからも私がイラストを描く人間だということはわかると思うが、簡単な挿絵レベルだけではなくある程度工数をかけたキャラクターイラストも制作している。趣味としての活動がメインだが、Skeb というイラスト有償依頼サービスを用いてリクエストも募集している。

 

 以下にポートフォリオとしてイラストを何点か置いておく。

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△本記事のサムネイルにも使用した私カエサルのアイコン的キャラクター。私はピザが好きだが、ハンバーガーも好きだ。

 

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△こちらはゲーム作品「アイドルマスターシャイニーカラーズ」に登場するキャラクターのファンアート。


イラストの依頼があれば以下リンクより。

skeb.jp

こちらは以前にクライアントに依頼していただいた内容とそのインプレッションである。

 

③4コマ漫画

 ツイッターで毎週水曜日の正午に「ハイパーエンターテイメンツ4コマ」を投稿している。内容はギャグ漫画だ。

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△上記のような4コマ漫画をTwitterで更新している。もう少し読んでみたいと感じたのならばチェックするとよいだろう。

twitter.com

 

 つい最近50週連続更新したため、その記念記事を書いた。また、ラインスタンプも販売している。詳しくは記事より。

caesarcola.hatenablog.com

 

 

ボードゲーム制作

 ゲームを遊ぶことは人生において必要不可欠だ。私はPS4やSwitchやSteamでもゲームをプレイするが、電源を用いないテーブルゲームボードゲームもよく楽しんでいる。また、自作したボードゲーム「一夜漬ケ」をゲームマーケットイエローサブマリンで販売している。

 

下記通販でも販売している。

caesarcommand.booth.pm

 

 また、次回作も鋭意制作中だ。

 

⑤短編小説・その他

 私は頻度は多くないが短編小説を書いている。こちらはnoteで更新しており、内容はコメディを中心としている。誰かの暇つぶしになれば幸いである。

note.com

 

 

⑥趣味

 趣味などのパーソナルな部分については、簡単に好きなものについて並べるだけに留めておこう。

 

好きなもの

・ULTIMATE MARVEL VS CAPCOM3(格闘ゲームで、現在の私にとってのベスト・ゲームだ。いつか本ゲームを題材にしたブログを書こうと思っている)
・ピザ

ハンバーガー他ファーストフード

・映画,漫画,ゲーム,イラスト,アニメなどのエンタメカルチャー

カタンの開拓者たちボードゲームの有名タイトル)

マジック:ザ・ギャザリング

VR(バーチャル・リアリティ)などの技術

・旅行

・文章を読むこと(ブログやコラム、小説など)

・データに基づいた効率化や問題解決(品質管理検定2級を取得)

・比較実験(学術的なものではなく、シンプルに何かと何かを比べること)

・他、楽しそうなことや新しいこと

 

⑦終わりに

 インターネットは便利で革新的な最先端の技術なようで実はそうではない。現代にはウェブページが膨大な数存在し、その数はサハラ砂漠の砂粒よりも多いだろう。そしてその砂粒の中には老師の叡智が込められた非常に役立つページもあれば、読んでみて良かった悪かったの前に何の感想も持てないような虚無のページもある。 

 

 その中で、あなたが私の書いたウェブページを読んだときに抱く感想が前向きなものであることを祈っている。なおいっそうの望みを言えば、文章を読むことをまるでオードブルの後のスープを頂くように楽しみ、あなたの胃の代わりに脳を「読む喜び」で満たすことができたのならば、私にとっての本望である。

 

 ここまでの文字数は3376文字、読んでくれたあなたに3376文字分の感謝を。

 

 

 

 50週連続で4コマ漫画を描いた。

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 「日本最古の漫画」と言われる「鳥獣戯画」をご存知だろうか? そう、歴史の教科書とかで見た事があるだろう。茶色い紙にカエルとウサギが描かれているアレだ。

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カエルとウサギの相撲。楽しそう。



 そして、最初に鳥獣戯画を見た・知ったときにこう思ったのは私だけではないだろう。

 「なぜカエルとウサギ?」

 カエルとウサギ。この二体が選ばれた理由は何だろうか? そもそも、何故人間ではなく動物なのか? 作者も不明のこの作品は、どういう意図で書かれたのか? その理由は長く厚い歴史の幕が覆い隠しているが、私には自分なりの答えがある。

「それがユーモアだったから」

 でっぷりした腹のカエルが横綱力士に見えたのだろう。対してウサギはその跳躍能力から鳥でもないのに「1羽」と数えられるほどのナチュラル・アスリートで、カエルの対戦相手にはぴったりだ。その二匹が相撲を取る…………。そんな昼下がりに見る夢みたいな想像を、実際に紙に描いてみたのが「鳥獣戯画」なのだ。

 カエルとウサギじゃ生息域も身体のサイズも違うが、フィクションという魔法の中でそんなことは問題ではない。重要なのは面白さだ。そして「カエルとウサギが相撲をとる」というユーモアはウケた。いや、実際に当時ウケていたのかは知らないが、現代までその存在が伝わっているということは、一定の存在感を放っていたということなのだろう。

 そしてもう一点重要なのは、この日本最古の漫画と言われている「鳥獣戯画」はユーモアで描かれ、読んだヒトを「笑わせる」ことを目的にしていたということだ。そう、つまりギャグでありコメディ、喜劇でありファルスだ。一番最初に生まれた「漫画」という創作物の目的が「笑わせる」ということに、私は敬意を払うと共に勇気づけられている。

 

 さて、というわけで今日は4コマ漫画の話をする。それも、私自身が描いた4コマ漫画の話だ。私は4コマ漫画を50週連続で描いた。つまり4×50で200コマということだ。そんな算数に意味は無いが、200コマを通して見えてきたものもある。今日はその話をする。

 

目次


・4コマ漫画を描いた。辛く苦しくはない。


 私は趣味で毎週水曜日の正午に4コマ漫画をツイッターに投稿している。その名も「ハイパーエンターテイメンツ4コマ」というものだ。名前は長いがこれ以上縮めることのできない洗練されたものなのでそこは諦めてもらうしかない。内容はギャグ漫画だ。週ごとの話に関連性はなく、どこからでも読むことのできるものになっている。

 しかしこんな御託はどうでもいい。漫画を紹介するときは実物を見せるのが最も効率的だ。そうする。今気になって調べたが「御託(ごたく)を並べる」というときの「御託」というのは「御宣託(ごせんたく)」という言葉の略語であり、意味は「神のお告げ」、そしてそれを冷ややかに見た言葉らしい。神を恐れぬ不遜な言葉だ…………。いや、話を戻そう。漫画の紹介だ。

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 上記のような漫画を50週描いた。内容の是非はあなたに任せるが、もしもう少し読んで判断したいというのなら、ツイッターで「#ハイパーエンターテイメンツ4コマ」とハッシュタグ検索することで他の作品を読むことができる。

 

 

 

 さて、それではこれらを50週連続で描いた感想だが、率直なものとしては「苦しい瞬間もあったが、楽しいと感じるときの方が多い」というものだ。簡単に言えば「やってよかった」というつまらないものだが、もう少し詳しく説明する。

 そもそも漫画を描くきっかけがどういうものなのかというのは、承認欲求の話になり手垢のついたトピックであるため今回は割愛する。重要なのは描いていてどうだったかということだ。分かりやすくするため、苦しさと楽しさを箇条書きにする。

苦しさ
・何も思いつかない。
・自分のユーモアが伝わっているか不安になる。
・自分の「面白い」が他人には「面白い」ではなく愕然とする。

楽しさ
・内容を思い付いたときの全能感
・ユーモアが伝わった(笑わせることができた)ときの嬉しさ
・私がまだ知らない「面白さ」があることに気づけた。

 ざっくりだが以上だ。聡明なあなたは気づいただろう。苦しさと楽しさはほとんど裏返しなのだ。例として苦しさのひとつ、「何も思いつかない」だが、4コマの内容は自分で考えているため、出てこないときは本当に何も出てこない。それはもう正確に表現するなら、「全く、絶対、完全に、まるっきり、徹底的に、綺麗さっぱり、これっぽっちも、完膚なきまで、神に誓って、何も思いつかない」というものであり、自分のアイデアの泉というものが無限ではないということを思い知らされる。

 ヒドイときは何も思いつかないストレスから奇行に及び、意味もなく部屋を歩き回ったり、奇声をあげて布団や枕にローキックをしたりしてしまう。ほとんど人里に降りてきた熊と同じような知能しかないので、だいぶ人間の尊厳を失っているといえるだろう。

 しかし、ひとたび何かネタを思い付けばそれは過去のことだ。私は熊から神になる。自分は天才でユーモアの申し子で歴史に名を遺す偉人であり、漫画の神様・手塚治虫が出てきても「オサムは最近どう?」くらいのノリで接するだろう。それくらい増長しており、それはもう楽しいものである。

 その面白さが他人に伝わらなかったときの絶望感は、ゴルゴ13ジョン・ウィックとロバート・マッコールに同時に銃口を突き付けられるのと同じくらいのものだが、逆に伝わったときの嬉しさはチャンピオンでありビッグ・サクセスでありパーフェクトヒューマンであることも間違いない。

 それらの苦しさと楽しさを比較したときに、私は楽しさの方が大きいとジャッジした。それが誰に金を貰っているわけでもないのに50週描くことができた理由だろう。

 

・コミュニティ 感謝の念


 次に言っておくべきことは感謝だ。

 4コマ漫画をインターネットに公開していると、読んでくれる人間が少なからず居る。そしてツイッターの機能を用いて反応してくれる人間や、自分の解釈を発信してくれる人もおり、私は彼らに感謝している。それらは心の励み…………プシュケーの燃料、ユーモアの輪転機を回すためのガソリンになっており、私に力を与えている。なのでここらで一度、礼を言っておく。いつもありがとう。これからもよろしくね。

 そしてその彼らの中には謎のコミュニティが発生しているものもある。まず、毎週私の4コマ読んでリツイート機能を用いてシェアしてくれるだけでなく、「毎週水曜日更新のハイパーエンターテインメンツ4コマを見ろ。」と強い肯定をしてくれている人間もいる。

 

 「毎週水曜日更新のハイパーエンターテイ "ン" メンツ4コマを見ろ。」とタイトルを微妙に間違えている事実はあるが、それでも嬉しいことに違いはない。

 そして面白いのはここからである。私の4コマはその性質上、水曜日の時報という役割も果たしているのだが、上記のツイートから派生して二次コミュニティが発生している。とういのも、

「毎週水曜日更新のハイパーエンターテインメンツ4コマを見ろ。」を見た。という観測報告ツイートまで発生しているのだ。

 どういうことか? 私が4コマを投稿する。→読んだ人間が「4コマを見ろ」と言う。→「『4コマを見ろ』を見た」と報告する。という連鎖が発生しているのだ。なんだこれは? 何のネットワークだ? 宗教の始まりか? やや不思議であるが、まあ、面白いのでよしとする。

 


・ラインスタンプを作った

 

 需要があると判断したので、私はハイパーエンターテイメンツ4コマのラインスタンプを作成した。使うのには金を払う必要があるが、制作物に金を払うというのは誇り高い行為なのであなたが欲しいと思ったのなら自信をもって金を払うべきだ。

store.line.me

 


・終わりに(4コマは続くが)

 

 私の4コマ漫画は「スゴイもの」ではないという見方もあるだろう。創造主である私はその価値の高さを疑ってはいないが、それが世界に認められるようになるために必要なのは「継続」だ。なのでこれからも4コマを描いていく。あなたの水曜日に少しでも隙間があり、その隙間に私の4コマを入れてくてるのであればこれ以上の喜びはない。

 

 さて、私はもう行かなければならない。それはもちろん次の4コマの内容を考えるためだが、今日ばかりは少しの休息を取りピザでも食べようかと思った。しかし、炭火焼ビーフを食べ終わったらまた進む。布団を蹴って、奇声をあげて、4コマを描いていく。それまで火が絶えなければという前提もあるが、次に語るのはPART100のときだろう。それでは、さらばだ。